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不貞行為をした妻からの夫への離婚・財産分与請求を認めた家裁判決紹介

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令和 5年 7月28日(金):初稿
○「不貞行為者ということだけで親権者になれないことはないはず2」に関連した続きで、不貞行為をした妻から夫への離婚請求と財産分与請求が認められた珍しい裁判例として、平成24年6月28日千葉家裁判決(ウエスト・ロージャパン)原告妻の有責性判断関連部分を紹介します。

○2年以上にわたり夫である被告と別居している原告妻が、原被告間の婚姻関係は完全に破綻しているとして、離婚を求めるとともに、子らの親権者を自らに定めること及び相当額の財産分与を求めたところ、被告が離婚自体を争い、また、原告の不貞行為によって受けた精神的苦痛などによれば、財産分与を認めるべきでないとして、分与の可否も争いました。

○これに対し、判決は、本件事情によれば、被告に強固な修復意思があることを考慮しても、婚姻関係が破綻していることは明らかであり、また、全体としてみた場合に、原告の不貞行為等が婚姻関係を破綻させた専らの又は主な原因であるとまでは評価できないから、本件では、原告がいわゆる有責配偶者に当たることが立証されたとはいえないとして、離婚請求を認容し、財産分与につき、婚姻関係破綻以前からの原告の不貞関係の事実等を考慮して財産分与額を1600万円と算定してその支払を命じ、子らの親権者を原告と定めました。

○私としては、有責配偶者の離婚請求は認められないとの考え方自体に疑問を持っており、この判決は、有責配偶者からの離婚請求否認法理について、制限的に捉えた画期的判決であり、勇気ある判決と思いましたが、案の定、控訴審平成25年1月16日東京高裁で覆されました。一審で進歩的・画期的な良い判決が出ても、高裁で覆されることは良くあります。

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主   文
1 原告と被告とを離婚する。
2 原告と被告との間の長男A(平成14年○月○日生),二男B(平成15年○月○日生)及び長女C(平成17年○月○日生)の親権者をいずれも原告と定める。
3 被告は,原告に対し,1600万円を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
 
理   由

第1 請求

1 主文第1,2項と同旨
2 被告は,原告に対し,相当額の財産分与をせよ。

第2 事案の概要
 原告と被告は,平成10年12月21日に婚姻した夫婦であり,両名は,平成14年○月○日に長男A(以下「長男」という。),平成15年○月○日に二男B,平成17年○月○日に長女Cをそれぞれもうけた。
 原告,被告及び子らは,現在の被告宅(以下「自宅」という。)において生活していたが,平成22年1月頃,被告が自宅を出て転居して以降,原告及び子らと被告は,2年以上にわたり別居している。

 本件において,原告は,原告と被告との間の婚姻関係は完全に破綻しているとして,被告に対し,離婚を求めるとともに,上記子らの親権者を自らに定めること及び相当額の財産分与を求めている。これに対し,被告は,婚姻関係の破綻は認められないと主張し,予備的に,原告の不貞行為を理由に本件請求が有責配偶者からの離婚請求に当たると主張して,離婚自体を争うとともに,原告の不貞行為によって被告が受けた精神的苦痛と被告の財産状況を併せ考えれば,財産分与は認められるべきではない旨も主張する。

第3 争点及びこれらに関する当事者の主張
1 争点

 本件における主な争点は,下記のとおりである。
(1) 離婚原因及び有責配偶者からの離婚請求に関して
ア 婚姻を継続し難い重大な事由が認められるか否か(争点①)
イ 原告が有責配偶者であると認められるか否か(特に,原告が訴外D(以下「D」という。)との不貞行為を開始した時期が婚姻関係破綻以前であると認められるかが争われている。)(争点②)

(2) 財産分与に関して
ア aマンションB棟810号室(以下「本件不動産」という。)の評価額(争点③)
イ 被告の退職金に係る財産分与の額(争点④)

2 争点に関する当事者の主張

         (中略)

第4 当裁判所の判断
1 離婚が認められるか否かに関して
(1) 判断の前提として認定される事実


         (中略)

