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自動車登録名義なくして破産管財人に対する別除権行使を認めた判例紹介

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平成28年 8月31日:初稿
○自動車の割賦販売において,購入者Aの委託により,販売会社Bに対し割賦金債務の連帯保証をした信販会社Cが,Aに代わって弁済したときには,法定代位により割賦金債権及びBに留保された自動車の所有権を取得すると合意されます。Cが,保証債務の履行として,Bに割賦金債務の弁済をした後に,Aの破産手続が開始された場合,Cは破産手続開始の時点で自動車の所有登録名義がない限り、破産管財人に対抗できないと解されていました(平成22年6月4日最高裁判決)。

○しかし、信販会社Cが自動車所有名義登録をしていなくても、破産管財人に対して、別除権の行使として,留保所有権に基づく自動車の引渡しを求めることができるとした平成28年5月30日札幌地裁判決(裁判所ウェブサイト) 裁判所の判断全文を紹介します。

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第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件基本契約の締結(甲10,11)
ア 原告は,平成10年1月22日,販売会社との間で,自動車販売における保証方式に関する基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。
 本件基本契約では,①原告は,購入者の販売会社に対する自動車の割賦金等債務を連帯保証するとともに,販売会社の委託により売買代金の集金業務を行うこと,②販売会社の販売する自動車の所有権は,所有名義の如何を問わず,販売会社と購入者の間の売買契約,販売会社と原告の間の保証契約の締結後,販売会社から原告に移転し,原告が販売会社に保証債務を履行した場合には,購入者が原告に求償債務を履行するまでは原告に留保されることとした。

イ また,原告は,平成25年3月7日,販売会社との間で,本件基本契約中の自動車の所有権の移転に関し,上記ア②の内容に替えて,販売会社の販売する自動車の所有権は,販売会社の購入者に対する割賦金等債権を担保するために販売会社が留保するが,原告が販売会社に保証債務を履行した場合には,民法の規定に基づき,原告が当然に販売会社に代位し,割賦金等債権及び当該自動車の留保所有権を行使できることを確認する旨の合意をした。

(2) 本件売買契約及び本件保証契約の締結(甲1,6)
ア 販売会社は,平成25年8月20日,本件破産者との間で,本件自動車を,本体価格等の割賦元金210万円及び割賦手数料43万4868円の合計253万4868円(本件割賦金等)で割賦販売する旨の本件売買契約を締結し,原告は,販売会社及び本件破産者との間の三者契約の方式で,本件割賦金等債務について連帯保証をする旨の本件保証契約を書面により締結した。

イ 本件売買契約及び本件保証契約においては,①本件破産者は,販売会社が本件割賦金等の取立て及び受領を原告に委任したことを承諾すること,②本件破産者は,原告に対し,本件割賦金等253万4868円を平成25年10月2日に3万6568円,同年11月から平成32年9月まで,毎月2日限り3万0100円ずつ支払うこと,③本件自動車の登録所有名義は原則として販売会社とし,原告の選択により原告とすることができるが,原告が特に認めた場合はこの限りではないこと,④本件自動車の所有権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債権を担保するために販売会社が留保すること,⑤販売会社,原告及び本件破産者の三者は,原告が,保証債務の履行として販売会社に本件割賦金等の残額を弁済することにより,民法の規定に基づき,当然に販売会社に代位し,本件割賦金等債権及び本件自動車の留保所有権を行使できる旨を確認すること,⑥本件破産者が本件割賦金等の支払を怠り,販売会社又は原告から20日以上の相当な期間を定めてその支払を書面で催告されたにもかかわらず,当該期間内にその支払を行わないとき,又は破産の申立てをしたときは,本件割賦金等債務につき当然に期限の利益を失うこと,⑦原告は,本件破産者が期限の利益を喪失し,あるいは本件割賦金等の支払いを1回でも怠り,原告が必要と認めた場合には,本件破産者に通知,催告することなく,本件割賦金等の残額を販売会社に弁済できること,⑧本件破産者は,本件割賦金等債務につき期限の利益を喪失したときは,原告からの催告がなくても,原告が代位取得した本件割賦金等債権の弁済のため,直ちに本件自動車を原告に引き渡すものとすること,⑨原告は,上記⑧により引渡しを受けた本件自動車について,公正な機関の評価・査定によるその評価額等(以下「本件評価額等」という。)をもって,本件割賦金等債権,同債権の回収費用及び同債権から生じる遅延損害金の弁済に充てること等が合意された。

