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不貞慰謝料150万円・侮辱慰謝料10万円の各支払を命じた地裁判決紹介

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令和 5年 8月22日(火):初稿
○原告が、被告は原告の夫Cと不貞行為に及んだと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料等500万円の支払を求めたのに対して、被告が、原告が被告にしたショートメールの送信等による嫌がらせ行為は、被告の日常生活の平穏を害し、被告の名誉感情を害するものであって不法行為を構成すると主張して、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料等100万円の支払を求めました。

○この事案で、被告に対し150万円、原告に対し10万円の支払を命じた令和4年3月25日東京地裁判決(LEX/DB)関連部分を紹介します。判決は、原告とCの婚姻は、別居に至るまで35年以上の長期間であること、被告の行為により、原告がCから離婚を求めて調停を申し立てられる事態に至ったこと、その他本件に現れた一切の事情を考慮し、被告不貞行為慰謝料は150万円、原告が被告に対し被告を侮辱する内容のメッセージを送信して留守番電話に録音をしたことは、被告に対する不法行為で、侮辱的なメッセージの内容、その回数等、原告の行為が被告の不貞行為に起因すること等一切の事情を考慮し、原告の不法行為の慰謝料は10万円とするのが相当としました。


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主   文
1 被告は、原告に対し、150万円及びこれに対する令和元年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告は、被告に対し、10万円及びこれに対する令和3年3月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求及び被告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、本訴反訴ともに、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 本訴
 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する令和元年6月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 反訴
 原告は、被告に対し、100万円及びこれに対する令和3年3月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件本訴は、原告が、被告は原告の夫C(以下「C」という。)と不貞行為に及んだと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料500万円及びこれに対する不法行為の日(被告とCが遅くとも同棲生活を開始した日)である令和元年6月2日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 本件反訴は、被告が、原告が被告にしたショートメールの送信等による嫌がらせ行為は、被告の日常生活の平穏を害し、被告の名誉感情を害するものであって不法行為を構成すると主張して、原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料100万円及び不法行為後の日である令和3年3月5日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実又は括弧内に掲げる証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1)
ア 原告(昭和29年○月○日生まれ)は、台湾出身で、昭和50年12月15日に帰化により日本国籍を取得し、同じく台湾出身のC(昭和26年○月○○日生まれ)と、昭和57年3月3日、中国の方式により婚姻した。なお、Cは、平成23年10月21日に帰化により日本国籍を取得した。
 原告とCとの間には、長男(昭和57年○○月○○日生まれ)、二男(昭和59年○月○日生まれ)及び三男(昭和61年○月○日生まれ)がいる。

 Cは、東京都港区α×丁目で劉内科整形外科(以下「本件診療所」という。)をその院長として経営している(甲2)。原告は、薬剤師の資格を有している(甲20)。
 原告とCは、子らとともに、平成8年4月から、原告の住所地にある5階建て住宅「q1」(以下「q1」という。)での生活を始めた。

イ 被告(昭和33年○月○○日生まれ)は、D(昭和25年○○月○日生まれ)と婚姻していた者である。

(2)被告とCは、被告が本件診療所を患者として訪れたことから知合い、現在は、被告の住所地において同居している。

(3)Cは、令和2年3月、原告を相手方とする夫婦関係等調整調停(離婚)を東京家庭裁判所に申し立てた。

2 争点
(本訴)
〔1〕被告とCとの不貞が原告とCとの間の婚姻関係が破綻した後に始まったものであるかどうか。
〔1〕-1 被告とCとが不貞を開始したのはいつか。
〔1〕-2 原告とCとの間の婚姻関係が破綻したのはいつか。
〔2〕損害の額
(反訴)
〔3〕原告の被告に対するショートメールの送信による嫌がらせ行為等があったか、これらは不法行為を構成するか。
〔4〕損害の額

3 争点についての当事者の主張

         (中略)

第3 争点に対する判断等
1 認定事実


         (中略)


2 争点〔1〕(婚姻関係破綻後の不貞かなど)について
(1)争点〔1〕-
1(不貞開始時期)について


 Cが、平成30年12月には、被告に対し、80万円もの金員を渡し、平成31年1月10日には、原告に対し、好きな人ができたなどと告白したこと(前記認定事実(3)ア、イ)、Cのこの告白が、被告以外の者を指すものであったことをうかがわせる的確な証拠はないことからすると、平成30年末から平成31年初の頃には、被告とCとの関係は、相当程度親密になっていたものと推認することができる。