オ 原告及び被告の現在の心境等
 現在,原告とDは肉体関係を伴う交際を継続しており,子らは,Dに「お父さんになって欲しい」と伝えているし,Dも子らの学校行事等に参加している。なお,Dは,現在の妻と離婚につき協議しており,原告及びDは,お互いの離婚の成立を待って,再婚することを考えている(甲26の5頁,原告本人,証人D)。

 他方,被告は,現在も原告との婚姻関係の修復を考えており,具体的にまず何をすべきかにつきはっきりとした考えを持っているわけではないものの,法廷において,これまでよりも原告の話をよく聞き,原告に対して優しい態度で接するつもりである旨述べている。また,被告は,原告の不貞行為に関する証拠を裁判で提出することで婚姻関係が悪化することを危惧したが,それを提出してでも離婚を阻止したいとの思いがあった旨述べている(被告本人)。しかし,このような被告の供述を受けてもなお,原告は,被告との婚姻関係を修復する意思がないことを断言している(原告本人)。現に,原告は,平成23年10月頃から,被告からのメールや電話については,着信拒否の設定をしている(甲40,乙9の5頁,乙14の5,6)。

(2) 婚姻関係の破綻に関する判断(争点①)
 原告は,かねてから被告が喧嘩をした際に家族を放ってその場から立ち去るといった行動をとることを不快に思っており,その思いは,平成21年12月,お好み焼き屋での口論の際,人前で被告に頭を叩かれたばかりか,そのことについて長男が原告を気遣うような言葉を発したことによって決定的となった。

そして,原告は,翌平成22年1月初旬には,離婚を念頭に置いた上で別居することを決意し,被告に対して別居を強く迫り,被告も,一時冷却期間を置くというつもりではあったが,原告の要求に応じざるを得ない状況となった。この段階では,原告・被告間の婚姻関係が破綻に至る兆候がみられたといえる。

もっとも,別居開始後,同年3月上旬の時点において,被告が,原告の不貞行為の事実をも把握した上で同居を提案した際,原告は,同居には明確に難色を示し,双方の思いが異なるために離婚の道を選ばなければならなくなる可能性を示唆しつつも,被告と会うこと自体を拒んだり,直ちに離婚するとの強い態度を示したりするまでには至っていなかったといえるから,この頃までの段階では,婚姻関係に修復の余地が全くなくなっていたとまではいえない。

 しかし,同月に入ってから,原告は,被告の監視的な行動に伴い,被告への不信感を一層強めた。そして,被告は,同月下旬,Dと原告が一緒にいるところを現認した際の口論の直後の時期に,原告に対し,復縁を前提にして自宅に戻ることを連絡したが,原告は,翌日以降は実家に戻るので翌日以降に来て欲しいと返答し,被告に会うつもりがないことを示唆した上(乙1号証のメール5によれば,被告も,上記の原告の行動について,春休みに実家に行く前に父親に会わせるのが人情なのに原告が逆に会わせないようにしたととらえていることがうかがわれる。),現に被告が戻ってくるよりも前に子らと共に自宅を去り,それ以降,自宅に戻ってくることはなかった。こうした原告の一連の行動は,被告からの復縁の呼びかけに応えない意思を明確に示すものと評価することができる。

さらに,その後それほど間をおかない時期に,原告と被告が離婚をめぐる話し合いをした際,被告は離婚届への署名捺印をせざるを得なかったところ,この後,被告が離婚を防ぐために不受理申出までしなければならなかったことは,この時点における原告の離婚意思が固く,単に口論の延長で離婚が問題になっているのではないことを被告自身も十分に自覚していたことを物語っている。

このように,原告は,平成22年3月下旬から4月上旬の時点では,自身の強固な離婚意思を被告に伝えていたものといえるから,その後約2年にわたって別居生活が続いており,原告はDとの新たな生活を考えていて被告との連絡すら拒んでいるという現状のもとでは,被告に強固な修復意思があることを考慮しても,やはり婚姻関係が破綻していることは明らかであり,民法770条1項5号の婚姻を継続し難い重大な事由が認められる。

