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マンション駐車場専用使用権集会決議についての最高裁判決紹介2

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平成28年 9月23日:初稿
○「マンション駐車場専用使用権集会決議についての最高裁判決紹介」の続きで、引用された平成10年10月30日最高裁判決(判例タイムズ991号288頁)全文です。

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主   文
一 原判決中、上告人らの敗訴部分のうち、(一)上告人らが駐車場専用使用権を有することの確認を求める請求に関する部分、(二)平成2年7月1日以降、平成3年4月22日までの間、上告人水上市幸が月額500円、その余の上告人らが月額700円を超えて駐車場使用料の支払義務を負わないことの確認を求める請求に関する部分、(三)上告人らが駐車場の占有使用の妨害禁止を求める請求に関する部分をいずれも破棄する。
二 前項(一)及び(三)の請求に関する部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
三 第一項(二)の請求に関する部分につき、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
四 上告人らのその余の上告を棄却する。
五 第二項の部分に関する控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とし、前項の部分に関する上告費用は上告人らの負担とする。

理   由
一 本件事案及び原審の確定した事実関係の概要

 上告人ら(又はその被承継人。以下同じ。)は、マンション分譲業者から、建物専有部分の区分所有権及び敷地の共有持分とともに、マンション敷地の一部に設けられた駐車場の専用使用権の分譲を受け、管理組合である被上告人に駐車場使用料を支払ってこれを専用使用してきた。被上告人は、総会の決議により、規約を改正した上、駐車場使用料を増額し、上告人らに増額後の使用料の支払を求めたが、上告人らがこれを拒否したため、駐車場使用契約を解除した。そこで、上告人らが被上告人に対し、駐車場専用使用権を有することの確認等を求めたのが本件訴訟である。第一審は、上告人らの請求のうち、駐車場専用使用権を建物区分所有権等とともに自由に譲渡・賃貸する権利を有することの確認を求める部分を棄却し、その余の請求を認容した。これに対し、原審は、上告人らの駐車場専用使用権は右契約解除により消滅したとして、当初の専用使用料の額を超える駐車場使用料の支払義務を負わないことの確認を求める上告人らの請求のうち契約解除後の部分のみを認容し、その余の請求をすべて棄却したので、上告人らがこれを不服として争っている(以下、駐車場専用使用権を「専用使用権」と、駐車場使用の対価を「使用料」という。)。

 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
1 本件マンションは、昭和49年10月に建築された11階建ての区分所有建物で、総戸数は365戸である。分譲業者であるA株式会社は、本件マンションの分譲に際し、敷地の一部に47区画の駐車場を設け、マンション購入者のうちの希望者に対し、先着順に専用使用権を分譲した。その分譲代金は、普通自動車用が40万円、軽自動車用が30万円であり、それを含めた本件マンションの分譲代金は平均約850万円であった。

2 本件マンションの土地附区分建物売買契約書には、「Aは、上告人らに対し、建物専有部分のほか、建物共用部分、共用施設及び敷地についての各共有持分、専用使用権を売り渡す。」(一条)、「売買代金は、駐車場関係費金00円也を含む。」(二条)、「マンションの買主は、敷地のうち専用駐車場については、専用使用権者がその用途に従いこれを使用することを承認する。」(八条二項)と規定されている。右二条の駐車場関係費の欄には、専用使用権を取得した者については前記の金額が記入され、それ以外の者については空欄とされている。

3 上告人らを含む本件マンションの購入者全員は、購入に際し、Aの作成した管理組合規約案を承認する旨が記載された書面に署名をし、同社に差し入れた。これにより、右規約案は、区分所有者全員に承認され、管理規約(以下「旧規約」という。)として成立した。旧規約18条には、駐車場の使用に関し、「駐車場は専用使用権者のみが使用できるものとし、他の組合員は異議を言わない。」(一項)、「専用使用権者は、組合員の中から抽選により管理者が定める。」(二項)、「専用使用権者は、あらかじめ管理者の承認を得た上、組合員に対してのみ専用使用権を譲渡することができる。」(三項)、「専用使用権者は、別に定める使用料を管理者に支払う。」(四項)、「使用料を三箇月分滞納した者又は組合員の資格を喪失した者は、専用使用権を失う。」(五項)と規定されている。また、使用料は、管理費等に関する細則により、普通自動車用が月額700円、軽自動車用が月額500円と定められた。

4 その後、被上告人の設置した駐車対策委員会は、昭和52年に、本件マンションの敷地内に新たに14区画の駐車場を増設するとともに、近隣の民間駐車場に10区画の借上げ駐車場を確保し、いずれも月額1万円の使用料を徴収して組合員に使用させた。右増設・借上げ駐車場の使用料と上告人らの駐車場の使用料との間に相当の差があることなどから、組合員より不満の声が上がるようになり、上告人らの専用使用権について被上告人内部で議論がされるようになった。理事会は、組合員の間に駐車場利用等をめぐって旧規約の改正を求める要望が強いとして、総会で旧規約を改正することとした。

