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中途解約条項がない定期借地契約を中途解除できるか-参考判例紹介2

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平成26年12月11日:初稿
○「中途解約条項がない定期借地契約を中途解除できるか-参考判例紹介1」の続きです。
中途解約の場合、契約残存期間の賃料合計額に相当する金員を違約金として直ちに支払うとの特約について、「債務不履行による解除の場合における違約金の額は,賃貸人が新たな賃借人を確保するために必要な合理的な期間に相当する賃料相当額を超える違約金を定めるものであり,合理的な期間の賃料相当額を超える限度では,著しく賃借人に不利益を与えるものとして,無効と解すべきである。そして,新たな賃借人を確保するための合理的な期間は,それが診療所という限定された目的であることを考慮しても,せいぜい6か月程度と見るのが相当である。」として、21ヶ月分の主張に対し6ヶ月分賃料相当額を違約金と認めました。

○定期借地契約の中途解約の場合、全く同様に考えることはできませんが、少なくとも契約残存期間の賃料合計額に相当する金員が違約金との主張を弱める参考にはなります。

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第3 争点に対する判断
1 本件賃貸借契約における月額賃料の額及びその支払開始時期等について

 前記前提となる事実及び証拠によれば,次の事実が認められる。
(1) 原告は,本件診療所を所有し,同診療所において,「A歯科医院」を開業していた歯科医師であったが,平成12年4月ころ,刑事事件を起こして,公訴提起され,勾留されたため,同年11月ころには,歯科医院を閉鎖せざるを得なくなった。他方,原告は,歯科医院の開業のために,株式会社第四銀行等から借入れをしており,歯科医院を閉鎖すれば,その返済が困難になるような状況にあった。そこで,原告は,刑事事件の弁護人であったB弁護士に対し,自己に代わって歯科医院を経営する者を探すように求め,B弁護士は,歯科医師向けの情報誌に広告を掲載するなどした。

(2) 被告は,医療経営に関する総合コンサルタント業等を目的とする株式会社であったが,上記の広告を見て,B弁護士に対し,本件診療所を自ら借り受けたい旨の申出をした。そして,B弁護士と被告が本件診療所の賃貸借契約の締結について交渉をした。B弁護士は,当時拘置所に勾留されていた原告と連絡を取り合って交渉を進めたが,原告は,同弁護士から,賃料については,第四銀行等との間で,月々の返済額を80万円から50万円に減額することを交渉していたため,公租公課等も考慮して,月額60万円とする旨の報告を受けて,これを了承した。B弁護士と被告との交渉においては,被告は,契約期間を5年間とすることを求め,敷金や保証金の差入れを拒んだため,B弁護士は,契約期間は被告の求めるとおりの5年間とした上,敷金や保証金の差入れがないことの代替策として,中途解約を禁止し,契約が途中で解除された場合にも残存期間の賃料相当額を違約金として支払う旨の特約をすることとし,被告もこれを了承した。

 そこで,B弁護士は,賃料を月額50万円とする第四銀行等に提示するための契約書と賃料を月額60万円とする当事者用の契約書の2通の賃貸借契約書を作成した上,それらを被告に送付し,署名押印を求めた。その際,B弁護士は,月額60万円とする賃貸借契約書が当事者用のものである旨を告げた。そして,原告と被告との間で,本件賃貸借契約が締結されたが,その時点においては,被告において歯科医師を確保しておらず,歯科医院の開業の準備等のために,賃貸借契約の開始時期は,最大限平成14年1月1日まで延期することができるものとされ,賃料支払の開始時期は,最大限同年3月末日まで延期することができるものとされた。

(3) B弁護士は,平成14年2月8日,被告に対し,同年3月末から賃料のうち50万円を原告のローン引落口座に振り込むこと,賃料残金10万円を原告が指定する別の銀行預金口座に振り込むことなどを求め,その後,同月20日にも,被告に対し,賃料のうち50万円を第四銀行南新潟支店の原告名義の普通預金口座に,賃料のうち10万円を北越銀行小針支店の原告の配偶者であるD名義の普通預金口座に振り込むことを求めた。

(4) ところが,平成14年4月になっても,被告の歯科医師の確保が予定どおりに進まず,被告は,同年7月29日に賃料として56万円を支払ったのみで,その後の賃料の支払をしなかった。そこで,B弁護士は,同年8月30日及び同年11月15日,被告に対し,被告からの賃料等の支払がされていないため,原告の第四銀行等に対する返済もできず,同銀行等から債務の履行を督促されており,今後も被告から賃料等の支払がない場合には,同銀行等から原告の所有する不動産のみならずDの実家が担保として提供していた不動産について担保権の実行がされるなどの事態が発生する旨を伝えて,賃料の支払を求めた。

