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認知症と意思能力に関する参考判例での一般論紹介

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平成29年 1月 6日:初稿
○認知症と意思能力に関する参考判例を探していますが、認知症の高齢者女性が、一時期の顧問弁護士に対して、3億円以上の預金及び会社の発行済み全株式を含む数億円の全財産を遺贈する内容の秘密証書遺言、自筆証書遺言について、意思能力ないとして無効とした平成25年4月11日京都地裁判決(判時2192号92頁)が見つかりました。

○その中で、認知症と意思能力に関する一般論を述べており、参考になりますので、以下に紹介します。

1 認知症について
(1)概要

 認知症とは,成人が脳の器質的障害によって広範かつ継続的に認知機能(記憶などの高次脳機能及び知能)障害が起こり,日常生活に差し障りが起きた状態を指す。
 認知症の原因の代表的なものはアルツハイマー病であるが,その他にも,出血,梗塞,動脈硬化といった血管性障害を原因とすることもある。アルツハイマー型認知症と血管性認知症とでは,前者では,知的機能障害がなだらかに進行していくのに対し,後者では,ある時点で知的機能が急激に落ち,その後しばらく進行がなく,またある時点で急激に落ちるという階段状の進行をするという違いがある。

(2)中核的な症状
 認知症の症状において,脳の細胞が死ぬことが直接の原因となる中核的な症状には,次のものがある。
① 記憶障害(短期記憶が定着せず,進行すると長期記憶も失われる)
② 見当識障害(時間・場所・人物が分からない)
③ 言語障害
④ 構成障害(部分を空間に配置することができない)
⑤ 注意障害(数字の逆唱や計算ができない)
⑥ 視覚認知障害(失認等)
⑦ 行為障害(失行や実行機能障害等)

(3)派生する症状
 認知症の患者は,記憶障害や見当識障害のため,過去の経験や他人からの助言を思い出しながら目前の出来事に対応するという総合的な判断能力が衰える。そのため,判断が近視眼的となり,「目の前にいる人の言うことが全て」という状態になりやすい。
 中核的な症状に加え,性格,素質,環境,心理的状況等が複合的に作用して起こる周辺症状として,認知症の患者には,不安,抑うつ,自閉,幻覚・妄想,食行動異常,迷子,徘徊,失禁,不潔行為,暴言,暴力等が現れることがある。また,多くの場合,味覚に変化が生じる。
 これらのうち,失禁・不潔行為は,見当識障害や空間失認のためにトイレの位置がわからなくなったり,トイレにたどり着けても失行のためにドアを開けられない,あるいは衣服をうまく脱げないということが原因であり,認知症が進んだ段階で現れると考えられている。また,認知症によって排尿をコントロールする大脳が障害されることで,神経因性膀胱となり,これにより尿失禁をすることもある。

1 遺言能力の相対性について
 民法は,近代法の大原則とされる「私的自治」を採用し,個人が自分の意思により(単独の意思表示又は相手方との合致した意思表示-契約により),法律関係の発生・変更・消滅を具体的に規律することを認めるものであるが,それは,あくまで,正常な意思活動に基づく行動(意思表示)がされたことを前提とする。
 認知障害を負う者は,私的自治の理念に適った行動ができないのであるから,その者の財産が私的自治の名の下に散逸してしまう危険まで民法が容認しているとは到底解されないからである。
 したがって,民法には明示的な規定を欠くものの,意思表示がその本来の効果(表示された意思のとおりに法律関係が発生・変更・消滅するとの効果)を生ずるためには,その意思表示がもたらす結果を正しく理解する精神能力を有する者によってされる必要があり,その精神能力を欠く者がした意思表示は無効であると解されている。
 すなわち,20歳以上の者であれば誰でも有効に契約を締結することができるわけではないし,15歳以上の者であれば誰でも有効に遺言ができるわけではない。意思表示を有効に行うための精神能力は「意思能力」と呼ばれ,遺言を行うのに要求される精神能力は特に「遺言能力」とも呼ばれる。
 意思表示が,どの程度の精神能力がある者によってされなければならないかは,当然のことながら,画一的に決めることはできず,意思表示の種別や内容によって異ならざるをえない(意思能力の相対性)
 単純な権利変動しかもたらさない意思表示の場合(日常の買い物など),小学校高学年程度の精神能力がある者が行えば有効であろうが,複雑あるいは重大な権利変動をもたらす意思表示の場合,当該意思表示がもたらす利害得失を理解するのにもう少し高度な精神能力が要求されるから,小学校高学年程度の精神能力しかない者が行った場合,意思能力の欠如を理由に意思表示が無効とされることが多いものと思われる。
以上:1,921文字

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