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重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた高裁判決紹介

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令和 1年11月30日(土):初稿
○「重度後遺障害被害者逸失利益に定期金賠償を認めた地裁判決紹介」の続きで、その控訴審である平成30年6月29日札幌高裁判決(判タ1457号73頁、判時2420号78頁)関連部分を紹介します。

○逸失利益について定期金賠償を認めた原審判決に対し、保険会社側が後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは,事故発生時に全ての損害が発生して遅滞に陥ることを前提として,後遺障害逸失利益についていわゆる継続説を採用した平成8年4月25日最高裁判判決に反する等と主張して控訴していましたが、控訴審判決もその結論を是認しました。

○札幌高裁判決は、定期金賠償の方法が問題なく認められる将来介護費用と後遺障害逸失利益とを比較し,両者は,事故発生時にその損害が一定の内容のものとして発生しているという点に加えて,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような損害であるという点においても共通し、その性質を考慮すると,後遺障害逸失利益についても定期金賠償の対象になり得て、定期金賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えについて規定する民訴法117条も,その立法趣旨及び立法経過などに照らして,後遺障害逸失利益について定期金賠償が命じられる可能性があることを当然の前提としているものと解すべきとしました。

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主   文
1 被控訴人Y1,被控訴人会社及び被控訴人損保ジャパン日本興亜の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して2293万9806円及びうち900万円に対する平成19年2月3日から,うち1393万9806円に対する平成26年3月13日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記2(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して335万8000円及びこれに対する平成28年10月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記3(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成28年11月から控訴人X1の死亡まで,毎月27日限り,下記アないしウの金員を支払え。
 ア 平成28年11月から平成30年3月まで7万3000円
 イ 平成30年4月から平成46年6月まで16万1333円
 ウ 平成46年7月以降19万4666円
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記4(1)の金員を支払え。


(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X1に対し,連帯して平成32年9月から平成81年8月まで,毎月22日限り,35万3120円を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X1に対し,上記5(1)の金員を支払え。


(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X2に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X2に対し,上記6(1)の金員を支払え。

(1) 被控訴人Y1及び被控訴人会社は,控訴人X3に対し,連帯して132万円及びこれに対する平成19年2月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被控訴人損保ジャパン日本興亜は,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決が確定したときは,控訴人X3に対し,上記7(1)の金員を支払え。
8 控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3のその余の請求をいずれも棄却する。
9 控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3の本件各控訴をいずれも棄却する。
10 控訴人X1の当審における拡張請求をいずれも棄却する。
11 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その1を控訴人X1,控訴人X2及び控訴人X3の各負担とし,その余を被控訴人Y1,被控訴人会社及び被控訴人損保ジャパン日本興亜の各負担とする。
12 この判決は,2項(1),3項(1),6項(1)及び7項(1)に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判

         (中略)

第2 事案の概要
1 本件は,控訴人X1(平成14年○月○日生(下記本件事故当時4歳。当審口頭弁論終結時15歳))が,道路を横断中に被控訴人Y1の運転する大型貨物自動車(以下「本件車両」という。)に衝突される事故(平成19年2月3日発生。以下「本件事故」という。)により脳挫傷等の傷害を負い,自動車損害賠償保障法施行令別表第二(以下,単に「後遺障害等級」という。)3級相当の高次脳機能障害等の後遺障害が残存し,後遺障害逸失利益等の損害を被り,また,控訴人X1の両親である控訴人X2及び控訴人X3が,本件事故により控訴人X1に重篤な後遺障害が残ったため多大な精神的苦痛を被ったとそれぞれ主張して,被控訴人Y1に対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき,本件車両の保有者である被控訴人会社に対しては自動車損害賠償保障法3条に基づいて,連帯して下記(1)ないし(5)の損害の賠償を求め,被控訴人会社との間で本件車両を被保険自動車とする対人賠償責任保険契約を締結していた被控訴人損保ジャパン日本興亜に対しては,保険契約に基づき,被控訴人Y1又は被控訴人会社に対する判決の確定を条件とする同額の損害の賠償を求めた事案である。

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,控訴人らの請求は,主文2項ないし7項の限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。
 その理由は,以下のとおり補正し,後記2において控訴人X1の当審における拡張請求に対する判断を,後記3において被控訴人らの当審における追加主張に対する判断をそれぞれ加えるほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。

         (中略)

3 被控訴人らの当審における追加主張に対する判断
(1) 控訴人X1の後遺障害について


         (中略)



エ なお,後述のとおり,当審は後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めるので,将来,控訴人X1の後遺障害の程度に関し,控訴人X1の労働能力に影響を及ぼすような顕著な改善が認められたような場合には,被控訴人らにおいて民訴法117条1項が規定する確定判決の変更を求める訴えを提起することも可能であることを付言する。


