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不貞行為配偶者責任免除に関する平成6年11月24日最高裁判決全文紹介

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平成27年 7月29日:初稿
○私個人としては、全く納得できない考え方ですが、不貞行為配偶者の責任を免除したとしても、不貞行為第三者(間男・間女?)の責任には、原則として影響がないとした平成6年11月24日最高裁判決(判タ867号165頁、判時1514号82頁)全文を紹介します。ただし、不貞行為配偶者の責任免除は、不貞行為第三者(間男・間女?)の慰謝料減額事由となるとして、実際減額している判例は多数あります。

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主  文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
右部分について被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理  由
上告代理人○○○○の上告理由一について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右判断は、所論引用の判例と抵触するものではない。論旨は採用することができない。

同二について
 本件訴訟は、上告人がAとの婚姻関係を継続中、被上告人がAと不貞行為に及び、そのため右婚姻関係が破綻するに至った(以下、これを「本件不法行為」という。)として、被上告人に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円とこれに対する本件不法行為の日の後である平成元年11月9日から支払済ずみまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するものである。

 原審は、上告人の右主張事実を認め、本件不法行為に基づく慰謝料は300万円が相当であると判断したが、被上告人が原審において主張した債務免除の抗弁を一部認め、被上告人が上告人に支払うべき慰謝料は150万円が相当であるとし、上告人の請求を全部認容した一審判決を変更して、被上告人に対し、150万円及びこれに対する前記遅延損害金の支払を命じた。

 すなわち、原審は、
(1) 被上告人とAの不貞行為は上告人に対する共同不法行為というべきところ、上告人とAとの間には平成元年6月27日離婚の調停が成立し(以下、これを「本件調停」という。)、その調停条項には、本件調停の「条項に定めるほか名目の如何を問わず互いに金銭その他一切の請求をしない」旨の定め(以下「本件条項」という。)があるから、上告人はAに対して離婚に伴う慰謝料支払義務を免除したものというべきである、
(2) 被上告人とAが上告人に対して負う本件不法行為に基づく損害賠償債務は不真正連帯債務であるところ、両名にはそれぞれ負担部分があるものとみられるから、本件調停による右債務の免除はAの負担部分につき被上告人の利益のためにもその効力を生じ、被上告人とAが上告人に対して負う右損害賠償債務のうち被上告人固有の負担部分の額は150万円とするのが相当である
と判断した。

 しかしながら、原審の右(1)の判断は是認することができるが、右(2)のうち、本件調停による債務の免除が被上告人の利益のためにもその効力を生ずるとした判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。

 民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから、その損害賠償債務については連帯債務に関する同法437条の規定は適用されないものと解するのが相当である(最高裁昭和43年(オ)第431号同48年2月16日第二小法廷判決・民集27巻一号99頁参照)

 原審の確定した事実関係によれば、上告人とAとの間においては、平成元年6月27日本件調停が成立し、その条項において、両名間の子の親権者を上告人とし、Aの上告人に対する養育費の支払、財産の分与などが約されたほか、本件条項が定められたものであるところ、右各条項からは、上告人が被上告人に対しても前記免除の効力を及ぼす意思であったことは何らうかがわれないのみならず、記録によれば、上告人は本件調停成立後4箇月を経過しない間の平成元年10月24日に被上告人に対して本件訴訟を提起したことが明らかである。

 右事実関係の下では、上告人は、本件調停において、本件不法行為に基づく損害賠償債務のうちAの債務のみを免除したにすぎず、被上告人に対する関係では、後日その全額の賠償を請求する意思であったものというべきであり、本件調停による債務の免除は、被上告人に対してその債務を免除する意思を含むものではないから、被上告人に対する関係では何らの効力を有しないものというべきである。

