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16年間の不貞行為慰謝料100万円を認めた地裁判決紹介

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令和 6年 3月 7日(木):初稿
○原告妻が、被告が原告の亡夫であるCと、平成16年から令和2年3月に死去するまで不貞関係にあったとして、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料及び弁護士費用の合計330万円の支払を求めました。Cと被告は支店長と社員の関係でしたが、平成21年に別宅を賃借し、そこで被告と不貞関係を持っており、原告妻は、令和2年3月C死去時に別宅をCの荷物と搬出に行った際、別宅に置かれた女性用下着・写真・手紙等で不貞行為を知ったようです。

○被告は、Cと一緒に撮影した写真の大半は勤務先の支店の慰安旅行の際に撮影されたものであり、同支店の社員に慕われていたCが他の女性社員とも同様の写真を撮影していたなどと不貞行為を否認しました。しかし、いずれも同行者の存在がうかがわれず、Cと二人で旅先で撮影したものとみるのが自然で、被告は撮影時期や場所を全く覚えていないなどと不合理な供述をしていること、同支店の女性社員と男性社員の関係が良好であっても、腕を組んだり肩を寄せ合ったりして撮影することは不自然で、且つ、支店長と社員とのコミュニケーションとして「愛してる」などと記載した手紙のやり取りは想定し難いとして、平成16年から令和2年迄の不貞関係を認め、慰謝料・弁護士費用110万円の支払を命じた令和5年3月28日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。

○原告に対する責任はCと被告の共同不法行為責任であり、別宅を構えて長年不貞行為を継続したCの責任も重大ですが、なまじ不貞行為を否認したばかり、被告はこの点についての主張をしなかったようです。私だったら、支店長として社員と不貞関係に至ったCの責任は重大で、責任の大半はCにあると主張するのですが。

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主   文
1 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和3年7月22日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する令和3年7月22日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告が原告の亡夫と不貞関係にあったとして、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である令和3年7月22日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 本件の争点及び当事者の主張

     (中略)

第3 当裁判所の判断
1 認定事実

 証拠(甲23、乙20、原告本人、被告本人〈いずれも以下の認定に反する部分を除く。〉)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告は、昭和48年11月25日にCと婚姻したが、Cは、令和2年3月28日に死亡した。
 Cは、株式会社ロッテ商事(現在の商号は株式会社ロッテであるが、以下、時期を問わず「ロッテ」という。)に勤務しており、平成7年1月から平成8年5月まではD支店に、平成13年から平成16年5月まではE支店にそれぞれ単身赴任していたが、平成18年7月20日に退職した。

(2)被告は、平成4年7月から平成21年1月まで、ロッテの契約社員としてD支店に勤務しており、平成7年1月、同支店に単身赴任してきたCと知り合った。当時、Cは同支店の支店長を務めており、被告は、昭和62年生まれと平成2年生まれの子を養育していた。
 被告は、CがD支店に単身赴任していた同月から平成8年5月までの間に、Cに対し、「愛してるよ本当に 大好き B」などと記載した手紙(甲3)を渡したり、出勤前に公園で待ち合わせをしたりすることもあった。

(3)被告は、平成7年頃から平成11年頃までの間に、旅先でCと互いに写真を撮影し合い、腕を組んだり肩を寄せ合ったりして一緒に写真を撮影したことがあったが、これらの写真のうち1枚を除き、同行者の存在は窺われない(甲2、12、15の1ないし3、乙1)。
 また、Cは、平成11年10月24日頃、テレビ番組表の裏紙を利用した紙片に、「いつまでも愛しています」などと記した被告宛ての手紙を作成し、死亡時までこれを保管していた(甲5の9・10)。

(4)原告は、平成16年5月頃、単身赴任先の福岡から自宅に戻ってきたCの荷物の中から、上記(3)の写真の一部(甲2)と上記(2)の手紙(甲3)を発見したが、その際、直ちにCに事情を確認することはなかった。
 原告は、平成20年頃、Cと夫婦喧嘩をした際、上記写真や手紙を示してCを問い詰めたところ、Cは、原告に対し、「悪いと思っている。」と述べた。

(5)Cは、平成21年3月27日、静岡県伊豆の国市所在のa×××号室(以下「別宅」という。)を賃料等月額3万7220円で賃借し(甲4)、以後、1か月に1ないし2回程度、釣りに行くという理由で別宅を訪れるようになったが、原告は、Cの生前、別宅を訪れたことはなかった。なお、鉄道を利用して別宅に行く際には、JR三島駅から私鉄に乗り換え、最寄り駅から約10分歩く必要がある。
 その後、被告は、Cから別宅の鍵を預かるようになり、平成28年ないし平成30年頃には、別宅に宿泊して友人とともに関東地方を訪れることもあったが(乙3ないし6、15の1ないし3)、原告は、これらの事実をCから説明されておらず、被告もまた、別宅の利用を自らの家族に説明することもなかった。

(6)Cは、令和元年6月に病気のため余命宣告を受け、同年秋頃、被告に対し、その旨を伝えた上、Cの預金を使って別宅内の動産類を処分するよう求めた。被告は、同年12月頃、別宅を訪れ、机上に置かれたCのキャッシュカードと預金通帳を預かった。
 被告は、令和2年3月初旬頃、Cから、別宅を退去することになった旨の連絡を受け、同月29日、Cの預金口座から29万円を出金した上、同月31日から同年4月2日にかけて別宅から被告の荷物を搬出した(乙7ないし9)。また、被告は、同年4月3日、上記預金口座から残高の全額6万5270円を出金した。

