平成20年 3月14日(金):初稿 |
○平成15,16年の民事執行法大改正の話しを続けます。 Aは元夫Bに対し現在5歳のCのためにCが成年に達するまで毎月金5万円の養育料債権を持っているところ、Bが6ヶ月分の30万円も支払を怠り、月額手取金20万円のBの給料を差し押さえる場合を検討します。 ○民事執行法第152条(差押禁止債権)では 「次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の4分の3に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。 1.債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権 2.給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権 2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の4分の3に相当する部分は、差し押さえてはならない。」 と規定し、「政令で定める額に相当する部分」については、民事執行法施行例第2条(差押えが禁止される継続的給付に係る債権等の額)で 「 (民事執行)法第152条第1項各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)に係る同条第1項(法第167条の14及び第193条第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める額は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。 1.支払期が毎月と定められている場合 33万円 (以下、省略)」 と規定しています。 ○条文だけ見ると大変判りづらいのですが、Bが月額手取額(基本給と通勤手当を除く諸手当の合計額から給与所得税、住民税、社会保険料を控除した残額)が20万円とした場合、その4分の3相当額は差押禁止なので、4分1相当部分の金5万円しか差し押さえできません。 但し、4分の3の相当部分が33万円即ち月額手取額が44万円を超える場合は、33万円を超えた部分全額を差し押さえることが出来るので。例えば月額手取額が45万円の場合は、33万円を控除した12万円を差し押さえできます。 ○平成16年民事執行法施行例改正前は、この33万円が21万円でしたので、月額手取額45万円の場合、21万円を超える24万円を差し押さえることが出来たのに、この改正で12万円に狭められました。要するに給料の差押禁止部分が拡張されたのです。給料手取額30万円の差押が出来る範囲は、改正前は21万円を超える部分の9万円だったものが、改正後7万5000円に狭まりました。 ○しかしこれでは養育費等生活に欠かせない債権については大変だと言うことで、民事執行法第152条3項で 「債権者が前条第1項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前2項の規定の適用については、前2項中「4分の3」とあるのは、「2分の1」とする。」 と特例を認め、例えばBの場合月額手取額20万円ですので、差し押さえできる範囲は、貸金等の普通の債権は4分の1の5万円だけですが、養育費の場合は2分1の10万円となります。 また2分の1相当部分が33万円即ち月額手取額が66万円を超える場合は、33万円を超えた部分全額を差し押さえることが出来るので、例えば月額手取額が70万円の場合は、33万円を控除した37万円を差し押さえできます。 ○以上から給料差押の場合の差押債権目録は次のように記載します。 (貸金等普通の債権の場合) 但し、債務者が第三債務者から支給される 1.給料(基本給と諸手当、但し、通勤手当を除く)から給与所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の4分の1 (但し、上記残額が月額44万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額) (養育費債権の場合) 但し、債務者が第三債務者から支給される (1)給料(基本給と諸手当、ただし通勤手当を除く)から所得税、住民税、社会保険料を控除した残額の2分の1(ただし、前記残額が月額66万円を超えるときは、その残額から33万円を控除した金額) 以上:1,655文字
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