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花押による遺言を有効とした平成26年3月27日那覇地裁判決紹介3

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平成28年 6月 6日:初稿
○「花押による遺言を有効とした平成26年3月27日那覇地裁判決紹介2」続きです。


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2 争点(1)(本件遺言書1により本件土地の遺贈を受けたことを理由とする原告の被告らに対する本件土地の所有権移転登記手続請求が認められるか)について(第1事件)
(1) 本件遺言書1がA作成によるものかについて

 Aが記載したものとして当事者間に争いがない書面(甲22,23)におけるAの筆跡と比較しても,本件遺言書1がAの筆跡として考えることについて特段不自然な点は見当たらず,前記1(4)のとおり,本件遺言書1の検認手続において被告Y2が本件遺言書1における記載がAの筆跡である旨述べていることや,被告らがAの遺産分割調停において本件遺言書1に「家督」の文言が用いられていること,押印がないこと,その内容が不明瞭であることなどからその有効性に問題がある旨述べるものの,被告らがAの遺言書検認手続及び遺産分割調停において本件遺言書1が偽造によるものであると主張したことはうかがわれない。また,本件訴訟においても,本件遺言書1の筆跡がAの筆跡と異なることについて被告らから具体的な指摘はなく,むしろ,被告らは本件遺言書1がAの筆跡によるものと思われる旨の供述をしている(被告Y1本人2頁,被告Y2本人13,14頁)。

 次に,前記1(1)のとおり,原告は,昭和59年に沖縄に戻ってから△△家の門中行事を手伝っていたところ,被告Y2及び妻のDもこれを手伝っていたが,被告Y1は数回程度しか参加していない状況であった。また,Aの死後の事情ではあるが,Aが死亡し,原告がBと同居するようになってからは,被告Y2及び妻のDが門中行事を手伝わなくなり,被告らは門中行事に何ら参加していなかったのであるから,原告が家族とともに△△家の門中行事を主催していたといえ,この点を踏まえると,Aの生前においても,原告が△△家の門中行事等において重要な役割を果たしていたことがうかがわれる。そうすると,原告が次男であるとしても,Aが本件遺言書1作成当時,原告を△△家の跡継ぎとしようと考え,本件遺言書1を作成したと考えることも不自然ではなく,Aに本件遺言書1を作成する動機があるというべきである。

 この点,被告らは,Aは長男である被告Y1に△△家を継がせることを決めており,原告は△◇家を継ぐことになっていたことからすると,Aが本件遺言書1を作成する動機はないと主張するが,前記のとおりの被告Y1や原告の門中行事への参加状況等に加え,長男であるからといって必ず跡継ぎにするともいい難いこと(甲55~57)からすると,長男でない原告に継がせようと考えることも十分考えられるし,原告が継ぐこととされていた△◇家についても,「預かる」という形となっている余地も十分あること(原告本人39,40頁)からすると,これらをもってAの本件遺言書1を作成する動機を否定することはできない。

 また,証拠(乙32の1・2)によれば,Aは,沖縄テレビが製作して昭和59年○月○○日に放送されたテレビ番組において,△△家は長男(被告Y1)が継ぐべきであり,仮に長男が沖縄に帰れないときは,三男(被告Y2)夫婦が行事や門中を運営しながら,当主である長男は東京にいるという形をとることを考えている旨述べており,次男である原告について何ら言及していないものの,当該番組は本件遺言書1が作成された時期である平成15年から20年近く前のことである上,当時原告について言及しなかったのは,その当時原告は△◇家を継承することとなっていたからというべきであり,その後の時間経過や事情の変化も考えられることからすると,これをもって,Aが本件遺言書1を作成することが不自然であるとはいえない。

 さらに,被告らは,Aが△△家の門中行事において,被告Y1が嫡子であり△△家の跡継ぎである旨門中に説明していたと主張し,被告Y1もその旨供述するが,Aがこのように説明していたのも本件遺言書1作成時より20年以上前のことであり(被告Y1本人24,25頁),これをもって,Aが本件遺言書1を作成することが不自然であるとはいえないのは上記と同様である。そして,Aが本件遺言書1を作成した頃において,Aが被告Y1を跡継ぎとしようとしたことをうかがわせる事情を認めることはできない。

