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被相続人預金払戻金を生前贈与特別受益とした裁判例紹介3

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平成28年 5月22日(日):初稿
○「被相続人預金払戻金を生前贈与特別受益とした裁判例紹介2」の続きで裁判所の判断後半です。
以下の、遺留分減殺請求の内以下の「果実の返還」請求に関する判断で、遺留分減殺請求対象建物の法定果実(賃料)は、その管理費用等法定果実(賃料)を得るための必要経費を控除した残額を請求できるとしています。
第1036条(受贈者による果実の返還)
 受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。


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4 争点(2)(遺産である不動産の法定果実)について
(1) 原告は,別紙物件目録記載3の建物の法定果実(賃料)は,1か月30万円であり,同目録記載7の建物の法定果実(賃料)は,1か月34万2000円であると主張するところ,これを被告の主張する別表3の上記各建物の賃料の合計の最高額(平成17年4月分)と比較すると,その内輪の金額であると認められるので,上記各建物の法定果実は原告が主張するとおり合計64万2000円であると認められる。

(2) したがって,原告らは,民法1036条により,上記各建物について遺留分として取得した共有持分の割合に従って法定果実の返還を求めることができると解されるところ,原告らが返還を求めることができる金額(月額)は以下のとおりとなる。
ア 亡X1 4万9441円
イ 原告X3 4万9441円
ウ 原告X2 4万9441円
エ 原告X4 4万9441円
オ 原告X5 4万9441円
カ 原告X6 2万4721円
キ 原告X7 1万2360円

(3) しかしながら,上記各金額は,原告らが本訴で請求している金額(月額)を上回るので,結局,原告らが被告に対して返還を求めることができる金額(月額)は,以下のとおり,原告らの請求する限度にとどまる。
ア 亡X1 4万5857円
イ 原告X3 4万5857円
ウ 原告X2 4万5857円
エ 原告X4 4万5857円
オ 原告X5 4万5857円
カ 原告X6 2万2929円
キ 原告X7 1万1464円

5 争点(3)(共有物の管理費用請求権による相殺)について
(1) 証拠(乙39の1ないし8)によれば,被告は,平成16年6月から平成19年12月までの間,以下のとおり,別紙物件目録記載3の建物及び同目録記載7の建物の管理費を支払ったことが認められ,その合計額は,250万4000円となる。
ア 別紙物件目録記載3の建物
 平成16年6月から同年12月まで 10万5000円
 平成17年1月から同年12月まで 18万円
 平成18年1月から同年12月まで 18万円
 平成19年1月から同年12月まで 9万9000円

イ 同目録記載7の建物
 平成16年6月から同年12月まで 35万円
 平成17年1月から同年12月まで 54万5000円
 平成18年1月から同年12月まで 49万5000円
 平成19年1月から同年12月まで 55万円

(2) 証拠(乙40の1ないし6,同9,同11ないし13)によれば,被告は以下の建物につき,以下の工事を行い,以下の年月日に以下の代金を支払ったことが認められる。その合計額は,389万6590円となる。なお,被告が主張するその余の工事については,工事名が原状回復工事であるなど借主から預託を受けていた敷金から支出した疑いが残るものであるから,これを被告が支出した工事代金とは認めるに足りない
ア 別紙物件目録記載3の建物
 平成16年9月30日 屋上防水工事 91万0800円
 平成17年1月31日 2階エアコン修理等 24万2880円
 同年3月31日 受水槽・配管内部清掃工事 41万5800円
 同年7月31日 1階自動ドア交換工事 44万1000円
 同年10月31日 2階エアコン交換工事 71万4000円
 平成18年1月31日 1階エアコン交換工事 71万4000円
 平成19年10月31日 床上浸水調査等 4万3000円
 平成20年1月31日 犬走り工事 7万4000円

イ 同目録記載7の建物
 平成16年8月31日 除草工事 6万2370円
 平成17年2月28日 浄化槽ブロアー交換工事等 7万3370円
 平成18年6月30日 除草工事 6万2370円
 平成19年12月31日 除草工事 5万4000円

