平成18年 2月28日(火):初稿 |
○昨日は、32,33期の親しい弁護士5名の仲間での判例勉強会でした。毎月下旬にその月に発行された判例時報3冊を3人の担当者を決めて最低1件以上レポートするだけの単純な勉強会ですが、弁護士2年目位からずっと継続していますので25年近く続いています。 ○今月は判例時報1913号が私の担当で平成17年9月8日最高裁判決をレポートしました。 要旨は、「共同相続に係る不動産から生じる賃料債権の帰属と後にされた遺産分割の効力」で、事案を単純化すると「平成8年10月にAが死亡し、相続人は後妻Bと先妻の子C、Dの3名で、遺産の一部に賃貸ビルがあったところ、平成12年2月に高裁でこの賃貸ビル95%をBが取得する遺産分割決定が下された。この賃貸ビルの賃料収益はA死亡後、B、C、Dが合意した口座に振り込まれていたが遺産分割決定時残高が2億円になっていた。この2億円の配分についてBは遺産分割で取得した不動産割合95%に相当する1億9000万円を主張したところ、C、DはBの取得分は法定相続分相当額の1億円と主張して裁判になった。」ものです。 ○一、二審とも、遺産分割の効力が相続開始時に遡る以上、Bは相続開始時から賃貸ビルの95%を取得していたのでそこから生じる賃料も95%を取得するとしてBの主張を認めました。 ○これに対しC、Dが民法909条等についての法令解釈の誤りがあるとして上告した最高裁の結論は、 ①共同相続財産たる不動産の賃料は遺産とは別個の財産で各相続人が相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する、 ②この確定的に取得した賃料債権は後の遺産分割には影響されない として原判決を破棄し、原審に差し戻しました。 ○相続開始後遺産分割までに相続財産から生じた果実(賃料等)についてはこれまで区々に分かれていました。B主張のように民法909条により相続開始時に遡って元物たる財産を取得した相続人に当然に帰属するという遡及的帰属説とC、D主張の共有財産説がありましたが、共有財産説の中身は色々ありました。 ○それが平成17年9月6日最高裁判決によって「相続開始時から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生じる賃料債権は遺産とは別個の財産で、各共同相続人の相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は後の遺産分割の影響を受けない」と明言されて、実務上の扱いに決着をつけました。 家裁実務の大勢はこの考えでしたがこの問題はこれで片が付いたことになり争いの余地が無くなりました。 以上:1,031文字
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