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関連別事件の時効中断に関する平成10年12月17日最高裁判決全文紹介

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平成26年 5月16日:初稿
○財物の着服横領を理由とする着服金員相当額の損害賠償請求と不当利得返還請求との関係について、この2つの請求権は、基本的な請求原因事実を同じくする請求であり、経済的に同一の給付を目的とする関係にあるから、一方を訴訟物とする訴訟係属中に他方の請求権についての催告が継続していたものと解するのが相当とした平成10年12月17日最高裁判決(判タ992号299頁、判時1664号59頁)を紹介します。私が扱っている事件に、多少、関係する判例です。

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主  文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。 

理  由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由第一、第二について
一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
1 被上告人らと上告人X1は、いずれも昭和50年8月2日に死亡したAの相続人である。
 上告人X1は、昭和48年10月1日から昭和50年7月16日までの間に、Aが株式会社○○相互銀行○○支店の同人名義の貸金庫内に保管していた同人所有の銀行預金証書、株券等の全部をひそかに持ち出した上、順次預金の払戻しを受け、あるいは株券を売却して、払戻金や株券売却代金を着服した。

2 A及び被上告人Y1は、昭和50年7月16日、上告人X1が右貸金庫内のA所有の預金証書、株券等の全部を持ち出していることを知り、同上告人に対し、持ち出した預金証書等を返還するよう求めたが、これを拒まれた。
 同上告人は、A死亡後にされた遺産分割協議の席上でも、持ち出した財産の内容や処分の全容等を秘匿して明かさなかった。

3 被上告人らは、昭和58年6月6日、上告人X1を被告として本件訴訟を提起し、同上告人が着服した預金払戻金及び株券(弘前相互銀行の株券を除く。)の売却代金相当額につき、被上告人らの相続分に応じた損害賠償を請求するとともに、弘前相互銀行の株券につき、同上告人がいまだ売却せずに所持しているものと考えて、共有物の保管者である被上告人Y1への引渡し等を請求した。

4 被上告人らは、昭和63年4月14日の第一審口頭弁論期日において、前記弘前相互銀行の株券は既に上告人X1により売却されていることが判明したとして、引渡し等の請求を右株券の売却時における価額相当額についての被上告人らの相続分に応じた損害賠償請求に変更した。

5 また、被上告人らは、同年11月30日の第一審口頭弁論期日において、上告人X1による預金払戻金及び前記各株券売却代金の着服を理由とする不当利得返還請求を追加した上、平成元年2月15日の第一審口頭弁論期日において、従前の損害賠償請求の訴えを取り下げた。

6 その後の第一審口頭弁論期日において、上告人X1は、抗弁として、被上告人らが追加した不当利得返還請求については、被上告人らが貸金庫内からの預金証書等の持出事実を知った日である前記昭和50年7月16日から10年の時効期間の経過により、右請求を追加する以前に消滅時効が完成している旨主張し、時効を援用した。

二1 右事実関係の下においては、被上告人らが追加した不当利得返還請求は、上告人X1が預金払戻金及び株券売却代金を不当に着服したと主張する点において、昭和58年6月6日に提起した本件訴訟の訴訟物である不法行為に基づく損害賠償請求とその基本的な請求原因事実を同じくする請求であり、また、同上告人が不法に着服した預金払戻金及び株券売却代金につき被上告人らの相続分に相当する金額の返還を請求する点において、前記損害賠償請求と経済的に同一の給付を目的とする関係にあるということができるから、前記損害賠償を求める訴えの提起により、本件訴訟の係属中は、右同額の着服金員相当額についての不当利得返還を求める権利行使の意思が継続的に表示されているものというべきであり、右不当利得返還請求権につき催告が継続していたものと解するのが相当である。そして、被上告人らが第一審口頭弁論期日において、右不当利得返還請求を追加したことにより、右請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものというべきである。

 また、前判示のとおり、上告人X1が持ち出した前記弘前相互銀行の株券を既に売却していたことを秘匿していたため、被上告人らは、当初、同上告人が右株券を所持しているものとして右株券の引渡し等を求める訴えを提起したものであって、その時点で右株券が売却されていることを知っていれば、訴え提起時に他の株券と同様、相続分に応じた売却代金相当額の損害賠償請求権を行使する意思を有していたことは明らかというべきである。したがって、被上告人らのした右株券の引渡し等の請求には、被上告人らの当該株券売却代金相当額の損害賠償又は不当利得の返還を求める権利行為の意思が表れていたとみることができるから、本件訴訟の係属中、右不当利得返還請求についても催告が継続していたものと解するのが相当であり、その後の口頭弁論期日において被上告人らが不当利得返還請求を追加したことにより、右請求権の消滅時効につき中断の効力が確定的に生じたものと解すべきである。

2 原審は、被上告人Y1が本訴を提起したのが昭和58年6月6日であり、不当利得返還請求権の消滅時効は本訴の提起により、中断したというべきであるとして、上告人X1の消滅時効の抗弁を排斥したものであるが、右に判示したところによれば、原審の右判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しないで若しくは原審の認定しない事実に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官井嶋一友 裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎)


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