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暴力団融資と判明後も信用保証協会に保証債務履行を認めた最高裁判決紹介

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平成28年 2月20日:初稿
○信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合において、信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとして保証債務の履行を認めた平成28年1月12日最高裁判決(裁判所ウェブサイト、金商1483号10頁①事件)全文を紹介します。

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銀行調査十分なら保証義務=暴力団と判明融資、協会に-最高裁
時事通信(2016/01/12-18:57)


 金融機関が暴力団など反社会的勢力と知らずに貸し付け、返済されなくなった融資を信用保証協会が肩代わりするべきかが争われた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は12日、「銀行などが融資先の十分な調査をしていれば、協会は肩代わりすべきだ」とする初判断を示した。

 肩代わりする場合、費用の一部には公的資金が充てられる。他にも同様の訴訟が起こされており、最高裁の判断が注目されていた。

 第3小法廷はまず、融資後に反社会的勢力と判明した場合でも原則、保証協会は肩代わりすべきだと指摘。兵庫県信用保証協会に対し、姫路信用金庫に約480万円を支払うよう命じた。一方で、3件については金融機関の調査が十分だったかさらに調べる必要があるとして、いずれも東京高裁に審理を差し戻した。

 同信金やみずほ銀行(東京都)など4金融機関は2008~10年、独自のデータベースや訪問などで反社会的勢力か審査した上で、建設会社などに融資。その後に暴力団の関係先と判明したため、保証協会側に未返済の計約1億8000万円を代わりに支払うよう求めたが拒否され、提訴した。

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主  文
1 原判決を次のとおり変更する。
 第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 被上告人は,上告人に対し,479万7471円及びうち477万9000円に対する平成23年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 上告人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 

理  由
 上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は,主債務者から信用保証の委託を受けた被上告人と保証契約を締結していた上告人が,被上告人に対し,同契約に基づき,保証債務の履行を求める事案である。上告人の融資の主債務者は反社会的勢力である暴力団員であり,被上告人は,このような場合には保証契約を締結しないにもかかわらず,そのことを知らずに同契約を締結したものであるから,同契約は要素の錯誤により無効であると主張して争っている。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人と被上告人は,昭和38年10月,約定書と題する書面により信用保証に関する基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。本件基本契約には,保証契約締結後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合の取扱いについての定めは置かれていなかった。

(2) 政府は,平成19年6月,企業において暴力団を始めとする反社会的勢力とは取引を含めた一切の関係を遮断することを基本原則とする「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(以下「本件指針」という。)を策定した。これを受けて,金融庁は,平成20年3月,「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を一部改正し,また,同庁及び中小企業庁は,同年6月,「信用保証協会向けの総合的な監督指針」を策定し,本件指針と同旨の反社会的勢力との関係遮断に関する金融機関及び信用保証協会に対する監督の指針を示した。

(3) 被上告人は,Aから,同人が営むとび工事業の運転資金の融資に係る信用保証委託の申込みを受け,審査した結果,これを適当と認め,平成22年7月,Aとの間で保証委託契約を締結した。

(4) 被上告人は,平成22年7月,上告人との間で,下記(5)の貸付け(以下「本件貸付け1」という。)に基づくAの債務を連帯して保証する旨の契約(以下「本件保証契約1」という。)を締結し,Aへの融資をあっせんしたが,本件保証契約1において,契約締結後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合の取扱いについての定めは置かれていなかった。

(5) 上告人は,平成22年8月,Aとの間で金銭消費貸借契約を締結し,400万円を貸し付けた(本件貸付け1)。

(6) 上告人は,Aから,事業用自動車の買換えのための資金の融資の申込みを受け,審査した結果,これを適当と認め,平成22年10月,被上告人に対してその信用保証を依頼した。Aと被上告人は,同月,保証委託契約を締結した。

(7) 上告人は,平成22年10月,Aとの間で金銭消費貸借契約を締結し,150万円を貸し付けた(以下「本件貸付け2」という。)。被上告人は,同月,上告人との間で,本件貸付け2に基づくAの債務を連帯して保証する旨の契約(以下「本件保証契約2」という。)を締結したが,本件保証契約2において,契約締結後に主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合の取扱いについての定めは置かれていなかった。

(8) Aは,本件保証契約1及び2(以下,併せて「本件各保証契約」という。)が締結された当時,暴力団員であり,上告人及び被上告人は,Aが平成23年6月に詐欺容疑で逮捕された旨の新聞報道により,そのことを知った。