5 平成2年5月26日、本件マンションの通常総会(以下「本件総会」という。)が開催され、旧規約の定める総議決権の五分の四以上の賛成決議により、B1博多管理規約(以下「新規約」という。)が設定された。新規約15条には、専用使用権に関し、「区分所有者は、駐車場について、被上告人が特定の区分所有者に対し駐車場使用契約により専用使用権を設定することを承認する。」(一項)、「駐車場について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、被上告人に使用料を納入しなければならない。」(二項)、「区分所有者がその所有する住戸部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡、貸与したときは、その区分所有者の専用使用権は消滅する。」(三項)と規定され、66条には、義務違反者等に対する措置として、「組合員が使用料を含む管理費等を二箇月以上滞納した場合は、被上告人において14日以上の期間を定めて支払を催促し、なお支払がないときは、駐車場使用契約は解除とする。」(二項、四項)と規定されている。

6 本件総会においては、新規約の設定に引き続き、同規約の規定する手続に従って駐車場使用細則を定める決議がされた。
 同細則には、「被上告人は、駐車場の使用者を決定したときは、当該使用者と別に定める『駐車場使用契約』を締結する。」(五条)、「使用料の額は、公共料金等諸般の事情を考慮して理事会が決定する。」(九条)と規定されている。

7 さらに、本件総会においては、管理費等に関する細則を定める決議がされた。同細則によれば、使用料は、普通自動車、軽自動車を問わず、平成2年度は月額4000円、平成3年度は月額5000円、平成4年度以降は月額6000円、増設駐車場については当初より月額1万円とし、市価によって変動することがあるものとされている。

8 その後、被上告人は、上告人らを含む47名に対し専用使用権の買取りを打診し、合計12台分は被上告人が買い取ることとなったが、上告人らは、売却を拒否する一方、被上告人との交渉を本件訴訟代理人に委任した。被上告人は、上告人らに対し、平成2年7月から月額4000円、平成3年1月及び2月は月額5000円の使用料を請求したが、上告人らは、従前どおり月額700円(上告人水上は500円。以下、同じ。)の支払しかしなかった。

9 そこで、被上告人は、平成3年3月22日、上告人らに対し、同年4月22日までに滞納分を支払うよう催告するとともに、支払がないときは駐車場使用契約を解除する旨の意思表示をしたが、上告人らはいずれも右の期間内に催告に係る金員の支払をしなかった。

二 上告代理人Bの上告理由第一点について
1 上告理由第一点は、管理費等に関する細則の制定をもってした本件総会における使用料増額の決議が、上告人らの権利に、建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)31条一項後段所定の「特別の影響」を及ぼすか否かに関するものである。

2 原審は、この点につき、本件総会における使用料増額の決議は、従前からの専用使用権者に一定の不利益を及ぼすことになるが、法31条一項後段にいう「特別の影響」とは、合理的な理由がないのに、特定の区分所有者が受忍限度を超える不利益を受けることをいうと解されるところ、前記の新規約の設定等は、区分所有者相互間における駐車場利用の公平化・適正化を図る目的で行われたこと、また、専用使用権をはく奪するものではなく、その行使方法や得喪につき、共有物たる敷地の利用方法として是認し得る内容により新たに規定を設け、増設駐車場の使用料額との均衡を図るなどの理由により使用料を増額したにすぎないことに照らし、法31条一項後段が適用される場合には当たらない、と判断した。

3 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(一)本件の専用使用権は、区分所有者全員の共有に属するマンション敷地の使用に関する権利であるから、これが分譲された後は、管理組合と組合員たる専用使用権者との関係においては、法の規定の下で、規約及び集会決議による団体的規制に服すべきものであり、管理組合である被上告人は、法の定める手続要件に従い、規約又は集会決議をもって、専用使用権者の承諾を得ることなく使用料を増額することができるというべきである。このことは、新規約の下におけるように、駐車場の使用が管理組合と専用使用権者との間の「駐車場使用契約」という形式を用いて行われている場合であっても、基本的に異なるところはないと解するのが相当である。

(二)そして、法31条1項後段は、区分所有者間の利害を調整するため、「規約の設定、変更は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定めているところ、右の「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。これを使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではないというべきである。

 また、増額された使用料がそのままでは社会通念上相当な額とは認められない場合であっても、その範囲内の一定額をもって社会通念上相当な額と認めることができるときは、特段の事情がない限り、その限度で、規約の設定、変更等は、専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではなく、専用使用権者の承諾を得ていなくとも有効なものであると解するのが相当である。


 そして、増額された使用料が社会通念上相当なものか否かは、当該区分所有関係における諸事情、例えば、(1)当初の専用使用権分譲における対価の額、その額とマンション本体の価格との関係、(2)分譲当時の近隣における類似の駐車場の使用料、その現在までの推移、(3)この間のマンション駐車場の敷地の価格及び公租公課の変動、(4)専用使用権者がマンション駐車場を使用してきた期間、(5)マンション駐車場の維持・管理に要する費用等を総合的に考慮して判断すべきものである。

