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不貞行為をした妻からの夫への離婚・財産分与請求を棄却した高裁判決紹介

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令和 5年 8月 1日(火):初稿
○「不貞行為をした妻からの夫への離婚・財産分与請求を認めた家裁判決紹介2」の続きで、その控訴審平成25年1月16日東京高裁判決(ウエストロー・ジャパン)理由部分を紹介します。

○夫である控訴人と2年以上別居している被控訴人が、婚姻関係の破綻を主張して離婚を求めるとともに、子らの親権者を自らに定めること及び相当額の財産分与を求めたところ、原審が婚姻関係破綻の事実を認める一方、被控訴人が不貞関係に至っていたことを認定したが、婚姻関係破綻の原因が専ら又は主として被控訴人の不貞行為にあるとまでは評価できないとして請求を全部認容しました。

○控訴人夫が控訴しましたが、控訴審東京高裁判決は、原審同様、婚姻関係の破綻の事実を認めましたが、別居の開始及び被控訴人が子らと自宅を出たことなどは被控訴人妻の不貞関係に起因していたと認められるから、婚姻関係破綻に至った責任は、主として被控訴人にあるといえ、本件に現れた諸事情を総合して判断すると現時点で有責配偶者である被控訴人からの離婚請求を認めることは信義則に反するとして、原判決を取り消し、被控訴人妻の請求を棄却しました。

○判決は、父子関係に限定して「時の経過に伴い当事者間の感情的対立やその影響により悪化した父子関係が今後改善される可能性も絶無とはいえない。」としていますが、夫婦関係については、今後改善される可能性は絶無と認識しています。しかるに妻の請求を棄却するのは、身勝手は許されないとの論理に尽きます。身勝手な部分は、慰謝料・財産分与の面で調整し、離婚を認める方が、合理的と思うのですが。

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主   文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,1審及び2審を通じて被控訴人の負担とする。
 
事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 主文と同旨

第2 事案の概要
1 本件は,妻である被控訴人が,民法770条1項5号所定の婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して,夫である控訴人との離婚を求め,併せて当事者間の未成年の長男,二男及び長女の親権者をいずれも被控訴人と定めること並びに相当額の財産分与を求めた事案である。

 控訴人は,婚姻関係破綻の事実を否認し,仮に婚姻関係が破綻しているとしても被控訴人は不貞行為をした有責配偶者であるから,離婚請求が信義則に反すると主張して争った。

2 原判決は,現状において婚姻関係が破綻していることを認める一方,被控訴人が訴外D(以下「D」という。)と平成21年12月初め頃知り合い,平成22年2月には不貞関係に至ったことを認めたが,婚姻関係破綻の原因が専ら又は主として被控訴人とDとの交際にあるとまでは評価できないとして,被控訴人の離婚請求を認容し,3人の子らの親権者をいずれも母である被控訴人と定め,控訴人に財産分与として被控訴人に対し1600万円を支払うよう命じた。
 これに対し,控訴人が控訴して,第1記載のとおりの判決を求めた。

3 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次項4のとおり当審における当事者の主張を加えるほかは,原判決理由欄の第2及び第3(2頁2行目から6頁24行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

4 当審における当事者の主張
  
         (中略)


第3 当裁判所の判断
1 証拠等により認められる事実

 証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は,次のとおり補足訂正するほかは原判決理由欄の「第4 当裁判所の判断」の1(1)アないしオ(7頁5行目から12頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1) 原判決7頁11行目の「原告は,」から13行目末尾までを次のとおり改める。
 「原告(被控訴人)は,被告(控訴人)との日常生活において,被告が,原告に対し常にいわゆる上から目線で物事を言ってくる反面,原告や子らから反論されるとすぐに手を挙げたりし,原告の言葉や人の意見を受入れないなどとの気持ちを抱き,被告から常にばかにされていると感じ,被告に対する不満を次第に蓄積して,被告と話をすることにも恐怖感や嫌悪感を持つようになっていった。他方,被告は,原告や子らに対し,夫,父親としての責任を果たさなければならないと考え,仕事で多忙な中でも家族旅行等の時間を作ったりしていたが,原告が被告の思いを理解してくれないなどと感じ,原告に不満をもっていた。原告は,特に,被告が夫婦喧嘩の際に,家族を置いて出て行ったり,運転していた車を置いて外出先から1人で帰ったりすることに不快感,嫌悪感を強めていた。(甲26,乙8,原告・被告各本人)」