         (中略)

ウ 控訴人X1の後遺障害逸失利益に係る定期金賠償について
(ア)被控訴人らは,控訴人X1の後遺障害逸失利益に係る定期金賠償に関し,
①後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは,事故発生時に全ての損害が発生して遅滞に陥ることを前提として,後遺障害逸失利益についていわゆる継続説を採用した最高裁判所平成8年4月25日第一小法廷判決(民集50巻5号1221頁。以下「平成8年最判」という。)と整合しない,
②消滅時効や除斥期間との関係を考慮すると,後遺障害逸失利益に係る損害賠償義務のため50年以上もの間当事者を拘束するのは合理的でない,
③後遺障害逸失利益が問題となる事案について定期金賠償が認められるとすれば,任意保険が付いている交通事故以外の損害賠償請求など他の事案においても定期金賠償の必要性が生じ,紛争の一回的解決の要請にも反する,などと指摘して,後遺障害逸失利益に係る定期金賠償については理論的に認められず,また,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることは相当ではないと主張する。

(イ)まず,後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることに理論的な問題があるかについて検討する。
 将来介護費用については,定期金賠償の方法が問題なく認められるところ,将来介護費用と後遺障害逸失利益とを比較した場合,両者は,事故発生時にその損害が一定の内容のものとして発生しているという点に加えて,請求権の具体化が将来の時間的経過に依存している関係にあるような損害であるという点においても共通している(この点において慰謝料などとは本質的に異なっている。)。

 後遺障害逸失利益の上記の性質を考慮すると,後遺障害逸失利益についても定期金賠償の対象になり得るものと解され,定期金賠償を命じた確定判決の変更を求める訴えについて規定する民訴法117条も,その立法趣旨及び立法経過などに照らして,後遺障害逸失利益について定期金賠償が命じられる可能性があることを当然の前提としているものと解すべきである。

 被控訴人らが指摘する上記①の点については,平成8年最判は,交通事故の被害者が事故後にたまたま別の原因で死亡したことにより,賠償義務を負担する者がその義務の全部又は一部を免れ,他方被害者ないしその遺族が事故により生じた損害のてん補を受けることができなくなるというのでは,公平の理念に反する結果になることなどを考慮して,かかる実質的な不都合を回避するためにその限度でいわゆる継続説を採用したものに過ぎず,このことにより後遺障害逸失利益についての定期金賠償を否定したものではないと理解することができ,後遺障害逸失利益につき定期金賠償を認めることが平成8年最判と整合しないとはいえない。

 加えて,平成8年最判の後に言い渡された最高裁判所平成8年5月31日第二小法廷判決(民集50巻6号1323頁)は,被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合,事故と死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合は死亡後の生活費を控除することができる旨を判示しており,これは事故発生時に発生した損害がその後の事情によって変更することに他ならないことを考慮すれば,後遺障害逸失利益が定期金賠償の対象となると理解することも可能であると解される。

 また,上記②及び③の点については,それは後遺障害逸失利益に限らず,将来介護費用などを含む定期金賠償一般についていえることであって,特に後遺障害逸失利益について定期金賠償を認める場合に限って問題となるものではなく,個々の事案において,定期金賠償を認めることの相当性を検討すれば十分であると解される。

(ウ)進んで,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めることの相当性について検討する。
 これまで述べてきた控訴人X1の年齢や後遺障害の性質や程度,介護状況などに照らすと,本件における控訴人X1の後遺障害逸失利益については,将来の事情変更の可能性が比較的高いものと考えられること,被害者側である控訴人らにおいて定期金賠償によることを強く求めており,これは後遺障害や賃金水準の変化への対応可能性といった定期金賠償の特質を踏まえた正当な理由によるものであると理解することができること,将来介護費用についても長期にわたる定期金賠償が認められており,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めても,被控訴人らの損害賠償債務の支払管理等において特に過重な負担にはならないと考えられることなどの事情を総合考慮すれば,本件においては,後遺障害逸失利益について定期金賠償を認める合理性があり,これを認めるのが相当である。

(エ)したがって,本件において後遺障害逸失利益について定期金賠償を認めた原判決の判断は相当であって,被控訴人らの上記主張は採用できない。

エ その他,被控訴人らが種々指摘する点を考慮しても,上記1の結論を左右するものではない。

5 よって,被控訴人らの控訴に基づき主文2項ないし8項のとおり原判決を一部変更し,控訴人らの本件各控訴及び控訴人X1の当審における拡張請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
 札幌高等裁判所第2民事部
 (裁判長裁判官 草野真人 裁判官 下澤良太 裁判官 石田明彦)
以上:5,125文字

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