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譲渡禁止特約付債権の債権譲渡に関する平成9年6月5日最高裁判決紹介

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平成30年 1月31日(水):初稿
○「譲渡禁止特約付債権の債権譲渡に関する平成21年3月27日最高裁判決紹介」の続きで、同様に譲渡禁止特約付債権の債権譲渡に関する平成9年6月5日最高裁判決(判時1615号39頁、判タ952号296頁)を紹介します。

○この事案では、譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人がこの特約の存在を知り、又は重大な過失によりこの特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者がこの債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできないと解するのが相当であるとされました。

民法第116条(無権代理行為の追認)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
上告代理人本田敏幸の上告理由について

一 譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右債権の譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできないと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第111号同48年7月19日第一小法廷判決・民集27巻7号823頁、最高裁昭和48年(オ)第823号同52年3月17日第一小法廷判決・民集31巻2号308頁参照)。

二 本件訴訟において、上告人Xは、昭和62年12月9日にA有限会社から、同会社のB株式会社に対する(1)弁済期を同月26日とする売掛代金債権909万2220円及び(2)弁済期を昭和63年1月31日とする売掛代金債権274万5340円の合計1183万7560円の債権(以下、(1)の債権を「売掛代金債権(1)」といい、(1)(2)の債権を併せて「本件売掛代金債権」という。)を譲り受けたと主張しているところ,原審の適法に確定した事実は、次のとおりである。

1 A社は、本件売掛代金債権を有していたところ、これには譲渡禁止特約が付されており、上告人Xは、昭和62年12月9日当時、本件売掛代金債権に譲渡禁止特約が付されていたことを知っていたか、そうでないとしても、右特約の存在を知らないことにつき重大な過失があった。


(一)A社は、同月10日、B社に対し、本件売掛代金債権を上告人に譲渡した旨の債権譲渡の通知をした。
(二)平塚社会保険事務所長は、同月11日、本件売掛代金債権に対して滞納処分による差押えをした。
(三)C株式会社の申立てにより、同月21日、本件売掛代金債権に対する仮差押えの執行がされた。
(四)藤沢税務署長は、同月22日、売掛代金債権(1)に対して滞納処分による差押えをした。
(五)上告人の申立てにより、昭和63年1月11日、A社を債務者として本件売掛代金債権に対する差押えがされた。

3 B社は、同月29日、本件売掛代金債権につき、真の債権者を確知することができず、かつ、滞納処分による差押えと強制執行による差押え等が競合したことを理由として、民法494条及び滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律20条の6第1項を根拠法条とするいわゆる混合供託をした。B社は、その際、A社から上告人Xへの本件売掛代金債権の譲渡を承諾した。

三 右事実関係の下においては、仮に上告人Xの主張するように、昭和62年12月9日に上告人XがA社から本件売掛代金債権の譲渡を受けたものであるとしても、上告人Xは、右当時、本件売掛代金債権の譲渡禁止特約の存在を知り、又は重大な過失によりこれを知らなかったのであるから、右譲渡によって本件売掛代金債権を直ちに取得したということはできない。そして、本件売掛代金債権に対して、同月11日に平塚社会保険事務所長により、同月22日に藤沢税務署長により滞納処分による差押えがされているのであるから、B社が昭和63年1月29日にA社から上告人への本件売掛代金債権の譲渡に承諾を与えたことによって右債権譲渡が譲渡の時にさかのぼって有効となるとしても、右承諾の前に滞納処分による差押えをした被上告人に対しては、債権譲渡の効力を主張することができないものというべきである。

 したがって、右と同旨をいう原審の判断は是認することができる。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、すべて採用することができない。
 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高橋久子 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄)
以上:2,063文字

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