(2) 原判決8頁13行目から19行目までを次のとおり改める。
 「 なお,原告(被控訴人)は,上記の別居をめぐる口論の際,被告(控訴人)が「新しい父親を作ったら離婚する。」と発言し,原告が,被告と同居していては新しい父親ができないと別居を要求したのに応じて,被告が自ら家を出て別居に至ったと主張し,原告本人の供述及び陳述書(甲26)にはこれに沿う部分もある。

しかしながら,被告は上記発言を否認しており,その他原告の上記主張を裏付ける証拠はなく,被告は,同月23日頃別居する前には原告に対し謝罪の趣旨で会食の機会を作ろうとし(後記(イ)),別居後も原告に対しメールで同居の希望を伝え(後記ウ(オ),エ(イ)),原告の求めに応じて離婚届に署名捺印した後も原告に対し勝手に届け出をしないよう求め,区役所に離婚届出の不受理申出書を提出するなどしていたこと(後記エ(ウ)),被告は子らとの面会を求める(後記エ(ウ))など,父として子らに強い愛着を有しているとみられ,被告以外の者が新しい父親になることを容認するような発言をするとは考えにくいことなどにも照らすと,上記原告の供述等をもって,被告が原告のいうように条件付で離婚に応じる旨を表明した上で別居に応じたとは認められない。そして,被告から「新しい父親を作ったら離婚する。」と言われたからこそDと親密な関係に入ったかのようにいう原告の主張・供述は,単なる弁解にすぎないというべきであり,到底採用できない。」

(3) 原判決9頁18行目の「その後」を「同月末か同年3月初め頃」と改める。

(4) 原判決11頁10行目の末尾に次のとおり加える。
 「その後,原告(被控訴人)と被告(控訴人)は,原告の申し出により話し合い,いったんは被告が自宅に戻ることになった(被告本人)。」

2 婚姻関係の破綻について
(1) 前記1のとおり認められる事実関係に照らせば,被控訴人は,平成21年12月頃家族でお好み焼き屋に出かけた際のいさかいから離婚を考えるようになったが,なお実際に離婚することをためらい,翌平成22年1月初旬に至ってから控訴人に別居を求めており,他方,控訴人は同月22日頃実際に別居するまで被控訴人を食事に誘うなどして関係を修復しようとしていたのであるから,上記別居より前に婚姻関係が破綻していたとは認められない。

 しかし,被控訴人は,平成21年12月9日頃からDと交際を始め,平成22年2月下旬までに同人と不貞関係を結ぶに至り,控訴人も,同月終わりか同年3月初め頃には,被控訴人の不貞行為を把握して,その後被控訴人の行動を監視し,同月24日には被控訴人とDが一緒にいるところで被控訴人と口論となった。

そして,その後の話し合いにより,いったんは控訴人が自宅に戻ることになったものの,被控訴人は控訴人への不信感を強め,控訴人が帰宅する直前に子らと共に自宅を引き払い,同年4月2日頃には,子らとの面会を求める控訴人に対して被控訴人が離婚届出用紙への署名捺印を求め,控訴人もこれに応じざるを得なかったのであるから,控訴人が区役所に離婚届の不受理申出書を提出したこと等を考慮しても,同年4月2日頃には両者の婚姻関係は修復困難な状態となり,実質的に破綻するに至ったものというべきであり,その後も別居状態が続いている現時点において民法770条1項5号にいう婚姻を継続し難い重大な事由があることは明らかである。

(2) 控訴人は,婚姻破綻の主観的要件として,当事者の双方に婚姻を修復させる意図がないことを要すると主張する。しかし,夫婦の一方に離婚意思があり,かつ,民法770条1項5号の事由がある場合には,他方にはなお婚姻を修復維持する意思があるときであっても,夫婦の一方から離婚の訴えを提起して裁判上の離婚をすることができることは,同条項の文言からも,原則として協議又は調停による双方の合意に基づく離婚が成立しない場合に初めて裁判上の離婚を認める我が国の離婚制度からみても明らかであるから,控訴人の上記主張は失当である。

