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定期預金帰属者に関する昭和58年10月7日大阪高裁判決理由全文紹介

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平成26年 3月 3日:初稿
○「定期預金帰属者に関する昭和57年3月30日最高裁判決全文紹介」に続いて、差戻後の昭和58年10月7日大阪高裁判決(金法1052号40頁)の理由部分全文を紹介します。解説は別コンテンツで行います。

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三 ところで、無記名定期預金契約において、当該預金の出捐者が、他の者に金銭を交付し無記名定期預金をすることを依頼し、この者が預入行為をした場合、預入行為者が右金銭を横領し自己の預金とする意思で無記名定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて無記名定期預金の預金者と解すべきであることは、最高裁判所の確定した判例(昭和29年(オ)第485号同32年12月19日第一小法廷判決・民集11巻13号2278頁、昭和31年(オ)第37号同35年3月8日第三小法廷判決・裁判集民事40号177頁、昭和41年(オ)第815号同48年3月27日第三小法廷判決・民集27巻二号376頁)であるところ、この理は、記名式定期預金においても異なるものではない(最高裁昭和50年(オ)第587号同53年5月1日第二小法廷判決・裁判集民事124号一頁参照)から、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記名式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて記名式定期預金の預金者と解するのが相当である。

 これを本件についてみるに、本件定期預金成立の経緯が前認定のとおりであり、また〈証拠〉によれば、Aは本件預金成立の日から4か月余を経たに過ぎない昭和43年4月5日逃亡し、B土地も翌日倒産し、同月19日銀行取引停止処分を受けたことが認められ、また〈証拠〉によれば、本件預金成立当時B土地の経営は既に苦しかつたことが認められるけれども、さればとて右各事実関係をもつてしては、Aが控訴人らの出捐した金員を横領して自己のものとする意思で本件預金をなし、右横領の発覚を遷延させる目的で、預金証書に、届け出た印鑑とは異る印鑑を添えて控訴人らに交付したとまで断定することはできない。

 けだし本件預金当時、B土地は外面的にはなお盛業の状態を保つていたことは前認定から明らかであり、Aとしては控訴人らを含む他人の預金を利用して有利に金融を受けられれば(〈証拠〉によれば、当時の被控訴人の貸出金利は、不動産担保のみの場合は日歩2銭7、8厘、正規の預金担保の場合は日歩1銭6、7厘であるところ、本件の場合は、不動産担保のほかに、乙第10号証による相殺予約が存在するので、日歩2銭1厘であつたことが認められる)、必要にして十分な満足が得られた筈だからである。届け出た印鑑とは異る印鑑を控訴人らに交付したのは、裏金利を支払つた以上控訴人らに中途解約を許すまいとするAの意図の現われと解することができる。また前認定のとおり、預金元本全額が控訴人らの出捐によるものではないが、その差額は、Aにおいて控訴人らのために立替払をしたと解するのが相当である。してみると本件各定期預金の預金者は控訴人らである。


四 そこで被控訴人の相殺の抗弁について審究する。
 前記二の(二)及び(五)の事実からすると、昭和42年11月25日被控訴人はAと、本件各定期預金の預金者をAと認めたうえ、右預金債権を受働債権とし、同月15日付1億円の追加融資約定に基き発生すべき貸金債権(債務者B土地)の連帯保証債権(債務者A)を自働債権として、相殺予約をなしたものと解される。

 ところで銀行が、定期預金につき真実の預金者と異る者を預金者と認定してこの者に対し右預金と相殺する予定のもとに貸付をし、その後右の相殺をする場合については、民法478条の類推適用があるものと解すべきところ(前掲昭和48年3月27日最高裁第三小法廷判決参照)、この場合において貸付を受ける者が定期預金債権の準占有者であるというためには、原則として、その者が預金証書及び当該預金につき銀行に届け出た印鑑を所持することを要するものと解すべきであり(前掲昭和53年5月1日最高裁第二小法廷判決参照)、右所持の時期は具体的な貸付の時であると解するのが相当であつて、このことは、預金の預入と同時に相殺予約がなされ、その後に貸付があつた場合であつても変りはないというべきである。

 これを本件についてみるに、被控訴人は、昭和43年2月29日前記手形取引約定(1億円分)及び相殺予約に基きB土地から○○株式会社振出にかかる金額1100万円の約束手形を割引くことによつて金員を貸付け自働債権を取得したと主張するのであるが(事実欄三の(四))、その際Aが本件各定期預金証書及び届出印鑑を所持していたこと並びに被控訴人においてこの事実を確めたことについては、立証がない。そして当時本件各定期預金債権の準占有者がAであることを認めさせるに足るその余の事実関係としては、前記二の事実をもつてしては十分とはいえず、他に立証は存しない。(因に本件預金預入の頃、Aは、被控訴人に対し、本件預金の原資は、造成地売却に際して生ずる圧縮された価格部分であると説明したというのであるが、B土地の造成地の売却状況につき被控訴人がどのような調査・認識をなしたかについては立証を欠くのに、B土地ないしAがたやすく数億円の自己資金を預金原資として用意することができると信じたとする原当審証人○○、原審証人△△(いずれも被控訴人の係員)の各証言部分は、にわかに信用し難く、仮に同人らがそのように信じたとしても、そのように信ずるにつき過失があつたというべきである。)
 してみると被控訴人の相殺予約については民法478条の保護は与えられないから、その相殺の抗弁は、その余の点につき審究するまでもなく失当である。

五 してみると被控訴人は、控訴人X1に対し、定期預金元本600万円及びこれに対する預入日の翌日であつて右控訴人の求める昭和42年11月26日から満期である昭和43年11月25日まで年5分5厘の割合による利息、同月26日から本件訴状送達による請求到達の日であることが記録上明らかな昭和44年1月30日まで年2分5厘の割合による利息(〈証拠〉を綜合すると、本件各定期預金については満期後年2分5厘の割合による利息を付する約定であることが認められ、右利率は請求の日にまで及ぶ趣旨であると解するのが相当である)、同月31日から支払の済むまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務がある。

 次に被控訴人は、控訴人X2に対し、定期預金元本100万円及びこれに対する預入日である昭和42年11月25日から満期である昭和43年11月25日まで年5分5厘の割合による利息、同月26日から本件訴状送達による請求到達の日であることが記録上明らかな昭和44年9月17日まで年2分5厘の割合による利息、同月18日から支払の済むまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務がある。

 次に被控訴人は、控訴人X3に対し、定期預金元本100万円及びこれに対する預入日である昭和42年11月25日から満期である昭和43年11月25日まで年5分5厘の割合による利息、同月26日から本件訴状送達による請求到達の日であることが記録上明らかな昭和46年1月16日まで年2分5厘の割合による利息、同月17日から支払の済むまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務がある。

 そうすると控訴人らの請求は右の限度において正当であり、その余は失当というべきところ、原判決の結論はこれと異るから原判決を変更することとし、民訴法89条、92条但書、96条、196条に則り主文のとおり判決する。
 (乾達彦 青木敏行 馬渕勉)
以上:3,219文字

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