(3) 訴外Bの連帯保証(甲1,6,乙8)
ア 本件破産者の父親である訴外Bは,平成25年8月20日,本件破産者が,本件売買契約及び本件保証契約によって販売会社又は原告に対して負う一切の債務について連帯保証をする旨の保証契約を書面により締結した。
イ 本件売買契約及び本件保証契約において,販売会社に対する保証債務についての訴外Bの負担割合は10割,原告の負担割合は0割とされた。

(4) 本件自動車の引渡し(甲5)
 販売会社は,平成25年8月20日,本件自動車につき,所有者を販売会社,使用者を本件破産者とする自動車登録手続をし,同日ころ,本件破産者に本件自動車を引き渡した。

(5) 原告による保証債務の履行及び本件破産者の期限の利益喪失等
ア 本件破産者は,平成25年10月28日から平成26年8月26日までの間に,本件割賦金等のうち,平成25年10月分から平成26年8月分(いずれも各月2日が支払期限)までの合計33万7568円(平成25年10月分の3万6568円+3万0100円×10か月分)を,各期限に遅れながら,支払った。

イ 原告は,平成26年9月2日,前記(2)イ⑦の約定に基づいて,販売会社に対し,本件保証契約の履行として,本件割賦金等の残額である219万7300円を支払った(甲4)。

ウ 訴外Bは,原告からの催告を受け,平成26年11月10日,原告に対し,保証債務の履行として,本件割賦金等の平成26年9月分及び同年10月分に相当する6万0200円を支払った(乙2,8)。

エ 原告は,平成26年12月15日,本件破産者の代理人であった弁護士に対し,内容証明郵便をもって,20日以内に,本件割賦金等の平成26年11月分及び同年12月分に相当する6万0200円,同年12月11日時点の遅延損害金1852円及び督促費用等1123円の合計6万3175円を支払うよう催告すると共に,その頃,本件留保所有権に基づき,本件自動車の引渡しを求めた。
 しかし,本件破産者は,上記催告期間内に上記金額を支払わなかったため,前記(2)イ⑥の約定により,本件割賦金等について期限の利益を喪失したが,前記代理人弁護士は,平成22年最判のあることを理由に,本件自動車を原告に引き渡さなかった。

(6) 本件開始決定(甲3)
 本件破産者は,平成27年4月10日,札幌地方裁判所に対し,破産手続開始の申立てを行ったが一旦取り下げ,同月30日に再度申立てを行って,同年5月13日午前11時,本件開始決定を受け,被告が破産管財人に選任された。

(7) 原告の販売会社に対する前記(5)イの保証債務の履行後も,本件自動車の登録所有名義は販売会社のままであり,本件破産者が本件自動車を使用している。

2 争点(本件開始決定の時点で,本件自動車の登録所有名義人ではなかった原告が,本件留保所有権を別除権として行使することができるか。)について
(1)
ア 前記認定事実によれば,本件売買契約及び本件保証契約の際に,原告,販売会社及び本件破産者の三者間では,原告が,販売会社から,本件割賦金等の取立て及び受領の委任を受けるとともに,本件破産者の委託を受けて本件割賦金等債務につき連帯保証すること,本件自動車の所有権は,販売会社の本件破産者に対する本件割賦金等債権を担保するために販売会社が留保すること,原告が,保証債務の履行として販売会社に本件割賦金等の残額を弁済した場合には,原告は,民法の規定に基づき,販売会社に代位して,本件割賦金等債権及び本件留保所有権を行使できることが合意されているものと認められる。

 原告が,販売会社に対し,本件保証契約に基づいて本件割賦金等の残額を弁済した場合,本件破産者に対しては受託保証人としての求償権を取得すると共に,民法500条,501条により当然に販売会社に代位して,前記求償権の限度で,販売会社が本件破産者に対して有していた本件割賦金等債権及びその担保である本件留保所有権を行使できるようになるが,上記三者間の合意は,これと同趣旨の内容を定めたものと解され,原告が,前記弁済後に,販売会社が有する本件割賦金等債権とは異なる債権を独自に取得して,本件破産者との間で,これを被担保債権とする新たな担保権を設定するものではないと解される。

