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異議をとどめない指名債権譲渡承諾も過失で抗弁切断を認めた最高裁判決紹介

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平成27年11月25日:初稿
○指名債権譲渡の対抗要件について民法第468条は「債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。」と規定しますが、譲受人が対抗事由について悪意の場合は、この抗弁切断効は生じません。

○では、悪意までは至らず単なる過失があった場合はどうかについては、説が分かれていました。この点について、譲受人に過失があった場合も抗弁切断効が生じるとした平成27年6月1日最高裁判決(判時2266号48頁)全文を紹介します。


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主   文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由第3の1について
1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 貸金業法(平成18年法律第115号2条による改正前のもの。同改正前の法律の題名は,貸金業の規制等に関する法律。以下「旧貸金業法」という。)43条1項は,債務者が貸金業者に利息として支払ったものが利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)1条1項所定の制限を超えていたとしても,①任意の支払であり,②弁済金の受領時に旧貸金業法18条1項所定の事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)が交付されているなどの要件を満たしていれば,有効な利息の債務の弁済とみなすものとしていた。

(2) 上告人は,平成12年1月14日から平成14年2月27日までの間,貸金業者であるAとの間で継続的な金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)をした。

(3) Aは,平成14年2月28日,B(平成15年1月1日に被上告人に吸収合併された。以下,合併の前後を問わず,単に「被上告人」という。)に対し,本件取引の貸金残債権の譲渡(以下「本件債権譲渡」という。)をした。本件債権譲渡に係る契約書には,本件取引に旧貸金業法43条1項の適用があることを前提に,上記貸金残債権は「いかなる適法かつ有効な相殺,反訴または抗弁にも服することはない」と記載されていた。

(4) 本件取引に旧貸金業法43条1項の適用があるとした場合,平成14年2月28日における貸金残債権の元本の額は46万2921円となっていた。他方,本件取引に同項の適用がないとした場合,上告人の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息として支払った部分(以下「制限超過部分」という。)は元本に充当され,その結果,同日における貸金残債権の元本の額は33万9579円に減少していた(以下,本件取引に旧貸金業法43条1項の適用がなく,制限超過部分の充当により元本が減少していたことを「本件事由」という。)。

(5) A及び被上告人は,平成14年3月18日頃,上告人に対し,貸金残債権の元本の額が「46万2921円」である旨表示して,本件債権譲渡の通知をした。
 上告人は,同月21日頃,被上告人に対し,異議をとどめないで本件債権譲渡の承諾をした。

(6) 上告人は,引き続き,平成24年11月19日までの間,被上告人との間で継続的な金銭消費貸借取引をした。

2 本件は,上告人が,本件取引には旧貸金業法43条1項の適用がなく,上告人は本件事由をもって被上告人に対抗することができるとした上,本件取引及び上記1(6)の取引における各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生しているとして,被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還等を求める事案である。
 被上告人は,仮に本件取引に旧貸金業法43条1項の適用がなかったとしても,被上告人は本件事由の存在を知らず,このことに重大な過失があったともいえないから,上告人は本件事由をもって被上告人に対抗することはできない旨主張している。

3 原審は,次のとおり判断して,上告人の請求を一部認容し,その余の請求を棄却した。
 弁論の全趣旨によれば本件取引には旧貸金業法43条1項の適用がないというべきところ,被上告人は,同項の適用があることを前提に本件債権譲渡を受けていたものである。そして,旧貸金業法43条1項の適用については,最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁により厳格な判断が示されるよりも前の本件債権譲渡当時,同判決よりも緩やかな解釈を採る裁判例や学説も相当程度存在したことは,顕著な事実である。このような状況に照らせば,被上告人は本件事由の存在を知らなかったのであり,かつ,このことに重大な過失があったということもできないのであって,上告人は本件事由をもって被上告人に対抗することができない。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 民法468条1項前段は,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができないとするところ,その趣旨は,譲受人の利益を保護し,一般債権取引の安全を保障することにある(最高裁昭和42年(オ)第186号同年10月27日第二小法廷判決・民集21巻8号2161頁参照)。そうすると,譲受人において上記事由の存在を知らなかったとしても,このことに過失がある場合には,譲受人の利益を保護しなければならない必要性は低いというべきである。実質的にみても,同項前段は,債務者の単なる承諾のみによって,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものであり,譲受人が通常の注意を払えば上記事由の存在を知り得たという場合にまで上記効果を生じさせるというのは,両当事者間の均衡を欠くものといわざるを得ない。

 したがって,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができると解するのが相当である。


(2) これを本件についてみると,記録によれば,上告人は,本件取引では18条書面の交付が全くなく,このことは被上告人において知り得たものである旨主張していたものということができる。そうすると,原審としては,本件取引における18条書面の交付の有無や,仮に交付がなかった場合にこれを被上告人において知り得たか否かなどについて審理判断をすべきことになるところ,原審は,これらの点について審理判断することなく,単に弁論の全趣旨から旧貸金業法43条1項の適用がなかったと判断した上,被上告人には重大な過失がないなどとして,上告人は本件事由をもって被上告人に対抗することができない旨即断したものである。

 5 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,上記の点等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸)
以上:3,086文字

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