| 令和 8年 3月 8日(日):初稿 |
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○前件審判(平成27年*月*日付け)において夫が妻に対して支払うべき婚姻費用は,平成26年*月から平成27年*月までの間は月額10万円,同年*月以降は月額11万円と定められていた夫である抗告人が、妻である相手方に対して、婚姻費用を8万3000円に減額することを申し立て、原審で平成28年*月から婚姻解消まで月額9万円の支払を命じられ、抗告人夫が不服として控訴しました。 ○これに対し、重要な事情の変更によって以前の審判が覆される以上、重要な事実に該当するか否かにかかわらず、すべての事情変更を基礎として変更後の婚姻費用を算定すべきであるから、扶養手当を返還する必要が生じる可能性があることも考慮すべきであるとする抗告人の主張について、返還の要否、返還すべき額及び返還すべき時期が未定の扶養手当を事情変更の基礎として考慮することはできないなどとして排しつつ、原審判を変更して、以前に確定した審判によって定められた抗告人が相手方に対して支払うべき婚姻費用を変更(減額)し、相手方に対し、抗告人に対して、既に受け取った婚姻費用のうち、超過した額の返還することを命じた平成29年7月12日福岡高裁決定(判タ1452号76頁、家庭の法と裁判18号92頁)関連部分を紹介します。 ○この決定で重要な点は、抗告人夫による婚姻費用の支払を定めた前回審判後、相手方妻が給与収入を得るようになったことは婚姻費用を減額すべき事情の変更であるとして減額を認めた原審を相当とした上、原審の申立て時期に遡って婚姻費用を減額するため、同時期以降、抗告人が前件審判に従って支払った婚姻費用の過払部分につき、相手方に対し、同人の生活に配慮して分割支払による精算を命じたことです。 ******************************************** 主 文 1 原審判を次のとおり変更する。 (1)当事者間の長崎家庭裁判所佐世保支部平成27年(家)第*号婚姻費用分担申立事件において定められた婚姻費用について,平成28年*月以降,以下のとおり変更する。 抗告人は,相手方に対し,平成28年*月から当事者双方が同居又は婚姻解消に至るまで,月額9万円を毎月末日限り支払え。 (2)相手方は,抗告人に対し,平成29年*月から同30年*月までの間,月額2万円を毎月末日限り支払え。 2 手続費用は,原審及び当審とも各自の負担とする。 理 由 第1 抗告の趣旨及び理由並びにこれに対する相手方の主張 抗告の趣旨及び理由は,別紙「抗告状」、「抗告理由書」,「抗告人主張書面(1)」及び「抗告人主張書面(2)」に記載のとおりであり,これに対する相手方の主張は,別紙「相手方主張書面(1)」記載のとおりである。 第2 当裁判所の判断 1 婚姻費用分担額減額の要否及び減額後の分担額について 当裁判所の認定判断は,次のほかは,原審判の「理由」欄の「2 事実の調査の結果により認められる事実経過」及び「3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原審判の補正 (中略) (2)抗告理由に対する判断 ア 抗告人は,扶養手当の返還の要否及びその金額が未定であることは,相手方の責に帰すべき事由によるものであるから,抗告人の収入から扶養手当分が控除されるべきである(▲学校入校に伴う減収に,扶養手当年額39万円分の減収を併せ考慮すれば,568万1415円から15.6パーセントの減収となる)と主張する。 一件記録によれば,抗告人が,相手方に対し,平成28年*月*日ころ,扶養手当の支給を中止する手続の必要書類につき連絡し,同年*月*日頃には,必要書類を抗告人の勤務先に直接送付したいとの相手方の希望に応じる旨回答するやり取りがあったものの(甲13),結局その後,相手方から必要書類の送付がなかった経緯が認められる。 しかし,上記の事情を勘案しても,前記引用の原審判説示のとおり,返還をすべき額及び時期が未定であるのに,将来の返還を見越し,一定額を減額して過去の特定期間の抗告人の基礎収入を算定することはできない。 イ 抗告人は,重要な事情の変更によって以前の審判が覆される以上,重要な事情の変更に該当するか否かにかかわらず,全ての事情変更を基礎として変更後の婚姻費用を算定すべきであるから,扶養手当を返還する必要が生じる可能性があることも考慮されるべきであると主張する。 しかし,返還の要否,返還すべき額及び返遠すべき時期が未定の扶養手当を考慮できないことは前示のとおりである。抗告人の主張には,上記の理由から▲学校入校中の現実の減少額を考慮すべきであるとの主張も含まれるとしても,本件では前記のとおり抗告人が▲学校に入校していた期間の減収が,ごく短期間のさほど大きな額ではないものである点に特に着目して,あえて減額事由から除外したものであり,抗告人の主張する判断手法と直ちに矛盾するものではない(なお,仮に,平成27年中の年収から扶養手当年額39万円分を引いたものに,その後の収入増を加味した金額を用いたとしても,月額9万円からの有意な減額が生じるわけではない。しかも,前記引用の原審判説示(補正後のもの)のとおり,本来,相手方の基礎収入を算定する際,障害基礎年金に関しては特別経費を通常より多めに控除すべきところ,適切な資料がないためこの点を基礎収入の額に具体的に反映できていないことも勘案するなら,仮に,▲学校入校中の婚姻費用分担額の算定において,抗告人の減収を考慮するとしても,当然に,相当な分担額が月額9万円未満になるとはいえない。)。 2 過払婚姻費用の精算について 上記のとおり,平成28年*月分に遡って抗告人の婚姻費用分担額を減額することとなるので,抗告人が相手方に対して前件審判に従って支払った同月分以降の婚姻費用の一部(月額2万円)は,過払となり,その精算を要する。 現時点で,過払額は,平成28年*月分から同29年*月分までの28万円となる。したがって,その返還を相手方に命じるのが相当である。 ただし,即時に全額を支払うこととするのは,前件審判を前提として生活費を支出してきた相手方に酷であり,相手方において,今後,過払分を返還しながら生活を成り立たせていく必要がある点に配慮すべきである。このような事情に,減額後の婚姻費用額その他一切の事情を併せ考慮して,平成29年*月以降,月額2万円ずつを毎月末日限り支払うよう命じることとする。 3 よって,以上と一部異なる原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官 佐藤明 裁判官 足立正佳 裁判官 佐藤康平) 別紙 抗告状〈省略〉 抗告理由書〈省略〉 抗告人主張書面(1),(2)〈省略〉 相手方主張書面(1)〈省略〉 以上:2,780文字
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