平成20年 1月11日(金):初稿 |
○不倫問題について重要な示唆を含んだ判例を紹介します。登場人物は原告X、被告Y、原告Xの夫をCとします。事案概要は、原告Xの夫Cは、昭和34年から平成12年までの42年間、被告Yと男女関係を続け、その間退職金内金1000万円を含む3000万円以上の金銭をYに対し交付し、平成12年に至り自分からYとの関係をXに告白し、その結果XC夫婦の婚姻関係は破綻し、XがYに対し不法行為を理由に金5000万円の慰謝料を請求したと言う事案です。 ○詳しい経緯は以下の通りですが、かような事案での5000万円の請求に対し、裁判所はどの程度の金額を認めるか興味あるところでした。 ・Xの夫C(都職員)は昭和33年にYと仕事の関係で知り合い、昭和34年4月頃(C36歳頃)から男女関係となった。その頃、XC夫婦間には問題がなく、YはCに妻子がいることは知っていた。CのYとの関係は、当初は単なる性的欲求のはけ口であった。 ・その後Cは、月に1、2回程度、Yのアパートに出掛け、夕食を取って関係し、偶に宿泊し、Yは昭和35年ころと同42年ころ、合計2回、Cの子を身ごもり、いずれも中絶している。 ・Yは昭和41年5月ころ、測量図面等の作成を専門とする会社を設立して独立し、Cをアルバイトとして雇い、Cは土曜日に会社事務所を訪れて作業を始め、日曜日の夜まで一緒に作業してその夜に帰宅するのを常としていた。YはCに対しこのアルバイト代として月額2万円程度を支払っていた。 ・Yは、昭和43年3月ころ、アパートを建て、賃料収入をもって生活費の一助とし、昭和50年1月ころ、自宅マンションを購入し、その頃からC(45歳頃)は、Y宅マンション月3、4回程訪問するようになり、泊まったりもした。 ・Yは、昭和57年ころ廃業し、その後は、仕事に就いてないが、YとCとの間では、昭和46年ころから、Cに退職金が入った場合内金1000万円をYに渡すとの話がなされ、昭和58年12月ころ(C60歳頃)、Cの退職金を得るとYに対し1000万円を渡した。 ・CはYに対し、昭和38年頃から月額1000円程度を、昭和61年から平成12年までには月額7万円程度援助し、さらに平成11年7月ころ金融商品売買金としてYに預けていた830万円をYに渡した。 ・YはCから金銭の提供を受けながら2人の関係は維持され、時に大喧嘩をしそれが高じてCがYからCの自宅に放火すると脅されるなどして別れ話にあったが、その関係は切れることなく続き、肉体関係も平成12年(C79歳)まで続いた。 ・YとCは平成12年になって揉めることが多くなり、Cは、XがCとYとの関係を感づいているのではないかと思い、隠し切れない気持ちになり、平成13年2月14日(C80歳)、酔った勢いで長年に及ぶYとの関係をXに告白した。 ・Xは、その告白に精神的に衝撃を受け、Cに対して激怒し、Cは自宅に居られなくなり、翌15日、自宅を出てY宅に行って4月9日までY宅に滞在したが、予想を超えるXの怒りに離婚を覚悟し同年2月21日ころ、Yに自分の面倒をみてもらおうと考え、Yの意向に沿うようなXとの財産分与案を作成し、Xにそれを提示したが、Xはそれに応じなかった。 ・Yは、同年3月28日、X代理人から、Cとの交際を止めることを求めると共に、慰藉料5000万円の支払を求める通知書を受け取り、Cに対し、自宅に戻るよう指示して、同年4月9日、自宅に戻り、Yに対し交際を絶つとの態度を表明した。 ・Xは、CからYとの関係を告白された後、精神的に不安定な状態となり、自殺を図ろうとし、同月13日から15日夜まで多量の睡眠薬、アルコールを飲み、16日未明には病院に搬送され、その後も、精神科医の投薬治療を受け続けている。 ・XとCは同居するようになったが、喧嘩が絶えず、平成15年2月24日夜も大喧嘩となり、Xは、Cと揉み合って倒れた際に、後頭部を打ち大怪我をし、26日間入院したため、XとCは同じ家に住んでいては、喧嘩して暴力事件も起きかねないということで、同年3月22日、Cが自宅を出て別居するに至った。 ・これに対し、Yは、平成5年4月ころ、膀胱ガンに冒されていることが判明し、同年7月に手術を受けた。その後、Yの体調は回復したが、平成12年4月に再発し、現在も治療中であるが、体調はおもわしくない。 以上:1,791文字
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