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ハゲ隠し夫の責任とハゲを理由に逃げた妻の責任

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平成18年12月16日:初稿
「一部身体状況を隠して結婚したことは離婚理由?」でハゲをカツラで隠してお見合い結婚した夫Aさんが、結婚1週間後に、妻Bさんに風呂場でハゲを見られて、ショックを受けたBさんが実家に戻り結婚生活を放棄してことで、AさんはBさんの一方的結婚生活放棄によって蒙った精神的苦痛について、BさんはAさんからハゲを隠して騙されて結婚させられたことの精神的苦痛について、それぞれ相手方に慰謝料請求をした場合、Aさん、Bさんいずれに軍配を上げるべきかとの問題提起をしておりました。

○仮にAさんもBさんのそれぞれ相手方に精神的苦痛の慰謝料として金500万円を請求した場合、判決としては
①いずれの請求も棄却する痛み分け、
②Aさんに金50万円程度の支払を命じるBさんの勝訴、
③Bさんに金50万円程度の支払を命じるAさんの勝訴、
の3通りが考えられます。私の感覚では、Aさん、Bさんいずれが勝訴するにしてもその認容金額は50万円前後ですので、この3通りの結論に分類しました。

○本件は離婚は争いが無く、離婚に至った原因についてどちらに責任があるかが争いになっています。離婚になると特に妻側が当然慰謝料を請求できると思っている方が多いのですが、離婚に至る原因について夫に責任がない限り、離婚になったからと言って慰謝料は請求できません。

○で、この責任の内容ですが、この責任は結婚という一種の契約による義務違反即ち民法752条に定められた「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」との相互扶助義務、同居義務等の義務違反や、不法行為責任即ち相手方に故意、過失による行為が必要になります。

○本件では、AさんはBさんが一方的に結婚生活を放棄したことをもって結婚に伴う同居協力義務違反であり契約違反責任があると、BさんはAさんがハゲを隠していたことをもって欺罔行為即ち騙して結婚に至った不法行為責任があると、それぞれ主張しました。

○ここでのポイントは先ず結婚に当たり身体状況についてどの程度明らかにする義務があるかどうかです。結婚は、男女の性関係を核とする相互扶助関係の構築ですから、性関係を持てない身体状況を隠しての結婚は明らかに義務違反で離婚理由になり且つ隠した方は婚姻破綻について責任を負います。勿論、夫の性的能力がないことを知りつつ敢えて結婚した場合は別ですが。

○その他、人間の身体は多岐に渡る機能があるところ、特定機能について程度が劣り或いは失っていること等の身体障害についてどの程度明らかにすべき義務があるかが問題になります。例えば私は、高度難聴の身体障害6級で補聴器がないと会話が出来ない状況ですが、これら一部身体障害を隠して結婚することが責任を生じる義務違反になるかどうかは微妙な検討が必要です。

○次に容貌の美醜は結婚を決めるに当たっては重要な要素になりますのでこれは結婚に当たっては可能な限り明らかにすべきです。例えば女性の場合も、厚化粧で素顔を隠す例が多く化粧を落としたら別人に変わったなんて例も多くあります。

○結婚に当たり知らせる義務のある身体状況等の範囲の検討には、お見合い結婚と恋愛結婚、交際期間の長さ等の交際の経緯も重要です。本件はお見合いでのスピード結婚であり恋愛で長い交際期間を経ての結婚ではないこともポイントになります。

○私は、結婚を決めるに当たり容貌は重要要素であること、頭部は容貌で重要な地位を占めること、お見合いでのスピード結婚であったこと、この事案の当時は、婚前性交渉等がうるさく制限されており、相手を見極める機会が少なかったこと等を考慮して、ハゲを隠した責任の方が大きいと判断し、Aさんに50万円程度の慰謝料支払義務を認めてもやむを得ないと思っております。
以上:1,525文字

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