(3) 有責配偶者性に関する判断(争点②)
ア 前記(1)のとおり,原告とDは,平成21年12月初め頃に知り合い,原告がDに対して被告との関係につき相談するうちに次第に親密となって,被告が別居を了承した上で転居の準備を進めている時期(平成22年1月中旬)には,深夜まで共に外出するほどの関係となった。さらに,原告とDは,別居直後には,原告がDと子らを会わせたいと思うほどの関係となっており,遅くとも同年2月には肉体関係をもち,不貞関係にまで至ったものである。

前記(2)において述べたように,この段階では,原被告間の婚姻関係に修復の余地が全くなかったとまでは評価できないため,原告とDとの不貞行為の時期のみから,原告が有責配偶者に当たらないものと即断することはできない。また,原告が別居後に被告との婚姻関係を継続できないとの意思を決定的に持つようになった原因と思われる被告の監視行動は,原告とDとの交際が前提となっているから,その意味で,婚姻関係の破綻に不貞行為が関係していることは否定できない。

イ しかしながら,原告が,お好み焼き屋での出来事を機に熟慮した末に,別居をする強固な意思を被告に告げた際,被告が一時的な冷却期間という趣旨にせよ,それに応じなければならず,被告が自宅を訪れる際には原告と顔を合わせることすら避けることを意識しなければならないということ自体,婚姻関係が破綻に至る重大な兆候があり,別居した後に再び婚姻関係を修復することが非常に難しいことを端的に示しているところ,そこに至った原因は,飽くまでも性格や考え方の不一致であると考えられ(被告も,本人尋問の際,原告との間に「ボタンのかけ違い」があることをこの訴訟の中で感じたという趣旨を述べている。),客観的にみていずれかに主たる原因があるとまでは評価できない(前記(1)ア参照)。

 そして,原告とDが知り合った時期や原告が別居を申し入れた時期等から考えて,原被告間の関係が破綻に至る重大な兆候を示すような状態になったこと自体に,原告とDとの男女としての交際が有意に影響したとまでは認め難い。

 確かに,上記のように,平成22年1月中旬には,原告とDは,相当親密な関係となってはいたが,上記は飽くまでも原告と被告との間で別居の方針が決定してから10日程度が経過した時点でのことであって,別居が決まったからこそ,原告とDとの関係に変化が生じたという可能性を否定することはできない。

また,原告が最終的に別居を決心したことに,相談に親身に応じてくれるDを男性としても意識するようになっていたことが関わっている可能性を完全に否定することはできないが,仮にそうだとしても,本件証拠上は,原告が別居を考えたきっかけが,飽くまでも前年のお好み焼き屋での出来事を契機として結婚生活を続けられないと感じたことにあるとの認定を左右することまではできないから,上記のような意識さえなければ,原告と被告が別居することにはならなかったとまで断定することはできない。

ウ そうすると,原告と被告との婚姻関係の破綻が決定的なものとなったことに,原告とDとの不貞が影響したことは否定できないし,不貞行為によって被告が原告との婚姻関係を修復するための手段を講じることがより困難になったことも否定できないものの,不貞がなければ,別居という破綻の重大な兆候が現れていた原被告間の婚姻関係が正常なものとなっていたであろうとまではいえず,かつ,原告と被告が別居しなければならない状態にまで至ったこと自体には,原告とDとの交際が関係しているとは認められない。

したがって,全体としてみた場合に,原告の不貞行為あるいはそれに至るまでのDとの親密な交際が,婚姻関係を破綻させた専らの又は主な原因であるとまで評価することはできず,本件では,原告がいわゆる有責配偶者に当たることが立証されたとはいえない。


エ なお,原告は,乙2号証及び同15号証が違法収集証拠に当たる旨主張しているが,被告は,一時的な別居と認識している期間のうちに,一応原告に断った上で自宅を訪れ,その際被告が自然に手にできる場所に置かれていたデジタルカメラの画像を見て,そのデータをUSBメモリに移したというのであるから,被告の行動が,原告やDの人格権を著しく反社会的な方法によって侵害するほどのものであるとまでは評価できず,原告の主張を採用することはできない。

         (後略)
以上:5,260文字

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