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婚姻関係破綻に近い状態として請求慰謝料1割を認めた地裁判決紹介

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令和 5年10月17日(火):初稿
○被告は、Cに夫がいることを知りながら、頻繁にCと性交渉を行い、原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為及びそれによってCが妊娠したことによって、破綻したとして、原告が、被告に対し、民法709条に基づき、慰謝料500万円・弁護士費用50万円合計550万円とこれに対する遅延損害金の支払を求めました。

○これに対し、被告はCは既に離婚していたと聞いていたこと、上司であったCのパワーハラとセクハラで、執拗に性交渉を迫られ、抗拒不能になってCと性交渉を行い、その後は、Cから、性交渉の事実を被告の妻に暴露されたくなければ性交渉に応じるよう強要され、抗拒不能になってCとの性交渉を継続したと主張しました。

○この事案において、Cの妊娠が発覚するまで原告とCとの間で離婚が協議されていたことをうかがわせる事実や証拠は見当たらないこととして、請求額の1割相当額55万円の支払を命じた令和4年7月14日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。Cのパワハラ・セクハラで無理矢理性交渉を迫られたとの主張は、Cを怒らせたようで、証人となったCは被告に不利な証言をしています。

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主   文
1 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の、その余を被告の各負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 前提事実

(1)原告(昭和49年○○月○日生まれ)は、韓国籍の男性である。原告は、平成16年10月13日、C(昭和50年○○月○日生まれ。以下「C」という。)と婚姻し、原告とCとの間には、平成21年○月○○日、長女が生まれた(甲1、弁論の全趣旨)。

(2)被告(昭和61年○○月○日生まれ)は、平成25年頃から、Cが代表取締役を務める会社(以下「訴外会社」という。)に勤務していた男性である(なお、原告も,平成28年1月頃まで、訴外会社に勤務していた。)。被告は、平成28年4月23日、Cと性交渉を行い、その後も、Cと頻繁に性交渉を行い、被告とCとの間には、平成29年○○月○○日、男子が生まれた(甲1、弁論の全趣旨)。

(3)原告は、平成29年3月頃、Cが他の男性の子を妊娠したことを知り、同月15日、Cと離婚した(なお、長女の親権者は、Cになった。)(甲1、弁論の全趣旨)。 

2 当事者の主張(要旨)
(原告の主張)
(1)被告は、Cに夫がいることを知りながら、頻繁にCと性交渉を行った(この被告の行為を、以下「本件不貞行為」という。)。

(2)原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為及びそれによってCが妊娠したことによって、破綻した。

(3)原告は本件不貞行為によって多大な精神的苦痛を受けたところ、原告とCとの婚姻期間は12年以上に及んだこと、本件不貞行為の期間は約1年に及び、性交渉の回数も頻繁であったこと、本件不貞行為によってCが妊娠・出産したこと等に鑑みると、本件不貞行為による原告の慰謝料額は500万円を下らず、本件不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用は50万円を下らない。

(4)よって、原告は、被告に対し、民法709条に基づき、550万円及びこれに対する原告とCが離婚した平成29年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告の主張)
(1)原告の主張(1)は否認する。被告は、Cから、原告とは平成28年1月頃に離婚したと聞かされており、本件不貞行為当時、原告に夫はいないと認識していた。被告には民法709条の「故意又は過失」がない。
 また、被告は、上司であったCから、平成28年3月頃からパワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントを受け、執拗に性交渉を迫られ、抗拒不能になってCと性交渉を行った。その後も、被告は、Cから、性交渉の事実を被告の妻に暴露されたくなければ性交渉に応じるよう強要され、抗拒不能になってCとの性交渉を継続した。被告が本件不貞行為をしたのは、Cのパワーハラスメント及びセクシュアルハラスメント等(以下「Cのパワハラ等」という。)によって抗拒不能になったからであり、本件不貞行為には違法性がない。

(2)原告の主張(2)は否認ないし争う。原告とCの婚姻関係は、平成28年4月、既に破綻していた。

(3)原告の主張(3)は否認ないし争う。

3 争点
(1)被告は、Cに夫がいることを知りながら、本件不貞行為をしたか(争点1)。
(2)平成28年4月当時、原告とCとの婚姻関係は既に破綻していたか(争点2)。
(3)被告が本件不貞行為をしたのは、Cのパワハラ等によって抗拒不能になったからか(争点3)。
(4)本件不貞行為による原告の損害額(争点4)

第3 争点に対する判断
1 争点1について

 前記前提事実に弁論の全趣旨を総合すれば、被告は、本件不貞行為をする前、Cが原告と婚姻していたことを知っていたと認められるところ(この認定に反する被告の供述は採用できない。)、被告は、本件不貞行為をする前、Cから原告と離婚したと聞かされており、本件不貞行為当時、原告に夫はいないと認識していたと主張する。そして、被告は、陳述書(乙9)に、平成28年3月頃、Cから離婚したと直接聞かされた、Cから性交渉を迫られたとき、Cが離婚したと話していたと記載し、本人尋問の主尋問でもこれに沿う供述をする。

 しかし、被告の上記供述は、具体性に乏しく、曖昧であった。また、被告は、裁判所の補充尋問に対し、Cが離婚したことが前提で話が進んでいたなどとそれまでの供述と整合しない供述をした。以上に照らすと、被告の上記供述は採用できないというほかはなく、他にCが被告に対して原告と離婚したと伝えたことを認めるに足りる証拠はない。
 よって、被告は、Cが原告と婚姻していることを知りながら、本件不貞行為をしたと認められる。