 その後,被告は,同年12月初旬ころ,B弁護士に対し,賃料を月額50万円とすること及び医院長室の一部の模様替えを被告の負担で行うことなどの条件が調うのであれば,平成15年3月1日から開業する方向であること,また,銀行に対して賃料支払のスタートを3月からとすることを求めて欲しい旨を伝えてきた。

 これに対し,B弁護士は,「貴社提案のとおり,平成15年1月準備開始,3月から支払開始ということで,第四リースは承諾しました。第四銀行は支店意見は止むなしということで,本部の決裁まちですが,稟議はとおる見込みのようです。」との記載がある文書を被告に送付したが,賃料を50万円に減額することを承諾することはなかった。

(5) 被告は,平成15年3月から,歯科医師を雇用して,「E歯科クリニック」を開業した。しかしながら,被告は,賃料を支払うことはなく,同年5月22日になって,ようやく50万円を,同年6月20日,100万円を,同年7月24日,30万円をそれぞれ支払った。
 以上によれば,本件賃貸借契約の月額賃料は60万円と合意されていたものというべきである。

 被告は,平成14年12月初旬,B弁護士に対し,保留となっていた賃料を月額50万円とすること,賃料の支払開始時期を平成15年3月からにしたい旨を伝えたところ,同弁護士から,同月からの支払に金融機関が応じる見込みである旨の回答があったことから,本件賃貸借契約の月額賃料は50万円であり,賃料支払時期は平成15年3月からである旨主張している。

 しかしながら,上記認定によれば,原告が融資を受けていた株式会社第四銀行等に対する返済額を月額50万円に減額する旨求めていた関係で,同銀行等に提示するために作成させた賃貸借契約書には,月額50万円の記載があるものの,本件賃貸借契約の賃料は,このような銀行等に対する返済額のほかに公租公課の負担等を考慮して,月額60万円とされ(ただし,うち50万円は原告名義の普通預金口座に,うち10万円はD名義の普通預金口座に振り込むこととなっていた。),その旨は,被告にも伝えられており,B弁護士は,被告に対し,再三,月額賃料60万円の支払の催促をしていたのである。そして,B弁護士は,被告から歯科医院の開業の条件として月額賃料を50万円とすることを求められたものの,同弁護士が,それを承諾したこともない。したがって,本件賃貸借契約の月額賃料は,契約締結当初から月額60万円と合意されており,その後もそれを減額するような合意がされたことはないものというべきである。

 また,B弁護士の上記回答は,被告の開業が平成15年3月になることから,金融機関としても,原告の金融機関に対する返済が同月からになることを承諾したという趣旨であって,被告の賃料支払が同月からになることを了解したものではないことは,これまでの催促の経過に照らしても,明らかというべきである。そして,本件賃貸借契約においては,被告の申入れによって契約の始期を平成14年1月1日からとすることができ,また,被告の申入れによって賃料支払の時期を,同年3月末日からとすることができる旨が合意されていたが,B弁護士が被告に宛てた書簡(甲5)によれば,契約の始期を,同年1月1日とした上,同日以降の賃料を同年3月末日から支払うことを求めているから,賃料は同年1月1日から発生し,その支払時期は同年3月末日となるものと認められる。

 そして,被告は,平成14年7月29日から平成17年1月21日までの間に,賃料として合計786万円を支払い,原告はそれを直前に支払期日が到来する月の分の賃料に充当したのであるから,被告の未払賃料総額は,1434万円となる。

2 本件賃貸借契約における違約金の定めの効力
 本件賃貸借契約には,賃借人の債務不履行による解除等の場合,賃貸借契約の残存期間の賃料合計額に相当する金員を違約金として支払う旨の特約がある。
 被告は,このような特約は公序良俗に反し無効であると主張する。確かに,本件賃貸借契約は,歯科医院の経営のためにされたものであって,その賃料等から原告の金融機関に対する借入れの返済がされることが予定されていたものであるが,敷金や保証金の約定がないとはいえ,債務不履行による解除の場合における違約金の額は,賃貸人が新たな賃借人を確保するために必要な合理的な期間に相当する賃料相当額を超える違約金を定めるものであり,合理的な期間の賃料相当額を超える限度では,著しく賃借人に不利益を与えるものとして,無効と解すべきである。そして,新たな賃借人を確保するための合理的な期間は,それが診療所という限定された目的であることを考慮しても,せいぜい6か月程度と見るのが相当である。
 したがって,被告は,原告に対し,違約金として6か月分の賃料相当額である360万円支払義務がある。