 また,仮に第三者がAの遺言書を偽造する場合,認印等を用いず敢えて花押を用いたり,「家督相続人」といった文言を用いたりすることがむしろ不自然・不合理というべきである。

 さらに,被告らは,Aが亡くなった当初,原告が被告らに対してAの遺言書は存在しないと述べていたにもかかわらず,その後本件遺言書1のコピーを被告らに見せたことは不自然であるなどと主張するが,被告Y2及び妻のDは,Aの生前である平成15年5月頃に原告の妻であるMがN弁護士に対して本件遺言書1と思われる色紙のコピーを見せてこれが遺言書として有効であるか尋ねた旨を平成16年,17年頃に同弁護士から聞いていることなどからすると,原告がAの死後に当初Aの遺言書はないと言っていたにもかかわらず,後に本件遺言書1のコピーを見せるに至ったとはいい難く,本件遺言書1の発見経緯が不自然ともいえない。

 以上のとおり,本件遺言書1の筆跡はAのものと認めるのが相当であり,Aに本件遺言書1を作成する動機も認められ,その発見経緯も不自然ではないことなどからすると,本件遺言書1はAが作成したものと認めるのが相当であり,本件遺言書1が偽造であるとの被告らの主張は採用することができない。

(2) 本件遺言書1がAの意思に基づくものであるかについて
 前記(1)のとおり,本件遺言書1はAが作成したものであると認められるところ,被告らは,仮に本件遺言書1がAの作成にかかるものであるとしても,Aは本件遺言書1を自己の遺言書とする意思がなく,確定的な意思表示をする趣旨であったとは認められないと主張し,被告Y2及びDも本件遺言書1は原告が借入れをするためにAに書かせたものであって,遺言書の趣旨で書かせたものではない旨供述している(被告Y2本人13頁,証人D29,30頁)。しかし,Aに本件遺言書1作成の動機が認められることは前記(1)のとおりであるし,本件遺言書1には「△△家の相続について」と題し,家督及び財産を継承させる旨の記載があり,花押が用いられている点については,むしろ遺言書を作成するために敢えて用いているものともいえる上,その他の形式面についても遺言書であることを否定するものとはいえない。さらに,被告Y2及びDが供述する点について,本件遺言書1が借入れをするために有用であるというのも合理的とはいえず,原告が借入れをするためにAに本件遺言書1の作成を依頼し,Aが本件遺言書1が遺言書として有効とならないよう敢えて本件遺言書1を作成したとみることもできないから,被告らの主張は採用することができない。
 したがって,本件遺言書1はAの意思に基づくものであると認められる。

(3) 花押が「押印」として認められるかについて
 民法968条1項が自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにある(最高裁平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁)。

 そこで検討すると,まず,認印による押印の場合よりも花押を用いる場合の方が偽造をするのが困難であるといえ(甲43),花押を用いることによって遺言者の同一性及び真意の確保が妨げられるとはいえない。また,前記1(2)アのとおり,花押が文書の作成者・責任者を明らかにするために用いられていた署名や草名が簡略化されたものであり,重要な書面において署名とともに花押を用いることによって,文書の作成の真正を担保する役割を担い,印章としての役割も認められている。そのような花押の一般的な役割に加え,前記1(2)イ及びウのとおり,△△家においても重要な文書において花押が用いられていたことやAも契約書等の書面においては署名と印章を用いていたものの,色紙への記載に花押を用いるなどしていたこと,本件遺言書1に認められるAの花押の形状等も併せかんがみると,Aによる花押をもって押印として足りると解したとしても,自筆証書遺言である本件遺言書1におけるAの真意の確保に欠けるとはいえないし,花押が日常的に用いられるものとはいい難いことを考慮しても,前記趣旨に反するものとはいえない。