 なお,前記1(2)イ⑨のとおり,前記三者間の合意では,本件破産者が本件割賦金等債務につき期限の利益を失い,本件自動車を原告に引き渡した場合には,原告は,本件評価額等をもって,本件割賦金債務及び同債務の遅延損害金のみならず同債務の回収費用にも充当できるとされているが,販売会社から取立て及び受領を委任された原告が負担する回収費用は,元来,本件破産者が販売会社に対し負担すべきものであり(民法485条),原債権たる本件割賦金等債権に含まれると解し得るものであるから,前記充当に関する合意について,原告が,販売会社の有しない債権を別途取得し,これについて新たな担保権を設定することを予定したものとは解されない。

イ そして,本件自動車について販売会社の登録所有名義があることによって,販売会社は,本件留保所有権を第三者に対抗することができ,前述のとおり,前記弁済によって,本件割賦金等債権及びその担保である本件留保所有権は,法律上当然に原告に移転したものであるから,少なくとも本件開始決定前の時点において,受託保証人である原告が,これを委託した本件破産者に対し,本件自動車の登録所有名義を得ない限り,本件留保所有権を行使し得ないと解すべき理由はないし,本件自動車の登録名義が販売会社にある以上,本件破産者が本件自動車の交換価値を把握するものでないことも公示されているから,原告は,本件自動車の登録所有名義を得ることなく,法定代位による本件留保所有権の取得を,本件破産者の一般債権者にも対抗することができたというべきである。

 そうすると,破産管財人である被告は,本件開始決定により,本件破産者の法的地位を承継すると共に,本件破産者の一般債権者全体のために,本件破産者の財産を管理処分すべき立場に立つということができるが,そのいずれの面を考慮しても,原告は,本件自動車の登録所有名義を得ることなく,本件留保所有権の取得を被告に対抗することができるというべきであるし,破産法49条2項の要請については,本件開始決定前に,本件自動車につき販売会社名義の所有登録がされたことにより,充たされているというべきである


(2)
ア 被告は,原告が,法定代位による本件留保所有権の取得を第三者に対抗し得るとしても,いわば手続的要件として,本件開始決定前に,本件自動車の登録所有名義を得ない限り,破産管財人である被告に対し,本件留保所有権に基づく別除権の行使をすることができず,破産法49条2項はこの趣旨を定めたものである旨主張するものと解され,その理由として,①破産手続の適正かつ効率的な処理のためには,破産手続開始の時点で,権利関係は明確である必要があること,②一般債権者と別除権者の衡平を図る必要があること,③本件自動車の登録所有名義を販売会社のままとすることに合理性はなく,弁済後,本件開始決定までに,登録所有名義を変更することは可能であったのに,原告はこれを怠ったものであること,④販売会社,原告,本件破産者の三者の内部関係は被告には不明であり,権利の所在が判然としないこと,⑤複数の保証人が履行した場合に,権利を行使し得る者が明らかでないことを主張する。
 この点について,これまで認定及び検討したところによれば,以下のイないしカの点を指摘することができる。

イ 破産法49条の趣旨は,①破産手続開始時を基準として法律関係を整理するという点で効率的な破産手続の実現を図ること,及び②破産手続開始により個別の権利行使が禁止される一般債権者と破産手続によらないで別除権を行使することができる債権者との衡平を図ることにあるものと解される。

 しかしながら,本件においては,前記(1)で検討したとおり,原告は,本件自動車の登録所有名義を得ることなく,破産管財人である被告に対し,本件留保所有権をもって対抗し得ると解されるところ,破産法49条2項が,実体法上の権利が認められるものについて,手続的理由でこれを制限する趣旨を定めたものとは解されず,前述のとおり,本件の場合,本件開始決定の前に,販売会社の所有名義で登録されたことによって,同条の要件は充たされているというべきである。