(三)さらに、本件のように、直接に規約の設定、変更等によることなく、規約の定めに基づき、集会決議により管理費等に関する細則の制定をもって使用料が増額された場合においては、法31条1項後段の規定を類推適用して区分所有者間の利害の調整を図るのが相当である。

(四)しかるに、原審は、使用料増額に関する前記集会決議が上告人らの専用使用権に「特別の影響」を及ぼすものではないとする理由として、区分所有者相互間における駐車場利用の公平化・適正化と増設駐車場の使用料額との均衡を図るために使用料が増額されたことを挙げるのみであって、前記のような観点から、月額700円から月額4000円等への増額が社会通念上相当なものか否か、さらには、もし月額4000円等が相当な額と認められない場合には幾らへの増額であれば相当といえるかについて、所要の審理判断を尽くしていないといわなければならない。なお、この点に関し、原審は、分譲業者は区分所有者全員ないし管理組合の受任者としての地位において専用使用権を分譲すべきものであるとの前提に立ち、上告人らが分譲を受けた専用使用権の性質等が不明確であり、譲渡の効力自体にも疑義があるなどというが、これは増額を正当化する理由となるものではない。

(五)そうすると、原審の判断には、「特別の影響」の有無について、法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法があるというべきであり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は、右の趣旨をいうものとして理由がある。

三 同第三点について
1 上告理由第三点は、被上告人のした駐車場使用契約の解除が有効か否かに関するものである。

2 原審は、この点につき、被上告人は、前記のとおり使用料が増額されたことを前提に、平成3年3月22日、上告人らに対し、同年4月22日までに滞納分を支払うよう催告するとともに、支払がないときは駐車場使用契約を解除する旨の意思表示をしたが、上告人らはいずれも右の期間内に催告に係る金員の支払をしなかったのであるから、これにより上告人らは専用使用権を失ったものであり、被上告人による契約の解除ないしその効果の主張が権利の濫用に当たるとも認められない、と判断した。

3 しかしながら、原審の右判断も是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(一)前記のとおり、管理組合は、規約の設定、変更等又は規約の定めに基づく集会決議をもって使用料を増額することができ、これが専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものでない限り、専用使用権者は増額された使用料の支払義務を負うことになる。しかし、この「特別の影響」の有無、殊に、増額された使用料が社会通念上相当なものか否かは、裁判所の最終的な判断を待たなければ明らかにならない場合が少なくない。したがって、専用使用権者が訴訟において使用料増額の効力を争っているような場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り、許されないものと解するのが相当である。

(二)これを本件について見るに、記録によれば、上告人らは、使用料増額の決議の効力を争い、平成3年3月22日の被上告人の催告に先立つ平成2年10月30日に、被上告人の主張する増額使用料の支払義務の不存在確認請求を含む本件訴訟を提起し、右催告の時点までに三回の口頭弁論期日が開かれていたと認められること、被上告人は、上告人らが裁判で係争中であるにもかかわらず、前記一のとおり、上告人らに増額使用料を支払うよう催告し、これを支払わなかったとして契約を解除したものであること、本件においては、使用料増額の適否について1、2審が判断を異にしたように、被上告人の主張する使用料の増額が社会通念上相当なものであることが明白であるとはいい難いこと等の事情にかんがみると、本件訴訟の提起後、上告人らが従前どおり月額700円の使用料の支払を続けたのにも無理からぬところがあり、他に契約の解除を相当とすべき特段の事情も認められないから、被上告人による契約の解除はその効力を生じないものと解すべきである。

(三)そうすると、被上告人による契約の解除を有効とした原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあるというべきであり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点に関する論旨も、理由がある。

四 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

五 結論
 以上によれば、原判決中、上告人らの敗訴部分のうち、(一)上告人らが専用使用権を有することの確認を求める請求に関する部分、(二)平成2年7月1日以降、平成3年4月22日までの間、上告人水上が月額500円、その余の上告人らが月額700円を超えて使用料の支払義務を負わないことの確認を求める請求に関する部分、(三)上告人らが駐車場の占有使用の妨害禁止を求める請求に関する部分は、いずれも破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上告人らの本訴請求のうち右(一)、(三)については理由があるから、これを認容した第一審判決は正当として是認すべきものであって、右各請求に関する部分につき被上告人の控訴を棄却することとし、右(二)については、本件総会の決議により増額された使用料が社会通念上相当なものか否か等に関して更に審理を尽くさせる必要があるから、同請求に関する部分につき本件を原審に差し戻すこととする。また、本件上告中、専用使用権を建物区分所有権等とともに自由に譲渡・賃貸する権利を有することの確認を求める上告人らの請求に関する部分は、前記一の事実によれば理由がないことが明らかなので、これを棄却することとする。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 河合伸一、裁判官 根岸重治、裁判官 福田 博、裁判官大西勝也は、退官につき署名押印することができない。裁判長裁判官  河合伸一
以上:7,525文字

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