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養育料債権ついての間接強制-H16民事執行法改正の目玉政策一例

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平成25年 4月 4日(木):初稿
○先日、ある法律相談所で、女性から離婚の際、公正証書で養育料を定めたがここ数年その支払が滞りがちになり、現在未払額が200万円にも達しているが、催告の手紙を書いても返事がなく、携帯電話に電話しても出ず、住所はハッキリしているが遠隔地にあるため訪問して催告することも出来ず、どうしたらよいでしょうかとの相談がありました。このような約束した養育料の未払はよくあるケースです。

○このような場合公正証書に基づく給料差押が定番です。勤務先は判りますかと聞くと、数年前に従前長く勤めていた会社を辞めてその後の勤務先は不明で、働いているかどうかも不明とのことでした。住居がハッキリしているので居住場所の動産差押という方法もありますが、一般的家財道具は差押禁止対象も多く、殆どの場合換価価値無しで執行不能とされ、換価価値のある高価な調度品等があることがハッキリしていない限り住居の動産差押はしません。

○このような場合の強制執行による養育費回収は大変難しいですねと回答すると、ネットで調べたら「間接強制」が出来ると記述されていましたが、公正証書で間接強制手続は出来ませんかと質問されて、一瞬、回答に詰まりました。私の理解では、直接強制が出来る金銭債権には間接強制は出来ないと思っていたからです。これは不勉強だったと思い、持参のノートパソコンでネット検索すると「裁判所の間接強制」とのサイトに以下の様に解説されています。
間接強制とは,債務を履行しない義務者に対し,一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を課すことを警告(決定)することで義務者に心理的圧迫を加え,自発的な支払を促すものです。
 原則として,金銭の支払を目的とする債権(金銭債権)については,間接強制の手続をとることはできませんが,金銭債権の中でも,養育費や婚姻費用の分担金など,夫婦・親子その他の親族関係から生ずる扶養に関する権利については,間接強制の方法による強制執行をすることができます。


○この「その債務とは別に間接強制金を課すことを警告(決定)することで義務者に心理的圧迫を加え,自発的な支払を促す」ことが金銭債権の間接強制を認める趣旨です。果たして支払能力のなくなった債務者に、どれだけの効果があるのか疑問を感じましたが、この制度を知らなかったことを恥じ入り、相談者に素直にお詫び申し上げ、その場で調べたことをお伝えしました。ネット検索できるノートパソコン持参の有り難みを実感しましたが、その後数名の弁護士仲間に確認すると、皆さん、金銭債権の間接強制の中身について知らず、執行法は弁護士の盲点と反省しました。
以下、間接強制についての関係条文です。金銭債権の間接強制は平成16年民事執行法大改正で採用された目玉政策の一つでした(^^;)。

民事執行法
第5款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例
第167条の15(扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制)
 第151条の2第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権についての強制執行は、前各款の規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が第172条第1項に規定する方法により行う。ただし、債務者が、支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき、又はその債務を弁済することによつてその生活が著しく窮迫するときは、この限りでない。
2 前項の規定により同項に規定する金銭債権について第172条第1項に規定する方法により強制執行を行う場合において、債務者が債権者に支払うべき金銭の額を定めるに当たつては、執行裁判所は、債務不履行により債権者が受けるべき不利益並びに債務者の資力及び従前の債務の履行の態様を特に考慮しなければならない。
3 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、債務者の申立てにより、その申立てがあつた時(その申立てがあつた後に事情の変更があつたときは、その事情の変更があつた時)までさかのぼつて、第1項の規定による決定を取り消すことができる。
4 前項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第1項の規定による決定の執行の停止を命ずることができる。
5 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
6 第172条第2項から第5項までの規定は第1項の場合について、同条第3項及び第5項の規定は第3項の場合について、第173条第2項の規定は第1項の執行裁判所について準用する。

第151条の2(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第30条第1項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
1.民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
2.民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
3.民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
4.民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
2 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。

第172条(間接強制)
 作為又は不作為を目的とする債務で前条第1項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。
(中略)

第173条(※管轄裁判所等)
(中略)
2 前項の執行裁判所は、第33条第2項各号(第1号の2及び第4号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。

第33条(執行文付与の訴え)
 第27条第1項又は第2項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条第3項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。
(中略)
5.第22条第5号に掲げる債務名義(※公正証書)
 債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)
6.第22条第7号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの(第1号の2に掲げるものを除く。)
 和解若しくは調停が成立した簡易裁判所、地方裁判所若しくは家庭裁判所(簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所

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