ウ 一般債権者の関係については,前述のとおり,販売会社が登録所有名義を有することで,本件破産者又はその一般債権者が本件自動車の交換価値を把握するものでないことは公示されていると認められるから,原告が,登録所有名義を得ずに,本件留保所有権を別除権として行使したとしても,一般債権者との衡平を害することにはならないと解される。
 逆に,本件の場合,本件破産者は,本件割賦金等を7分の1程度弁済したにすぎず,本件自動車の交換価値を把握するに至っていないことは明らかであるが,原告が本件自動車の登録所有名義を得ていないことを理由にその別除権行使を否定するとすれば,いわば反射的に,本件自動車を本件破産者の一般財産に属するものとして扱わざるを得ないことになるが,その結果はかえって不合理である。

エ 本件売買契約及び本件保証契約によれば,本件自動車の登録所有名義は,原則として販売会社とされる一方で,当初から原告とすることも可能であったとされる。
 しかしながら,販売会社が契約成立と同時に全額の立替払いを受けるような事案とは異なり,本件においては,本件割賦金等が完済されるまでの間,その債権者は販売会社であって,本件自動車の所有権は実際に販売会社に留保されるべきこと,本件割賦金等については順調に弁済されるのが本来であり,保証人である原告が弁済して法定代位が生じるのは,いわば例外であること,完済時や転売時の本件自動車の登録名義の変更についても,東京都にある原告ではなく,札幌市にある販売会社と本件破産者との間で行うのが便宜であること等の事情を総合すると,本件自動車を販売会社の名義で登録したことには,一定の合理性が認められるというべきである。

 また,原告の弁済後,本件自動車の登録所有名義を原告に変更することが可能であったことは被告が主張するとおりであるが,前述のとおり,原告が,少なくとも本件開始決定前に,本件破産者に対し本件留保所有権を行使するために,本件自動車の登録所有名義を得る必要はないと解されること,購入者の債務不履行により保証人が弁済するに至った場合であっても,その後,当該購入者について必ず破産手続が開始されるわけではないこと,登録所有名義の変更については,費用を要する以外に,手続に自動車検査証が必要であり,その備付けがなければ自動車を使用することができないなど,購入者に負担がかかること等を考慮すると,原告が保証人として弁済した以上,当然に本件自動車の登録所有名義の変更をすべきであったとまではいえない。

オ 本件自動車の登録所有名義が販売会社のままである場合,本件割賦金等が弁済中であり,本件留保所有権はなお販売会社にあるのか,完済により権利は実質的に購入者に帰属しているが,名義変更の手続が行われていないに過ぎないのか,保証人により弁済が行われ,法定代位により権利が移転しているのかの区別が困難であることは,被告の主張するとおりである。

 しかしながら,少なくとも,本件自動車が販売会社の名義で登録されている以上,被告において直ちにこれを本件破産者の一般財産に属するものとして扱えないことについては,公示がされているというべきであるし,本件割賦金等の弁済の程度,本件破産者の期限の利益喪失の有無,受託保証人である原告の弁済の有無については,破産管財人である被告において調査可能な事項と解されるから,上述した問題点があることを理由に,画一的処理の要請から,本件開始決定前に原告が登録所有名義を得ない限り,別除権を行使することができないと解する理由はないというべきである。

カ 複数の保証人による保証債務の履行があった場合に,留保所有権を行使できる者が直ちに明らかにならないことも,被告の主張するとおりであり,前記1(3)イの合意によっても,この点が明らかになるとは解されない。
 しかしながら,この点も実体法に従って処理する以外にないと考えられ,複数の保証人による弁済があり得ることを理由に,本件留保所有権の行使に登録所有名義が必要と解することはできない。

キ 以上イないしカで検討したところによれば,破産法49条の解釈又は趣旨として,本件開始決定前に本件自動車の登録所有名義を得ない限り,原告が別除権として本件留保所有権を行使することができないということはできず,この点についての被告の主張は採用できない。

(3) 以上によれば,原告は,本件開始決定の時点で本件自動車の登録所有名義を有していなかったが,破産管財人である被告に対し,本件留保所有権を,別除権として行使することができると解するのが相当である。

第4 結論
 よって,原告の請求には理由があるからこれを認容し,仮執行の宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
 札幌地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 谷 有恒、裁判官 荒井 格、裁判官 八屋敦子

(別紙物件目録省略)
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