平成20年 1月14日(月):初稿 |
○「夫と42年間不貞関係を継続した女性への損害賠償請求例3」で事案に対する感想を述べ、私がXから依頼されたら、必ず最も責任の重いCを被告としYは連帯債務者として訴えを提起すると述べました。またこの事案ではCに対する離婚請求は控えるでしょう。Cが長年公務員を務めておりさらに80歳の高齢ですから相続人たる地位を残した方が無難と思えるからです。 ○ところがXはCは相手にせずYに対してのみ5000万円の損害賠償請求をしてその判決の主文は以下の通りでした。 主文 1 被告は、原告に対し、金300万円及びこれに対する平成13年2月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを20分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 ○この事案で5000万円の請求をして僅か300万円しか認められないとの結果は実質は敗訴と評価されます。その根拠は、Xが19/20、Yが1/20との訴訟費用の負担割合です。訴訟費用とは訴え提起時に訴状に貼付する印紙代(裁判所に支払う手数料的なもの)が大部分を占めますが、敗訴者が負担するもので、その9割5分を原告Xが負担せよとの判決は実質原告敗訴です。 ○実際的にもXは5000万円の請求をする際の弁護士費用は、当事務所の場合基準通り計算すると請求額5000万円の4%+15万円の215万円ですがさらに印紙代等実費(ほぼ訴訟費用相当額)が20万円かかり、合計235万円かかります。さらに報酬が実際回収額300万円の15%+5万円で50万円となり、訴訟費用も殆ど戻りませんので、総合計285万円で300万円回収してもXの手元には殆ど残らず、Xの訴訟提起は「骨折り損のくたびれもうけ」に終わったことになり、誠に気の毒な結果です。 ○勿論、この弁護士費用はあくまで明示している基準通り計算した場合であり、多くの弁護士は実際に受任に当たっては、その方の資力等を考慮してケースバイケースとなりますので、本件訴訟で実際どのくらいの弁護士費用がかかったかは不明です。 ○XがCも被告として5000万円の損害賠償の訴えを提起すれば、例え離婚請求をしなくてもCに対しては300万円よりは遙かに大きい金額を得られたことは間違いありませんが、Xとしては如何に裏切られたとしても長年連れ添ったCよりもその不貞相手を長年務めたYが憎くて仕方がなく、Cを訴え相手に出来なかったのかも知れず、また判決では窺い知れない特別な事情があったのかも知れません。 以上:1,048文字
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