3 被控訴人の有責性について
 前記1の認定事実及び前記2のとおりの婚姻破綻に至る経過からすると,被控訴人が控訴人に対し別居を求めるようになったのは,被控訴人がDと交際を始めた後であり,控訴人が被控訴人の行動を監視し,Dと一緒にいる場で被控訴人と口論に及ぶなどしたのも,控訴人が被控訴人のDとの不貞行為を把握したことが原因とみられる。

そして,控訴人は,不貞行為を把握した後も,被控訴人に再度同居したいとの意思を伝えており,被控訴人は,話し合いによりいったんは控訴人が自宅に戻ることになったのに,控訴人が帰宅する直前に自ら子らと共に自宅を引き払い,控訴人に対して子らとの面会を認めるのと引換えに離婚届出用紙への署名を求めていたのであるから,控訴人が自宅を出ることによる別居の開始及び被控訴人が子らと自宅を出たことのいずれも被控訴人の意思によるものであり,このような被控訴人の言動はDとの交際や不貞関係に起因していたものと認められる。

したがって,婚姻関係破綻に至った責任は主として被控訴人にあるというべきである。ただし,前記1の事実関係によれば,控訴人と被控訴人との夫婦関係は,被控訴人がDとの交際を開始するよりも前から相当程度悪化しており,その原因は,根本的には控訴人と被控訴人との生活感覚や価値観の相違に基づくとみられるものの,控訴人が自己の意に沿わない言動をした被控訴人や子らに対し手を挙げるなど家族に対する配慮を欠いた言動を繰り返したことにもあると認められるから,婚姻破綻の責任が専ら被控訴人にあるとまではいえない。

4 離婚請求の信義則違反について
(1) いわゆる有責配偶者からの民法770条1項5号所定の事由による離婚請求が信義誠実の原則に照らしてもなお容認されるかどうかを判断するには、有責配偶者の責任の態様・程度、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係がしんしゃくされなければならず、更には、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も含めて諸事情を総合的に考慮しなければならない(最高裁昭和62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。

(2) 本件においてこれをみると,有責配偶者である被控訴人の責任の程度は,別居に至る前の控訴人の言動等からすると,極めて重大とまではいえないが,その態様は,自ら不貞行為を行いながら控訴人の関係修復の希望を全く受入れようとせず子らを連れて自宅を出るなど,決して軽視されるべきものではない。

他方,相手方配偶者である控訴人は,被控訴人の不貞等の行為に対する憤りを持ちながらも,現在も被控訴人との婚姻継続を強く希望しており,従前の自己の家族に対する言動については反省し,被控訴人に対し寛容に接する意向を示してもいる。また,控訴人は放送会社の管理職の地位にあって,離婚が認められた場合には,経済的,社会的に過酷な状況に置かれるとは認められないものの,控訴人なりの家族に対する愛情や責任感を有しており,意に反して離婚を余儀なくされれば精神的に多大な衝撃を被ると推認される。

夫婦間の子らは,3名とも11歳未満と未成熟であり,被控訴人の供述によれば,現在特に長男が父である控訴人との面会にも拒否的な状況にあるが,そのような状況も実父母である控訴人と被控訴人との紛争状態の影響を少なからず受けているものと推認され,現状のまま離婚が認められた場合には,現在婚姻費用の分担として控訴人から給付されている生活費が減額されるばかりか,事実上父子関係の断絶状態が継続することにより,監護,教育,福祉の観点から子らに悪影響をもたらすおそれもある。

また,被控訴人は少なくとも原審口頭弁論終結時までDとの交際を継続しているが,D自身にも離婚の協議を続けているとはいえ配偶者があることからすると,そのような生活関係が直ちに法的保護に値するものとはいえない。

さらに,控訴人と被控訴人との別居は平成22年1月22日頃から継続しているが,双方の年齢と平成10年12月に婚姻してからの同居期間を考慮するといまだ別居が長期間とはいえず,時の経過に伴い当事者間の感情的対立やその影響により悪化した父子関係が今後改善される可能性も絶無とはいえない。以上を含めて本件に現われた諸事情を総合して判断すると,現時点で直ちに被控訴人からの離婚請求を認めることは,信義則に反するというべきである。

第4 結論
 以上によれば,被控訴人の本件離婚請求は理由がないから棄却すべきであり,これと異なる原判決は相当ではない。
 よって,原判決を取り消し,被控訴人の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 鈴木健太 裁判官 小宮山茂樹 裁判官 瀬川卓男)

 
以上:5,614文字

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