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マンション内漏水事故について管理組合ら責任を一部認容した地裁判決紹介

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令和 5年 6月29日(木):初稿
○マンションの給排水管不備について専有部分か共用部分かの争いについて判断した判例を探しています。マンションの区分所有者である原告が、原告の居室において生じた漏水事故の修理費用につき被告管理組合の管理費から支出することはしないとした被告組合の決議が無効であることの確認を求めるとともに、漏水事故は共用部分である給湯管破損が原因であるとして修理費用の返還等を求めた事案の、給湯管も共用部分に該当するとして最低限の修理費に限って請求を認容した平成18年1月30日東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン)の関連部分について紹介します。

○マンションの給排水管と繋がる給湯管について、原告は床スラブ内に埋設された給湯管において発生したもので共用部分に該当すると主張し、被告管理組合は、熱源機や給湯管を含む給湯システムは、各区分所有者が排他的に占有し、管理しているものであるから、共用部分には当たらず、専有部分に属すると主張しました。

○判決は、本件漏水事故の原因箇所である給湯管は、その構造や設置場所に照らし、原告居室内のコンクリート製の床スラブに埋設されており、これを点検し、修理するためには、床スラブを掘削し、さらには階下の電気設備室等からその天井裏を調査する必要があることが認められ、これによれば、当該給湯管は、区分所有法上、専有部分に属しない建物の付属物であり、共用部分に該当するとしました。

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主  文
1 原告の主位的請求をいずれも棄却する。
2 平成15年11月30日開催の被告の総会においてされた別紙決議目録記載の決議及び平成16年3月7日開催の被告の臨時総会においてされた同決議が、いずれも無効であることを確認する。
3 被告は、原告に対し、19万1973円を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の、その余を原告の各負担とする。
6 この判決は、主文第3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 原告の請求

1 主位的請求
(1) 原告と被告間で、平成15年11月30日開催の被告の総会が不存在であることを確認する。
(2) 原告と被告間で、平成16年3月7日開催の被告の臨時総会が不存在であることを確認する。
2 予備的請求
 主文第2項と同旨。
3 被告は、原告に対し、393万6512円を支払え。

第2 事案の概要
 本件は、マンションの区分所有者である原告が、被告に対し、総会の招集手続等に重大な瑕疵があったとして、主位的に、総会自体の不存在確認を求め、予備的に、各総会でされた別紙決議目録記載の決議の無効確認を求めるとともに、原告居室内の給湯管は共用部分に該当するから、給湯管破損による漏水事故のために支払った修理費用は被告が負担すべきものであるなどとして、不当利得に基づき、その費用の返還を求め、さらに、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案である。

1 前提となる事実

         (中略)

(2) 本件漏水事故が共用部分に関するものか否か。
(原告の主張)
 本件漏水事故は、原告居室の床スラブ内に埋設された給湯管において発生したものであり、管理規約上、「床スラブ」や「給排水衛生設備」は共用部分に該当するものとされている上、床スラブ内は区分所有者において簡易に補修し得る場所ではないから、共有部分に該当するというべきである。
 そして、現に、被告は、本件総会において、平成15年以降に生じた漏水事故の修理費用については管理費から支出する旨の決議を行っているのであり、原告居室内の本件漏水事故について補償しないとするのは、明らかな矛盾である。

(被告の反論)
 本件マンションにおける給湯システムは、給排水管とは異なり、各戸において、各区分所有者が個別に東京ガスから購入するものであり、熱源機や給湯管を含む給湯システムは、各区分所有者が排他的に占有し、管理しているものであるから、共用部分には当たらず、専有部分に属するというべきであり、少なくとも、熱源機から各室内に伸びている給湯管は専有部分に属するものである。

(3) 原告主張の損失及び損害

         (中略)

第3 当裁判所の判断
1 本件総会及び本件臨時総会の不存在又は決議の効力について


         (中略)

2 本件漏水事故が共用部分に関するものか否かについて
(1) 原告は、本件漏水事故の原因箇所である給湯管は、共用部分に該当する旨主張し、被告は、これを争い、専有部分に属する旨主張する。
 そこで検討するに、まず、証拠(甲2)によれば、管理規約上、床スラブや給排水衛生設備など、専有部分に属さない建物の付属物は、共用部分に属する旨定められている(管理規約8条、同別表第2)。
 また、前記「前提となる事実」(4)記載の事実と証拠(甲10、甲28、甲29、甲31、乙32、乙34の1ないし16)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告居室においては、玄関外側のメーターボックス内に、水道及びガスの各配管及び開閉用のコック、計測メーター、熱源機等が存在していること、室内用給水管からの分岐管が熱源機を通過して給湯管となり、室内に引き込まれているが、この給湯管は、メーターボックス内において既にコンクリートの下に埋設され、室内でもそのままコンクリート製の床スラブに埋設されていること、原告は、平成9年秋頃、室内において、床スラブ内の給湯管の破損によって本件漏水事故が発生したため、修理業者に依頼して本件修理工事を行ったが、その際、費用を節約するため、メーターボックス内において既存の給湯管を切断して漏水を防止した上、これに代わるものとして、メーターボックス内から室内に向けてブロック壁を貫通して新たに給湯管を1本設置する工事を行うこととし、この給湯管は室内各箇所において露出したまま存在していること、原告宅の階下は本件マンション全体の電気設備室(乙34の3)等となっていることが認められる。

(2) 以上の事実に基づいて考えると、本件漏水事故の原因箇所である給湯管は、その構造や設置場所に照らし、原告居室内のコンクリート製の床スラブに埋設されており、これを点検し、修理するためには、床スラブを掘削し、さらには階下の電気設備室等からその天井裏を調査する必要があることが認められ、これによれば、当該給湯管は、区分所有法上、専有部分に属しない建物の付属物であり、共用部分に該当するというべきであり、これに反する被告の主張は採用の限りでない。

3 原告主張の損失及び損害について
(1) 前記2で判示したところによれば、被告は、共用部分に該当する給湯管に生じた破損については、共用部分の管理としてその修理を行わなければならないものであるから、相当な修理費用についてはこれを負担すべき責任を負う。
 そして、前記2(1)の認定事実と証拠(甲7)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、本件修理工事の実施に当たり、費用を節約するために、前記のような修理工事を行い、その費用として、平成9年暮れ又は平成10年初め頃、修理業者に対して19万円を支払ったことが認められる。

 そうすると、原告は、被告に対し、不当利得として、19万円の返還を求めることができるところ、その遅延損害金の起算日については、本件証拠上、原告が具体的にこの修理費用額を明らかにして被告に対して支払を請求したのは本件訴状によるものと認められるにすぎないことからすれば、訴状送達日の翌日である平成16年10月17日をもってその起算日とすべきであるから、同日から原告の請求する期間である同年12月31日までの間(76日)について民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金を算出すると、1973円となる(平成16年は、年366日の日割計算。円未満四捨五入。)。
 よって、原告は、被告に対し、合計19万1973円の支払を求めることができる。

         (中略)

4 以上によると、原告の本訴請求は、主文第2項及び第3項の限度で、理由がある。
 (裁判官 安浪亮介)
以上:3,338文字

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