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再婚相手と子の養子縁組のみでの請求異議棄却判例解説

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平成25年11月15日(金):初稿
○「再婚相手と子の養子縁組のみでの請求異議棄却判例全文紹介2」の解説です。
養育費の支払いを定めた家事調停調書に基づく強制執行について、債権者と再婚した者と養育費の対象となっている子が養子縁組の届出をしたことは、請求異議の事由に該当しないした平成16年12月27日東京地裁判決ですが、判例時報・判例タイムズには掲載されなかったようです。
先ず事案は以下の通りです。
・元夫婦のX・Yは、A・B・Cの3人の子の親権者をYとし、Xは、3人の子の養育料を各成年に達するまで長男A名義口座に振込送金して支払うことを約する調停調書を作成して離婚した
※養育料金額は明示されていませんが、「養子縁組の日の翌日(平成15年3月14日)から平成16年8月分(ただし内金8万9049円)までの160万3724円」との記載からは、1ヶ月9万円程度と思われます
・Xは、平成14年11月6日、Dと再婚し、Dの連れ子2人と養子縁組し、更に同年同月30日、Dとの間の子が出生
・Yは、平成15年3月14日、Eと再婚し、Eは、X・Y間の3人の子と養子縁組
・Xが調停調書に定められた養育料・慰謝料の支払を怠り、YがXの給与・賞与を債権差押
・XがYに対し、Eと養子縁組をした日以降の養育料支払義務が消滅しているのでそれ以降から平成16年8月分までの約160万円が不当利得になるとして不当執行として債権差押執行の停止と不当利得金の返還を求めた
・Yは、養育費減額は、家庭裁判所において、各家庭の状況等を詳細に調査し、個別具体的な状況に即し、慎重な判断が行われるべきであり、地方裁判所における請求異議訴訟で判断されるべきものではないと抗弁


○これに対し、平成16年12月27日東京地裁判決は、「原告の主張する理由は、親子関係が消滅したというような一義的な事由ではなく、母及び養父の資力いかんにより消滅ないし変更する裁量の余地があるもので、本件調停において定められた原告の原被告間の子らについての扶養義務は、家庭裁判所が変更又は取消をする必要がある(民法880条)から、未だ実体法上消滅しているとはいえない」として、Xの請求をいずれも棄却しました。

○民法第880条(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)では、「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。」とし、いったん取り決めた養育料支払義務について後に事情変更が生じたときは、最終的には家庭裁判所が判断することを規定しています。

○子供に実親と養親がいる場合、第一次的養育義務者は養親で、実親は第二次的養育義務者となり、実親は第一次的養育義務者である養親に扶養能力がない場合にのみ養育義務を負うとされています。しかし、第二次的養育義務者である実親の養育義務が消滅するのは、第一次的養育義務者養親の年収が第二次的養育義務者である実親と同程度か、或いは、上回る場合です。親の未成熟子に対する養育義務は生活保持義務とされ、親と同程度の生活を保持させる義務です。従って、例えば第一次的養育義務者養親の年収が300万円しかないところ、第二次的養育義務者実親の年収が3000万円もある場合などは第二次的養育義務者の実親に生活保持義務としての義務が残り、相当の金額を養育料として支払続けなければなりません。

○従って、YがEと再婚し、EがYの連れ子と養子縁組したとしても、直ちにXの子に対する養育義務が消滅する訳ではなく、Y主張の通り、「養育費減額は、家庭裁判所において、各家庭の状況等を詳細に調査し、個別具体的な状況に即し、慎重な判断が行われるべき」ことになります。Xの訴えに対し、「当裁判所が再三にわたって、家庭裁判所への申立てを促したにもかかわらず、これに応ぜず、最終的に、養育費の減免について家庭裁判所に審判等を申し立てる考えはない旨表明」とのことです。

○「現時点においては、本件債務名義に表示された給付請求権が消滅ないし変更したということができない以上、被告が差し押さえた、本件養子縁組成立以降分に係る原告の給与及び賞与につき、被告に法律上の原因がないということはできない。」は当然の結論です。
以上:1,765文字

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