その上で、同年2月中旬からはCの外泊が多くなり、同年4月28日から同年(令和元年)5月5日まで、被告とCが二人きりで台湾に行ったこと(前記認定事実(3)ウ、エ)からすると、遅くとも、同年(平成31年)4月下旬までには、被告とCとは、男女関係を持つに至っていたと推認することができる。


a 被告本人は、Cが平成30年12月に被告に80万円を渡したのは、被告が、本件診療所の受付事務に加え、本件診療所のホームページの作成等のアドバイスの対価であったとの趣旨の供述及び陳述(乙9)をし、証人Cも同趣旨の証言及び陳述(乙8)をする。

しかし、本件診療所のホームページが開設されたのは令和元年11月29日であるところ(甲26、被告本人)、その作成に1年間近くを要したことについて、被告は、Cの写真を撮るに当たって汚れた白衣を変える必要があったなどと供述するのみで、合理的な説明をすることができていないことからすると、上記80万円の趣旨についての被告本人の供述等は、採用することができない。

そして、上記80万円が相当高額なものであることに加え、被告及びCがこれを渡した趣旨について事実と異なるというべき供述等をしていることを併せみれば、Cが被告に上記80万円を渡したことは、両者が相当に親密な関係にあったことをうかがわせる事情であるということができる。

b 被告本人は、平成31年4月28日からCと二人きりで台湾に行ったことについて、被告の貿易の仕事の関係でCの知合いを紹介してもらうためであったとの趣旨の供述及び陳述(乙9)をし、Cも同趣旨の陳述(乙8)をする。

しかし、化粧品を台湾において販売するためにその卸先として7人程度を紹介してもらったとの趣旨の被告本人の供述内容は、医師であるCが化粧品の卸先を紹介するという点において不自然であるし、7人程度を紹介するために8日間程度も台湾に滞在する必要性が判然としないものであって、採用することができない。かえって、被告とCが二人きりで台湾に8日間程度という短くない期間にわたって滞在したという事実は、その時点において、両者の間に男女関係があったことを強く推認させる事情であるというべきである。

c 以上のほか、上記アの推認を妨げる事情を認めるに足りる的確な証拠はない。

(2)争点〔1〕-
2(婚姻関係破綻時期)について

ア 原告とCは、遅くとも平成26年又は平成27年からは寝室を別にするようになってはいたものの、q1において同居生活を続けていた上、本件診療所において共に仕事をしていたものであり、平成29年だけでも複数回共に旅行に行くなどしていた(前記認定事実(1)ア~ウ)。Cが被告と親密になってからは、Cの外泊は増えたものの、Cは、なお、基本的にはq1を生活の本拠とし、原告との同居生活を送っていたものである(上記(1)ア、前記認定事実(3)イ、ウ、(4))。

 以上からすると、Cが被告と親密になっていくに従い原告とCとの婚姻関係が破綻に向かっていったということはいえるものの、被告とCとは、男女関係を持つに至っていたものと認めることができる平成31年4月下旬においては、なお、原告とCは同居生活を送っており、婚姻関係が破綻していたものと認めることはできない(原告とCの婚姻関係は、令和元年6月2日~同月6日頃にCがq1に帰宅しなくなったことにより、破綻するに至ったものと認めることが相当である。)。

イ 被告は、原告とCが平成24年又は平成25年頃には別居状態に至っていたなどと主張し、証人Cはこれに沿う内容の証言及び陳述(乙8)をする。しかし、長年連れ添った夫婦が寝室を別にすることが別居を基礎付ける事情であるとはいい難いものであるし、食事や洗濯を別々にしていたとの趣旨の証人Cの証言は、裏付けのないものであって、にわかに採用し難く、ほかに、原告とCが平成24年又は平成25年頃には別居状態に至っていたことを基礎付ける的確な事情を認めることはできない。

(3)被告の原告に対する不法行為の成否
ア 以上からすると、被告とCは、平成31年4月下旬までには男女関係を持つに至ったものであり、その時点では、原告とCの婚姻関係が破綻していたと認めることはできない。そして、原告とCが別居し、更にはCが離婚を求めて調停を申し立てるに至った(前記前提事実(3))のは、主として、被告とCとが男女関係を持ったことによるものであると認めることができる。