3 原告の不法行為の成否
 証拠(甲20,21,25,26,76から78,証人C,原告本人)によれば,被告が経営するE歯科クリニックの社会保険及び国民健康保険からの診療報酬等は,第四銀行松浜支店の「E歯科クリニック院長C」名義の普通預金口座に振り込まれ,被告は,同預金口座から賃料や従業員の給与等の経費の支払をしていたが,原告は,平成17年2月21日ころ,被告から給与の支払を受けていないと不満を述べていたC医師に対し,診療報酬等が振り込まれる銀行預金口座を変更することを勧め,C医師をして新たに株式会社みずほ銀行新潟支店に預金口座を開設させた上,その通帳及び印鑑を入手したこと,原告は,同月22日,本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし,同月24日,その意思表示は被告に到達したこと,原告は,同年3月1日から,C医師を雇用して,歯科医院を経営するようになったこと,その後,原告は,平成16年12月分,平成17年1月分及同年2月分の診療報酬等を取得したことなどが認められる。

 被告は,上記の原告の行為によって歯科医院の営業権を侵害されたと主張する。しかしながら,原告が本件診療所において,歯科医院を経営できなくなったのは,被告が賃料不払等によって,原告から本件賃貸借契約を解除されたからにほかならないが,債務不履行による解除は正当な権利の行使であるから,それによって歯科医院の経営ができなくなったとしても,原告の行為が何ら不法行為になるものではない。また,本件賃貸借契約が解除されて,被告が本件診療所において歯科医院を経営できなくなったことを踏まえて,原告が,被告に雇用され同診療所において歯科医師として稼働していたC医師を平成17年3月1日から雇用したことも同様に不法行為には当たらない。もっとも,原告は,被告が歯科医院を経営している間の診療報酬等を何らの権限なく取得しているが,このような行為が不法行為に当たることは否定できない。

 したがって,原告は,平成16年12月分,平成17年1月分及び同年2月分の診療報酬に相当する損害の賠償義務を負う。

 証拠(甲76から78)によれば,平成17年1月分の診療報酬は109万9604円(社会保険分が78万6517円,国民健康保険分31万3087円),同年2月分の診療報酬は103万5827円(社会保険分が73万2172円,国民健康保険分が30万3655円)であり,その後,57万2180円(社会保険分が41万1656円,国民健康保険分が16万0524円(甲79から87))が差し引かれたため,実際の診療報酬分は156万3251円となる。また,平成16年12月分の診療報酬額を示す資料はないが,従前の診療報酬額の平均額である205万6886円程度と推認することができる(乙8)。そうすると,損害総額は362万0137円となる。

 原告は,上記診療報酬から医師等の給与等被告が支払うべき債務が支払われた旨主張するが,原告が診療報酬を取得したことによって実際に診療報酬額相当の損害が発生していると見るべきであり,それが填補されたわけでもないから,原告の主張は採用できない。

4 相殺の抗弁
 被告は,上記362万0137円の損害賠償請求権を自働債権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。そこで,未払賃料総額は,1434万円から362万0137円を控除した1071万9863円となる(なお,相殺適状に達した平成17年3月の時点においては,未払賃料については,各月分について支払期日の翌日から支払済みまでの遅延損害金が発生しているが,原告は,従前,一部の賃料が支払われた際にも,遅延損害金や既に発生している未払賃料には充当せずに,直近の月の賃料として受領している上,本訴においても,解除の日の翌日からの遅延損害金を請求しているから,原告は,それ以前の遅延損害金はこれを黙示に免除したものと認めるのが相当である。)。

5 結論
 証拠(甲3,8,14,原告本人,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,レセプトコンピューターのリース料のうち115万4160円及び警備会社への補償金54万円を支払っておらず,また,「A歯科医院」という看板を保管していたところ,その返還を不能にして,150万円相当の損害を与えたものと認められる。
 そうすると,被告は,原告に対し,未払賃料総額1071万9863円及び違約金360万円,リース料115万4160円,補償金54万円及び損害賠償金150万円の合計1751万4023円の支払う義務がある。
 よって,原告の請求は,被告に対し,1751万4023円及びこれに対する平成17年2月25日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとして,主文のとおり判決する。
 (裁判官 阿部潤)
以上:6,018文字

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