 そうすると、右と異なる見解に立って上告人の請求を一部棄却した原判決は、共同不法行為者に対する債務の免除の効力に関する法理の解釈適用を誤ったものであり、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。この趣旨をいう論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、以上に判示したところによれば、上告人の本件損害賠償請求はすべて理由があることになり、これと結論を同じくする第一審判決は正当であるから、右部分に対する控訴は理由がなくこれを棄却すべきものである。
 よって、民訴法408条、396条、384条、96条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官大白勝 裁判官大堀誠一 裁判官小野幹雄 裁判官三好達 裁判官高橋久子)

上告代理人○○○○の上告理由
法令及び判例違反
一 Aと被上告人の責任の関係

1 原判決はAと被上告人の責任(債務)の関係を共同不法行為であるとしたが、失当である。
 Aと被上告人とが性関係をもったこと自体は、上告人に対する共同不法行為であり、Aは上告人に対する守操義務違反の責任を、被上告人は上告人のAに対する守操請求権の侵害の責任を、それぞれ負担する。
 ところが、上告人とAとの婚姻関係の破綻は、この性関係が発端とはなっているが、離婚は人格的結合による婚姻共同体の破綻であり、離婚による慰藉料債務は、単に、守操義務に違反したことによる責任ではなく、婚姻関係を破綻させたことによる責任である。

2 「夫婦の一方が他の一方から虐侍・侮辱などの身体・自由・名誉などの法益に対する重大な侵害を受け、それが原因となって離婚がなされた場合には、その者は離婚後、離婚原因となった個別の違法行為によって被った苦痛に対する慰謝を求めることができることについては、明治時代から承認されてきた」(佐藤義彦「財産分与と離婚慰謝料の関係」判例タイムス747―126)。

 これに対し、離婚そのものにより被った損害の賠償については、最高判昭31.2.21(民集10―2―124)は、「離婚の場合における慰藉料請求権は、相手方の有責不法な行為によって離婚するの止むなきに至ったことにつき、相手方に対して損害賠償を請求することを目的とするもの」であり、身体・自由・名誉などを侵害する個別的違法行為による責任とは別のものであることを明らかにした。

 また、最高判昭46.7.23(民集25―5―805)も、離婚による慰藉料請求につき、「婚姻関係の破綻を生ずる原因となった上告人の虐待等、被上告人の身体、自由、名誉等を侵害する個別の違法行為を理由とするものではなく、被上告人において、上告人の有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその賠償を求めるもの」と判示した。

 右の個別行為責任と離婚責任との区別は、Aが被上告人と性関係をもったことについて、上告人としては、Aと離婚せずに婚姻関係を継続しながらでも、Aに損害賠償請求をなしうるけれども、離婚による慰藉料請求は、「離婚が成立してはじめて評価されるもの」(前掲・昭46最高判)であることを見れば明らかである。

3 しかるに、原判決は個別行為の責任と離婚の責任とを混同し、被上告人の性関係の責任とAの離婚責任とが共同不法行為にあたり、且つ、両者の関係は不真正連帯であるとしたもので、不法行為法及び前記判例に違反している。

二 連帯債務条項の適用
1 仮に、Aの責任と被上告人の責任とが、原判決のように、不真正連帯の関係に立つとしても、連帯債務に関する民法434条は適用されないにもかかわらず、原判決がこれを適用したのは、同法及び判例に違反している。

2 即ち、不真正連帯債務は、民法432条以下に規定される連帯債務とが異なるものであることは、最高判昭48.2.16(民集27―1―99)、最高判昭48.1.30(裁判集民事108―119)、最高判昭57.3.4(判例時報1042―87)のとおりである。
 右の最高判昭57.3.4は、「民法719条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから、右損害賠償債務については連帯債務に関する434条の規定は適用されない」と明言している。

3 また、原判決は不真正連帯債務者間に負担部分があるとしたが、これも失当である。

4 原判決は、以上のような明らかな誤りを前提として、一審判決が認容した300万円の額につき、上告人が調停において、Aに対し、離婚に伴う慰藉料支払義務を免除したことをもって、被上告人にもその効力が及ぶとして、これを150万円に減額したが、これは、法令及び判例に違反しているから、破棄されねばならない。


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