ウ 同目録記載5の建物
 平成19年12月31日 除草工事 8万9000円

(3) 被告の主張する退出清算金は,賃借人からの預かり敷金の返還分にすぎないとの疑いがあり,これを共有物の管理費と認めるに足りない。

(4) 同じく被告の主張する専従従業業務費は,税務申告上,計上しているにすぎないのではないかとの疑いがあり,支払先のDがいかなる業務にどの程度従事しているのかという点につき主張立証はないから,これを共有物の管理費と認めるに足りない。

(5) 被告は,相続債務(前記第2,1(6)ア)の弁済に当たる公庫返済金についても共有者間の負担を求めているが,上記相続債務については,共有物を管理するための費用とはいえないから,被告がこれを弁済したからといって,これを求償することはできないと解すべきである。したがって被告の主張は採用できない。

(6) 被告の主張する公共料金のうち,裏付けとなる証拠があるのは,千葉県水道局市川水道事務所松戸支所から請求があった分の一部のみであり(乙43の1ないし3),その余の分については証拠がない。証拠(乙43の1ないし3)によれば,上記領収証にはいずれも各月の使用水量はなしと記載されていることが認められる。以上の事実からみて,上記水道料金は,現在は空き家になっていると推認できる別紙物件目録記載5の建物についての水道基本料金であることがうかがえる。以上によれば,被告の主張する水道料金のうち,上記証拠によって認められる7440円については採用できるが,その余の水道料金並びに電話及び電気の料金については支払を認めるに足る証拠がなく,採用できない。

(7) 被告の主張する税金のうち,松戸市に対する固定資産税・都市計画税(合計110万4000円),市川市に対する固定資産税・都市計画税(合計82万8000円)については当事者間に争いがない。その余の個人事業税,県民税,所得税については,共有者間で負担すべき管理費用とは認められないから被告の主張は採用できない。

(8) 原告らが負担すべき管理費用
 以上の管理費用の合計額は,834万0030円となる。これに原告らの遺留分減殺請求で得た共有持分の割合を掛けた金額が原告ら各自が負担すべき管理費用となる。その金額は以下のとおりである。
ア 亡X1 64万2275円
イ 原告X3 64万2275円
ウ 原告X2 64万2275円
エ 原告X4 64万2275円
オ 原告X5 64万2275円
カ 原告X6 32万1137円
キ 原告X7 16万0568円

(9) 一方,原告らが請求する法定果実の平成17年4月1日から平成20年1月31日までの合計額(34か月分)は以下のとおりとなる。
ア 亡X1 155万9138円
イ 原告X3 155万9138円
ウ 原告X2 155万9138円
エ 原告X4 155万9138円
オ 原告X5 155万9138円
カ 原告X6 77万9586円
キ 原告X7 38万9776円

(10) 被告は,本件訴訟の第4回口頭弁論期日(平成20年2月22日)において陳述した準備書面において,原告らに対し,上記(8)の管理費用返還請求権を自働債権とし,上記(9)の法定果実返還請求権を受働債権として相殺するとの意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。

(11) その結果,原告らが平成17年4月1日から平成20年1月31日までの法定果実として返還を求められるのは,以下の金額となる。
ア 亡X1 91万6863円
イ 原告X3 91万6863円
ウ 原告X2 91万6863円
エ 原告X4 91万6863円
オ 原告X5 91万6863円
カ 原告X6 45万8449円
キ 原告X7 22万9208円

(12) 以上によれば,原告が返還を求められる法定果実は,原告ら各自につき,上記(11)の金額及び平成20年2月1日から本件訴訟の判決確定の日まで,1か月につき前記第3,4(3)の各金額ということになる。

第4 結論
 よって,原告らの請求は,主文記載の限度で理由があるからこれをその限度で認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
 (裁判官 水野邦夫)

 
 
以上:3,520文字

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