(7)原告は、同月4日、Cの荷物を搬出するために別宅を訪問したところ、室内に女性用の下着や衣類、化粧品が置いてあるのを確認した。また、原告は、その際、収納ケースの底に手紙(甲5の1ないし10)並びに写真3枚及びサムネイル(甲12、15の1ないし3)が入っているのを確認したほか、お届け先として被告の住所及び氏名が印字された宅急便のラベルを発見し、被告の氏名及び住所を認識した(甲19)。

2 争点(1)(被告とCが不貞関係にあったか否か)について
 上記1の認定事実によれば、被告は、平成7年1月から平成8年5月までの間に、当時の勤務先の支店長を務めていたCに対し、「愛してるよ本当に 大好き」などと記載した手紙を渡したり、出勤前に公園で待ち合わせをしたりすることもあり、平成7年頃から平成11年頃までの間には、旅先でCと互いに写真を撮影し合い、腕を組んだり肩を寄せ合ったりして一緒に写真を撮影したことがあったが、1枚を除き同行者の存在は窺われないこと、Cもまた、同年10月24日頃、「いつまでも愛しています」などと記した被告宛ての手紙を作成し、平成20年頃には、原告に対し、被告との関係について自責の念を示していたことが認められ、これらの事実に照らせば、被告とCは、遅くとも平成8年頃からは、勤務先の上司と部下の関係を超える男女の関係にあったものと推認することができる。

このことは、Cが、別宅を賃借するようになった平成21年以降、その具体的な時期は必ずしも明らかではないものの、原告に説明することもなく被告に鍵を預けて別宅を利用させるようになり、被告もまた、別宅の利用を家族に説明していなかったこと、令和元年秋頃、Cが被告に対して余命宣告を受けた旨を伝えた上、Cの預金を使って別宅内の動産類の処分するよう求め、被告が実際にCの預金を使って別宅から被告の荷物を搬出するなどの身辺整理を行っていること、Cが、被告と男女の関係にあることを前提としたものとしか考えられない多数の置き手紙(甲5の1ないし10)を別宅に遺していたことからも裏付けられ、令和2年3月28日にCが死亡するまでの間、被告とCの関係は継続していたものと推認される。

 これに対し、被告は、Cと一緒に撮影した写真の大半はロッテのD支店の慰安旅行の際に撮影されたものであり、同支店の社員に慕われていたCが他の女性社員とも同様の写真を撮影していた、同支店の社員はとても仲が良かったため、他の女性社員と他の男性社員との間でも「愛してる」などと記載した手紙をやり取りしていたなどと供述するが、被告が慰安旅行の際に撮影されたと述べる写真については、いずれも同行者の存在が窺われず、Cと二人で旅先において撮影したものとみるのが自然であるところ、被告は撮影時期や場所を全く覚えていないなどと不合理な供述をしていること、同支店の女性社員と男性社員の関係が良好であるからといって、腕を組んだり肩を寄せ合ったりして一緒に写真を撮影することははなはだ不自然というべきであって、支店長と社員とのコミュニケーションとして「愛してる」などと記載した手紙をやり取りしていたことはおよそ想定し難いから、被告の上記供述はたやすく信用することができない。

 また、被告は、Cが遺した手紙(甲5の1ないし10)には見覚えがない、別宅の利用に当たっては、Cに対して月額2万円を支払い、友人と3人で別宅をホテル代わりに利用しており、別宅においてCと面会したことはないなどと供述するが、上記手紙は,その文面からして、被告の目に触れることを前提として作成されたものとみるほかなく、被告がこれらの手紙を持ち帰らなかったためにCの下において保管されていた可能性も十分あり得ること、被告が、友人とホテル代わりに利用することを専らの目的として、異性の元上司であるCに月額2万円を支払う合理的な理由は乏しいことからしても、被告の上記供述はたやすく信用することができない。

 したがって、被告は、遅くとも平成16年頃から令和2年3月28日にCが死亡するまで、Cと不貞関係にあったものと認めるのが相当である。 

3 争点(2)(原告が被告とCの不貞行為により被った損害額)について
(1)慰謝料について
 上記2のとおり、被告は、遅くとも平成16年頃から令和2年3月28日にCが死亡するまで、Cと不貞関係を継続したことについて、不法行為に基づき、原告の被った損害を賠償すべき責任を負うところ、原告が、昭和48年にCと婚姻し、長年にわたりCと婚姻生活を営んできたにもかかわらず、Cが死亡した後、別宅において写真や手紙を発見することにより、被告がCと不貞行為を継続していたことを知ったことなど、本件において現れた一切の事情を考慮すると、原告が被告の不法行為により被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金員は、100万円と認めるのが相当である。

(2)弁護士費用について
 原告は、被告の不法行為により弁護士への委任を余儀なくされており、その弁護士費用は、上記(1)の損害額の1割に相当する10万円を下回らないものと認められる。

4 争点(3)(消滅時効の成否)について
 被告は、原告の被告に対する損害賠償請求権は、Cが被告との不貞関係を認めた平成20年頃から3年の経過をもって時効により消滅したと主張するが、上記2において認定し説示したとおり、被告は、遅くとも平成16年頃から令和2年3月28日にCが死亡するまで、Cと不貞関係にあったものと認めるのが相当であるから、平成20年頃から3年の経過による消滅時効をいう被告の主張は採用することができない。

5 結論
 よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第25部 裁判官 平城恭子
以上:4,972文字

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