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雇用期間5年限定特約付雇用契約を有効とした地裁判決紹介

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令和 4年 1月26日(水):初稿
○判例時報令和4年1月21日号(2501号)に掲載された労働関係判例を紹介します。令和3年3月30日横浜地裁川崎支部判決(判時2501号93頁)で、要旨は、被告との間で雇用期間を1年とする有期雇用契約を締結し、その後4回にわたり契約を更新した後、当初の雇用契約から5年の期間満了により雇止めされた原告が、当初の雇用契約には、雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の不更新条項が付されていたものの、同条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、原告には雇用継続の合理的期待があったなどと主張し、雇止めが無効であるとして争った事案につき、原告の同主張を排斥し、雇用の継続を期待することについて合理的な理由があるとは認められないとしたものです。

○関連条文は、労働契約法で、以下の通りです。
第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。
 この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
  
第19条(有期労働契約の更新等)
 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。


○事案は以下の通りです。
・被告は,自動車運送,鉄道利用運送・建設,特殊輸送等の物流事業全般及び関連事業を事業内容とする株式会社
・原告は,h24.9から,派遣元を訴外株式会社aとする派遣社員として,被告川崎支店b配送センターにおいて就労を開始し,h25.6,被告との間で配送センター事務を行う事務員として有期雇用契約を締結。
・雇用期間は、当初、h25.7.1~h26.6.30で4回更新
・更新する場合があるが、最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはないとの特約付
・被告は原告に対し、h30.6.1頃,特約に基づき、同月30日をもって本件雇用契約を雇用期間満了とすることを書面により通知。
・原告は
①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり,原告には雇用継続の合理的期待があった,
②同雇止めには客観的合理性,社会通念上の相当性が認められないなど
③雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、同契約に基づく賃金請求権に基づき,上記雇止め後であるh30.8.25から毎月25日限り月額賃金26万9497円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで改正前の商法514条に基づく商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた


○判時概要は以下の通りです。
原告請求は全て棄却
その理由は、
本件雇用契約は,雇用契約書に,契約期間の更新限度がh30.6.30までの5年である旨が明確に定めら,原告は,本件雇用契約締結時において,契約内容を十分に認識した上で本件雇用契約を締結

本件においては,通常は労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前である本件雇用契約締結当初から,更新上限があることが明確に示され,原告もそれを認識の上本件雇用契約を締結
原告の業務は,顧客の事情により業務量の減少・契約終了があることが想定されていたこと,原告の業務内容自体は高度なものではなく代替可能であったことからすれば,恒常的とまではいえないから、原告に,本件雇用契約締結から雇用期間が満了したh30.6.30までの間に,更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認め難い。

本件雇用契約締結時において,5年を超える有期雇用契約を締結する場合には無期転換申込権が発生することを説明したことはなく,本件雇用契約締結前に雇用期間等の条件が示された形跡はないが,本件雇用契約書及び説明内容確認票の各記載内容によれば,原被告間の雇用期間は5年を超えない条件であることは一義的に明確であり、したがって,もとより労働契約法18条の適用を受ける余地はない。

労働契約法18条は,有期契約の利用自体は許容しつつ,5年を超えたときに有期雇用契約を無期雇用契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し,もって労働者の雇用の安定を図る趣旨であり、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に,当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではなく、5年到来の直前に,有期契約労働者を使用する経営理念を示さないまま,次期更新時で雇止めをするような,無期転換阻止のみを狙ったものとしかいい難い不自然な態様で行われる雇止めが行われた場合であれば格別,有期雇用の管理に関し,労働協約には至らずとも労使協議を経た一定の社内ルールを定めて,これに従って契約締結当初より5年を超えないことを契約条件としている本件雇用契約について,労働契約法18条の潜脱に当たるとはいえない。したがって,同法の潜脱を前提とする公序良俗違反の原告の上記主張は理由がない。

以上:2,686文字

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