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不倫小説から

平成11年 6月 1日:初稿 平成17年 2月 6日:更新
渡辺淳一氏「失楽園」について

 一昨年,男女小説第一人者渡辺淳一氏の不倫をテーマにした小説「失楽園」が大ベストセラーになり、失楽園は不倫を表す代名詞となりました。
 私は、日経新聞に連載中、毎日欠かさずこの「失楽園」を読んでいました。しかし、連載中,正直のところ、主人公凛子に生身の女性が感じられず、10年前の「化身」の方がずっと面白いと感じていました。
 この小説は、何れも既に結婚生活が破綻状態なっていた者同志のいわば純愛物語で、不倫小説とは呼べないと思います。不倫小説に値するのはやはり同じ年にベストセラーになった林真理子氏の「不機嫌な果実」です。


林真理子氏「不機嫌な果実」について
 一昨年,妻の不倫をテーマにした林真理子氏の小説「不機嫌な果実」もベストセラーになり、テレビや映画にもなりました。私は,こちらは本屋で帯を読んだ程度でしたので、この鶴亀通信不倫特集の編集に当たり単行本を買って読んでみました。帯には衝撃小説と記載されています。さすが当代一流の作家だけあって筋の運びが巧みで,面白くて一気に読み上げました。
 感想は,「衝撃」的とは言えず,極めて常識的小説だということです。我々男女紛争を扱う実務家から言わせると、主人公麻矢子とその夫航一の離婚に至る経緯に関し、このような事例は世間に掃いて捨てるほどあります。その意味で実にリアルで共感できます。夫航一は、妻麻矢子が「何を考え何を求めているか」について全くと言っていいほど無頓着で、典型的な相手を「見ていなかった」ケースであり,離婚に至って当然の事案です。


「不機嫌な果実」あらすじ
 結婚6年目の麻矢子は夫航一があまりかまってくれなくなり、特にセックスもおざなりになり、不満を感じています。不満解消のため先ず結婚前に付き合いのあった妻子ある野村と不倫関係になります、その後独身の音楽評論家通彦と不倫関係になり、通彦が麻矢子に夢中になり、麻矢子は夫航一のもとを去ります。そして擦った揉んだしたあげくに航一と離婚し、通彦と結婚します。
 通彦と再婚後、通彦との結婚生活にも不満を感じ、先の野村と再度関係を持ち始めるところで物語は終わります。

不倫欲求実現の前に常に不満あり
 麻矢子は、セックスに対する不満解消のため、結婚前に付き合いのあった野村に連絡をとり、何度めかのデートで関係を復活します。次に並行して偶々巡り会った通彦との恋に落ち、関係を結びます。しかし、いずれも関係を結ぶ前に、麻矢子は夫航一にここで満たしてくれたら前には進まないと決意して挑みます。しかし、航一は明日の朝が早い「いい加減にしてくれよ」と言って拒否し、麻矢子をひどく傷つけます。
 そこで怒り頂点に達した麻矢子は、前に進みます。
 ここに至る前にこんなこともあります。麻矢子の要求をいつもはぐらかしてきた航一が、ある夜、珍しく麻矢子に挑みます。麻矢子はいつもはぐらかされてきたことへの復讐のために拒否します。すると航一はたちまち手を引っ込めます。麻矢子はこの時、航一の微かな安堵を見逃さず、復讐を果たせなかった屈辱をしっかりと根に持つのです。ここの下りは私も思わず笑ってしまいました。夫たるもの油断してはなりません。妻はしっかり見ているのです。
 このように結婚6年目の麻矢子が不倫に走った原因は、夫航一の麻矢子の心情に対する無頓着にあります。妻が不倫に走る原因は、殆どが麻矢子と似たようなものでしょう。40代、50代の女性には麻矢子は特別我が儘人間であると思うかも知れません。しかし豊かな時代で、且つ少子化時代に育った最近の若い女性は、麻矢子と似たり寄ったりではないでしょうか。


性の怨みも恐ろしい
 食い物の怨みは恐ろしいと言われます。しかし性の怨みも恐ろしいと感じています。大分昔、結婚歴30年の夫婦の離婚調停事件を扱ったときのことです。私が担当した妻は、結婚10年目に夫の浮気が発覚してから夫婦関係がおかしくなり、ここ10数年は性関係がなく、今は夫の顔を見るだけでゾッとし一日も早く別れてスッキリしたいと言います。それでも夫は離婚を拒否し、私は妻側代理人としてから離婚調停を出しました。
 ある時私は、奥さんがずっと性関係を拒否してきたんですかと質問しました。すると彼女はそうとも限らない、私も生身の人間で1年程前趣味の発表会で気分が高揚し、何年ぶりかで自分から夫に求めたが結局応えてくれなかった。それ以来全く求める気持ちもなくなったと憎々し気に言います。当時私は未だ20代で、50代半ばの女性の言葉を実感できず、不思議な思いで聞いていました。
 今私も50代に近付き、その間何百組もの離婚事件の相談を受け、あの奥さんの言葉を少しは実感できるようになりました。いくら長く夫婦として生活しても、男女である以上、性の充足が最も重要であることを痛感します。それだけに充足されない場合の怨みも大きいのです。


私の言いたかったこと-まとめ
 ここまで読んで多くの方は一体小松さんは何を言いたいのですかと疑問に思うことでしょう。実は私自身何を訴えたいのか良く分かっていないようです。それは私自身の男女関係実務経験の乏しさから、男女関係についてまだまだ分からないところがあり過ぎるからです。

 しかし、何とか自分なりに今回言いたかったことを以下にまとめます。
1.不倫欲求の強さについては基本的に男女差はない。
 しかし、現時点においては妻は夫から性の充足を受けている限り、不倫に走らないことが普通である。逆に言うと妻が不倫に走るのは夫が必要な務めを果たしていないことが原因である。

2.本質的性欲求は、男性より女性の方が強い。
 男性より女性の方が「深い」性を与えられており、その分男性より強く、且つ加齢によっても男性程は衰えない。そのためそれが充足されない場合の怨みも強い。

3.やはり夫婦関係の核心は性関係である。
 夫婦となった以上お互いに性的充足感を得られるように努力すべきである。世間にはセックスレス夫婦が増えているというが、これは正常でないと考えるべきである。気持ちのよい性体験を共有することで夫婦としての強い繋がりを実感出来る。この気持ちのよい性体験の共有感の乏しい夫婦は、夫婦の繋がりは薄く、何か事が起きたときに夫婦関係に亀裂が生じやすくなる。
 従って夫婦間でのセックスを維持すべく創意と工夫が必要である。この努力が面倒だと感じるようでは明るく楽しい老後はほど遠いと覚悟すべきである。


男女実務についてよく判らないのに偉そうに述べて恥ずかしい限りです。次回は、私の専門分野である法律の面から不倫問題について私なりの解釈をご説明申し上げます。

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