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遺言で相続分無しと指定された者は特別寄与料負担無しとした最高裁決定紹介

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令和 5年12月 7日(木):初稿
○平成30年7月6日,民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立し(同年7月13日公布)、相続法では、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として、以下の民法第1050条が新設されました。

第十章 特別の寄与
第1050条
 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。


○この特別寄与料の制度は、相続人の妻など、相続人ではない者が、どれほど被相続人の介護に努めたとしても、相続人ではないため、その努力が相続に反映されない不都合を解消するための制度で、相続人以外の者でも、被相続人に対する貢献度に応じた金銭の請求を相続人に対して請求することができるようになりました。

○この特別寄与料について、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないとした令和5年10月26日最高裁決定(裁判所ウェブサイト)全文を紹介します。

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主   文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

理   由
 抗告代理人○○○○、同○○○○の抗告理由について
1 本件は、亡Aの親族である抗告人が、Aの相続人の1人である相手方に対し、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち相手方が負担すべき額として相当額の支払を求める事案である。

2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1)Aは、令和2年6月、死亡した。Aの相続人は、Aの子であるB及び相手方の2名であり、抗告人は、Bの妻である。 
(2)Aは、生前、Aの有する財産全部をBに相続させる旨の遺言をしていた。上記遺言は、Bの相続分を全部と指定し、相手方の相続分をないものと指定する趣旨を含むものである。
(3)相手方は、令和3年3月、Bに対し、遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をした。

3 原審は、相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料について、民法900条から902条までの規定により算定した相続分(以下「法定相続分等」という。)に応じた額を負担するから(同法1050条5項)、遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されないと判断して、本件申立てを却下すべきものとした。

 所論は、遺言により相続分がないものと指定された相続人であっても、遺留分侵害額請求権を行使した場合には、特別寄与料について遺留分に応じた額を負担すると解するのが相当であるから、原審の上記判断には法令の解釈適用を誤った違法があるというものである。

4 民法1050条5項は、相続人が数人ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたものと解される。このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではないというべきである。
 そうすると、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である。


5 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 安浪亮介 裁判官 山口厚 裁判官 深山卓也 裁判官 岡正晶 裁判官 堺徹)


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