イ なお、被告は、Cから、原告とCとの婚姻関係が破綻していたと聞いており、少なくとも過失はないとも主張するが、被告が主張する事実を認めるに足りる的確な証拠はなく、かえって、前記認定事実を踏まえると、被告において、令和元年6月2日~同月6日頃までは、Cが基本的にはq1に帰宅することを認識していたことを容易に推認することができ,この推認を妨げる事情は見当たらないことからすると、被告の上記主張は、採用することができない。

ウ したがって、被告は、Cとの不貞行為により、原告とCとの婚姻関係を破綻させたことについて、不法行為責任を負う。 

3 争点〔2〕(本訴請求の損害の額)について
 原告とCの婚姻は、別居に至るまで35年以上の長期間にわたるものであること、被告の行為により、原告がCから離婚を求めて調停を申し立てられる事態に至ったこと、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告の不法行為により原告が受けた精神的苦痛を慰藉するための慰謝料は、150万円とするのが相当である。

4 本訴請求に係る遅延損害金の始期について
 原告は、本訴請求の遅延損害金の始期を、被告とCが同居生活を始めた令和元年6月2日とするが、被告とCが同居生活を始めた具体的時期は、証拠上、明らかであるとはいえない。
 もっとも、遅延損害金は不法行為の日から発生するものであるところ、同年(平成31年)4月下旬には、被告の不法行為がされたと認めることができることは、前記2で認定したとおりであり、そうすると、原告は、被告に対し、同年(令和元年)6月2日以降の遅延損害金の支払を求めることができる。

5 争点〔3〕(原告の嫌がらせ行為等)について
(1)原告の嫌がらせ行為等として被告が主張する事実は、前記認定事実(5)ア~ウの限度で認めることができ、その他は認めるに足りる的確な証拠はない。

(2)その上で、検討すると、原告が被告に送信したLINEメッセージやショートメッセージ(前記認定事実(5)ア)の内容は、少なくとも、被告のことを「娼婦」とする点で、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であって、被告の名誉感情を害するものとして、被告に対する不法行為を構成するというべきである。また、原告が、被告の留守番電話に、被告のことを「娼婦」と言う内容のメッセージを録音したこと(前記認定事実(5)イ)については、上記と同様の理由から、被告に対する不法行為を構成するというべきである。

 他方、原告が、Cとの別居の前後頃に、被告に対し、電話を、異常ともいえる多数回かけたことがあることを認めることができる(前記認定事実(5)イ)ものの、その目的は必ずしも明らかではなく、また、このような電話が長期間にわたり続いたとまで認めることができないことからすると、原告の上記行為が被告に対する不法行為を構成するとまではいえない。原告が被告の留守番電話に、被告の家族をめちゃくちゃにしてやるなどの内容のメッセージを録音したこと(前記認定事実(5)イ)も、その文脈等が明らかではなく、被告に対する不法行為を構成するものと認めるに足りない。

 また、荷物の送付については、送付状の記載中に被告に対する侮辱的表現が含まれていたものと断定することはできず、送付状の記載を含め、原告による荷物の送付が、被告に不快な思いを抱かせるものであったとしても、これが被告に対する不法行為を構成するとまでいうことはできない。

(3)原告は、不貞行為をされ、離婚されてしまうかもしれないという焦燥感、不安、憤慨、悲壮感等に基づくものであることなどを指摘し、原告の行為に違法性はないと主張する。しかし、原告が指摘する点は、慰謝料額の算定においては考慮することができるとしても、侮辱行為の違法性を失わせる事情ということはできない。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。

6 争点〔4〕(反訴請求の損害の額)
 上記5(2)のとおり、原告が被告に対し被告を侮辱する内容のメッセージを送信し、留守番電話に録音をしたことは、被告に対する不法行為を構成するというべきであるところ、侮辱的なメッセージの内容、その回数等に加え、原告の行為が被告の不貞行為に起因するものであるといえること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告の不法行為により被告が受けた精神的苦痛を慰藉するための慰謝料は、10万円とするのが相当である。

第4 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は、被告に対し、慰謝料150万円及びこれに対する令和元年6月2日以降の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、被告の反訴請求は、原告に対し、慰謝料10万円及びこれに対する令和3年3月5日以降の遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 
東京地方裁判所民事第32部 裁判官 馬渡直史
以上:6,131文字

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