(9) 本件貸付け1及び2(以下,併せて「本件各貸付け」という。)に係る金銭消費貸借契約においては,Aが弁済を1回でも怠った場合に上告人の請求により期限の利益を喪失する旨が定められていたところ,Aが平成23年6月10日に支払うべき本件各貸付けの分割金の弁済を怠り,以後弁済をしなかったため,上告人は,同年9月26日,Aに対する訴状の送達をもって,本件各貸付けについて期限の利益を喪失させる旨の意思表示をした。本件貸付け1の残元金は349万6000円,未払利息は1万3840円であり,本件貸付け2の残元金は128万3000円,未払利息は4631円である。

(10) 上告人は,平成23年8月,被上告人に対し,本件各保証契約に基づき保証債務の履行を請求した。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のように判断して,上告人の請求を175万4920円及びうち174万8000円に対する平成23年9月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。
 本件各保証契約が締結された当時,主債務者が反社会的勢力でないことは,本件各保証契約の当然の前提となっていた。しかし,実際には,主債務者であるAは上記当時から反社会的勢力であったから,被上告人の本件各保証契約に係る意思表示には要素の錯誤がある。もっとも,上告人の本件保証契約1に基づく請求については,被上告人が錯誤無効を主張して同請求の2分の1を超えて履行を拒絶することは,信義則又は衡平の観念に照らして許されない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 信用保証協会において主債務者が反社会的勢力でないことを前提として保証契約を締結し,金融機関において融資を実行したが,その後,主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には,信用保証協会の意思表示に動機の錯誤があるということができる。意思表示における動機の錯誤が法律行為の要素に錯誤があるものとしてその無効を来すためには,その動機が相手方に表示されて法律行為の内容となり,もし錯誤がなかったならば表意者がその意思表示をしなかったであろうと認められる場合であることを要する。

 そして,動機は,たとえそれが表示されても,当事者の意思解釈上,それが法律行為の内容とされたものと認められない限り,表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当である(最高裁昭和35年(オ)第507号同37年12月25日第三小法廷判決・裁判集民事63号953頁,最高裁昭和63年(オ)第385号平成元年9月14日第一小法廷判決・裁判集民事157号555頁参照)。

(2) 本件についてこれをみると,前記事実関係によれば,上告人及び被上告人は,本件各保証契約の締結当時,本件指針等により,反社会的勢力との関係を遮断すべき社会的責任を負っており,本件各保証契約の締結前にAが反社会的勢力である暴力団員であることが判明していた場合には,これらが締結されることはなかったと考えられる。

 しかし,保証契約は,主債務者がその債務を履行しない場合に保証人が保証債務を履行することを内容とするものであり,主債務者が誰であるかは同契約の内容である保証債務の一要素となるものであるが,主債務者が反社会的勢力でないことはその主債務者に関する事情の一つであって,これが当然に同契約の内容となっているということはできない。そして,上告人は融資を,被上告人は信用保証を行うことをそれぞれ業とする法人であるから,主債務者が反社会的勢力であることが事後的に判明する場合が生じ得ることを想定でき,その場合に被上告人が保証債務を履行しないこととするのであれば,その旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であった。

 それにもかかわらず,本件基本契約及び本件各保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないことからすると,主債務者が反社会的勢力でないということについては,この点に誤認があったことが事後的に判明した場合に本件各保証契約の効力を否定することまでを上告人及び被上告人の双方が前提としていたとはいえない。また,保証契約が締結され融資が実行された後に初めて主債務者が反社会的勢力であることが判明した場合には,既に上記主債務者が融資金を取得している以上,上記社会的責任の見地から,債権者と保証人において,できる限り上記融資金相当額の回収に努めて反社会的勢力との関係の解消を図るべきであるとはいえても,両者間の保証契約について,主債務者が反社会的勢力でないということがその契約の前提又は内容になっているとして当然にその効力が否定されるべきものともいえない。

 そうすると,Aが反社会的勢力でないことという被上告人の動機は,それが明示又は黙示に表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,これが本件各保証契約の内容となっていたとは認められず,被上告人の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤はないというべきである。

5 以上によれば,被上告人の本件各保証契約の意思表示に要素の錯誤があるとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記事実関係及び上記4に説示したところによれば,上告人の請求は,479万7471円及びうち477万9000円に対する本件各保証契約に基づく保証債務につき履行遅滞に陥った日である平成23年9月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,原判決を主文のとおり変更することとする。
 なお,訴訟の総費用については,民訴法64条ただし書の規定を適用し,被上告人の負担とする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大谷剛彦 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥 裁判官 山崎敏充) 
以上:4,752文字

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