 以上からすれば,本件遺言書1におけるAの花押は,自筆証書遺言における押印と認めるのが相当であり,本件遺言書1が押印を欠き無効であるとはいえない。なお,本件遺言書1には誤記が訂正されているところ,その訂正について民法968条2項所定の方式を遵守していないが,明らかな誤記の訂正であって本件遺言書1の効力を左右するものではない(最高裁昭和56年12月18日第二小法廷判決・民集35巻9号1337頁)。

(4) 本件遺言書1により本件土地を遺贈するものと認められるか
 被告らは,本件遺言書1の記載上,財産の内容の特定が一切なく対象が不明確であって特定できておらず,本件土地を遺贈する内容の遺言書であると解することはできないと主張する。しかし,遺言の解釈に当たっては,遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであり,遺言書の文言を前提としながらも,遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮しつつ,可能な限りこれを有効となるように解釈すべきところ(最高裁平成5年1月19日第三小法廷判決・民集47巻1号1頁),前記(1)認定説示の点に加え,本件遺言書1の「家督及び財産はX1を家督相続人として△△家を継承させる。」,「△△家の相続及運営は家督相続人の責務であることを申し渡すものである。」との記載からすると,本件遺言書1は,△△家の財産,すなわちAの財産を原告に包括遺贈するという趣旨であると理解するのが相当であって,被告らの主張は採用することができない。

 したがって,本件遺言書1により,Aが本件土地を原告に遺贈したものであると認められる。

 また,被告らは,本件遺言書1には原告を家督相続人とするとの文言が記載されているところ,当該文言は民法の相続制度に反するものであって公序良俗に反し無効であると主張するが,前記のとおり,これらの記載はAの財産を全て原告に遺贈する趣旨であると理解するのが相当であり,「家督相続人」という文言が記載されていることをもって本件遺言書1が公序良俗に反して無効であると認めることはできず,被告らの主張は採用することができない。

(5) 小括
 したがって,本件遺言書1は有効であると認められ,原告は本件遺言書1によりAから本件土地の遺贈を受けたと認められるから,その余を検討するまでもなく,本件土地につき所有権移転登記手続を求める原告の第1事件の請求には理由がある。

3 争点(3)(本件遺言書2は有効であると認められるか)について(第2事件)
 前記2のとおり,本件遺言書1は有効であると認められ,前記1(1)のとおりの原告及び被告らの門中行事への参加状況,とりわけ,Aの死後は原告が喪主として挨拶を行い,その後の門中行事も原告のみが行っていたことからすると,Bに本件遺言書2を作成する動機があると認めるのが相当であり,これらに加え,本件遺言書2の押印がBの実印であること(甲61の2)も併せかんがみると,本件遺言書2もBが自筆して作成したものと認めるのが相当であり,偽造によるものではない。

 この点,被告らは,本件遺言書2が原告のBに対する強迫または欺罔行為によって作成されたものであると主張する。確かに,原告がBに対して,被告Y2及びDに会わせないようにしたり(原告本人31頁),△△家を守ることができるのは原告だけであると述べたりしたことが認められ(原告本人35頁),Bが本件遺言書2を作成するに当たっては,かかる原告の言動の影響も小さくないと言えるものの,原告のBへの上記働きかけが強迫または欺罔行為であるとまでは評価することができない上,他に原告がBを監視下に置いたなどといった被告らが主張するような原告のBに対する強迫または欺罔行為を認めるに足りる的確な証拠はないから,被告らの主張は採用することができない。

 したがって,本件遺言書2は有効であると認められ,被告らの第2事件の請求には理由がない。

4 よって,第1事件における原告の請求は理由があるからこれを認容し,第2事件における被告らの請求には理由がないからこれを棄却し,訴訟費用につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
    那覇地方裁判所民事第1部
           裁判官  柴田啓介

別紙
       物件目録
  所在  国頭郡(以下略)
  地番  ○○○番
  地目  宅地
  地積  258.96平方メートル
                              以上

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