2 争点2について
(1)後掲証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 原告とCの長女は平成28年4月に小学校に入学したが、原告は、長女が小学校を受験する前の平成27年、女性と浮気した(乙4、証人C、被告本人)。
イ 原告は、平成28年1月頃まで訴外会社に勤務していたが、同年2月頃から別の会社に勤務するようになり、訴外会社の従業員の間では、原告とCが離婚したとの噂が立つようになった。また、Cも、その頃、訴外会社の従業員に対し、原告はもういないなどと述べていた(乙8、9、証人D、被告本人)。

ウ 原告は、平成28年2月頃からCと離婚した平成29年3月までの間、頻繁に韓国やベトナムに出張した(甲4)。
エ Cは、平成28年4月23日から平成29年3月までの間、少なくとも週に1回、多いときは週に4、5回、Cの自宅、被告の自宅、訴外会社又はホテルなどで被告と性交渉を行い、最終的に被告の子を妊娠した(証人C)。
オ Cは、平成29年11月に東京家庭裁判所に提出した認知調停申立書に、原告は長期海外在留でCと数年別居しており、懐胎時期である平成29年2月に日本にいなかったと記載した(乙3)。また、Cは、原告と離婚した後の平成30年2月6日、被告に対し、LINEで、長女の受験が終わるまで原告と一緒にいたと伝えた(乙4)。

(2)上記(1)の認定のとおり、原告は、平成27年、女性と浮気し、その後、平成28年2月頃から別の会社に勤務するようになり、訴外会社の従業員の間では、原告とCが離婚したとの噂が立つようになり、Cも、訴外会社の従業員に対し、原告はもういないなどと述べていた。そして、原告とCが本件不貞行為をしていた平成28年4月から平成29年3月までの間、原告は、頻繁に韓国やベトナムに出張し、他方で、Cは、被告と頻繁に性交渉を行い、最終的に被告の子を妊娠した。また、Cは、認知調停申立書に原告と数年別居していたと記載し、被告にも、長女の受験が終わるまでは原告と一緒にいたというメッセージ(すなわち、それ以降は原告と一緒にいなかったというメッセージ)を送っていた。

 以上の事実に、原告は、本件訴訟の原告本人尋問期日に出頭せず、本件不貞行為当時の原告とCとの婚姻関係の状態を供述しなかったことを総合すれば、原告とCの婚姻関係は、本件不貞行為が始まった平成28年4月当時、既に破綻していた可能性があることを否定することはできない。

(3)しかし、原告がCと離婚したのは、Cの妊娠が発覚した後の平成29年3月であったところ(前記前提事実)、それまでに原告とCとの間で離婚が協議されていたことをうかがわせる事実や証拠は見当たらない。
 また、証拠(甲4、6、証人C)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、平成28年2月頃から平成29年3月までの間の韓国やベトナムに出張していない期間は日本にいたところ、時折、C及び長女と旅行に行ったり、一緒に食事をしたりしていたことが認められる(なお、証人Cは、原告が日本にいた上記期間、原告は、C及び長女と同居しており、Cとも性交渉を行っていたと証言する。しかし、上記のとおり、Cは、認知調停申立書及びLINEでは、原告と別居していた旨述べていた。

また、Cは、原告と離婚したことについて責任を感じているところ(証人C)、被告が、Cのパワハラ等を理由に原告に対する損害賠償責任を争っていることからすれば、Cは、証人尋問で、被告に原告に対する損害賠償責任を認めさせるために、殊更に原告に有利な証言(被告に不利な証言)をする可能性があることを否定することはできない。以上の事情に照らすと、原告が日本にいた上記期間、原告は、C及び長女と同居しており、Cとも性交渉を行っていたとの証人Cの証言を直ちに採用することはできない。)。

(4)このように、Cの妊娠が発覚するまで原告とCとの間で離婚が協議されていたことをうかがわせる事実や証拠は見当たらないこと、原告は、本件不貞行為がされていた期間中、時折、C及び長女と旅行に行ったり、一緒に食事をしたりしていたことからすれば、平成28年4月当時、原告とCの婚姻関係が既に破綻していたと断定することはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。よって、争点2に関する被告の主張は理由がない。

3 争点3について
 被告は、被告が本件不貞行為をしたのは、Cのパワハラ等によって抗拒不能になったからと主張し、これに沿う証拠(乙1、5、7、9、被告本人)を提出する。

 しかし、上記証拠によっても被告がCのパワハラ等によって抗拒不能になっていたとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。よって、争点3に関する被告の主張は理由がない。

4 争点4について
 原告とCとの婚姻関係は、本件不貞行為が始まった平成28年4月当時、既に破綻していたと断定することはできないものの、上記2(2)の事情を総合すれば、原告とCとの婚姻関係は、本件不貞行為が始まった平成28年4月時点で、破綻に近い状態であったと推認される。そして、既に認定してきた事実を総合すれば、原告とCとの婚姻関係は、本件不貞行為及びそれによってCが妊娠したことによって完全に破綻したと認められる。

 上記の原告とCの婚姻関係が破綻した経緯のほか、原告とCの婚姻期間、本件不貞行為の期間及び回数、本件不貞行為によってCが妊娠・出産したことなど本件に顕れた一切の事情を勘案すれば、本件不貞行為による原告の慰謝料額は50万円、本件不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用は5万円と認めるのが相当である。

第4 結語
 以上によれば、原告の請求は、55万円及びこれに対する平成29年3月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第14部 裁判官 村主隆行
以上:4,961文字

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