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定期預金帰属者に関する昭和57年3月30日最高裁判決全文紹介

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平成26年 2月28日:初稿
○記名式定期預金契約において、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記名式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて記名式定期預金の預金者と解するのが相当であるとした昭和57年3月30日最高裁判決(金法992号38頁)全文を紹介します。

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主  文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理  由
 上告代理人○○○○の上告理由について
一 原審の認定した事実関係及びこれに基づく原審の判断は、おおむね、次のとおりである。
1 訴外Aは、司法書士を営むかたわら、宅地の造成、分譲を業とする訴外B土地株式会社(以下「B土地」という。)の代表取締役会長の地位にあつたが、昭和42年8月ころ、B土地の宅地造成資金3ないし4億円を調達するため、被上告人に対し、借受金と同額くらいの架空名義の定期預金をしてこれを他の不動産等とともに担保に提供することを条件にB土地に対する融資方を申し入れた。

2 被上告人は、Aの申入れについて、右架空名義の定期預金に対して質権を設定したうえ定期預金証書を被上告人において保管したい意向であつたところ、Aから税務対策上これには応じられない旨の態度を示されたため、右定期預金を担保として確保する方法として、Aとの間で後記のように相殺予約の合意をしたうえ、B土地に対して、差しあたつて2億7500万円の貸付を実行し、更に同年11月15日1億円の追加融資をすることを内諾した。

3 上告人X1は、訴外Cを通じて投資信託をしていたが、Cの勧めによりその換価金で定期預金をすることとなり、昭和42年11月22日ころCに対し同人が右投資信託の売却代金として持参した現金のうち95万円を交付して100万円の定期預金をすることを依頼し、その際、差額の5万円を利息名義で先取りし、上告人X2は、右同様Cの勧めにより自己所有の株式の換価金で定期預金をすることとなり、同月23日ころCに対し同人が右株式の売却代金として持参した現金のうち98万円を交付して100万円の定期預金をすることを依頼し、その際、差額の2万円を利息名義で先取りし、上告人X3は、Cを通じて投資信託をしていたが、そのころCに対しその換価金で600万円の定期預金をすることを依頼していた。

4 そこで、Cは、そのころ、上告人X1及び同X2から受領した前記金員をその依頼の趣旨を告げてAに交付し、また、上告人X3からも同様の依頼を受けている旨を告げたところ、Aは、同月25日、被上告人に対し、前記2の1億円の追加融資を受けるために必要な定期預金をする旨を連絡し、金額123万円のA振出の小切手一通及び金額500万円の線引小切手一通並びに現金177万円のほか、上告人らの氏名及び預金額を記載したメモと自己が予め用意しておいた上告人ら名義の有り合わせの印鑑を交付したうえ、上告人ら預金者の住所を適当に記載することを任せ、預金名義人をD(上告人X3の別名)とする金額600万円の、預金名義人をX1とする金額100万円の、預金名義人をX2とする金額100万円のいずれも満期日昭和43年11月25日、利率年5分5厘とする各定期預金(以下「本件各定期預金」という。)をした。

5 Aは、本件各定期預金をした際、被上告人に対し、その出捐者が上告人らであることを告げなかつただけでなく、被上告人の要望によつて、本件各定期預金がいずれも自己の架空名義の預金であつて預金者は自己であることを確認し、B土地の債務についてした自己の保証債務と本件各定期預金債権とが相殺されても異議のないこと、預金証書を自己が所持し被上告人の要求があれば直ちに提出することなどを約し、被上告人から上告人ら名義の前記印鑑及び本件各定期預金の預金証書を受領した。

6 Cは、昭和42年11月25日、Aから本件各定期預金の預金証書及び印鑑を受領したが、右印鑑は上告人らが期限前に本件各定期預金契約を解約して右各預金を引き出すことを防ぐために届出のものと別個の印鑑であつたところ、Cは、上告人X1及び同X2に対し、100万円の各定期預金証書一通と各人名義の前記印鑑一個を交付し、上告人X3に対しては、600万円から利息名義で先取りした25万円を控除した575万円を受け取るのと引換えに600万円の定期預金証書一通と同人名義の前記印鑑一個を交付し、右575万円をAに交付したが、右各定期預金証書は現に上告人らがそれぞれ所持しているものの、右印鑑の所在は明らかでない。

7 原審は、以上の事実を認定したうえ、上告人らは客観的に本件各定期預金債権者となるに足りるだけの状況になく、Aは上告人らの代理人又は使者として本件各定期預金をしたものではなく、被上告人は上告人らが出捐者であることを知らず、かつ、知ることができなかつたものであるというべきであるから、本件各定期預金の預金者はAであつて上告人らであるとは認められないと判断し、上告人らの本件各定期預金返還請求を棄却した第一審判決を維持している。

二 しかしながら、無記名定期預金契約において、当該預金の出捐者が、他の者に金銭を交付し無記名定期預金をすることを依頼し、この者が預入行為をした場合、預入行為者が右金銭を横領し自己の預金とする意思で無記名定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて無記名定期預金の預金者と解すべきであることは、当裁判所の確定した判例(昭和29年(オ)第485号同32年12月19日第一小法廷判決・民集11巻13号2278頁、昭和31年(オ)第37号同35年3月8日第三小法廷判決・裁判集民事40号177頁、昭和41年(オ)第815号同48年3月27日第三小法廷判決・民集27巻二号376頁)であるところ、この理は、記名式定期預金においても異なるものではない(最高裁昭和50年(オ)第587号同53年5月1日第二小法廷判決・裁判集民事124号一頁参照)から、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で記名式定期預金をしたなどの特段の事情の認められない限り、出捐者をもつて記名式定期預金の預金者と解するのが相当である。

 これを本件についてみるに、原審の認定した事実関係によれば、Aは、自己又はB土地のために使用する目的で本件各定期預金の資金を集め、被上告人に対し、本件各定期預金について預金者は自己であつて自己の架空名義のものとして預金手続をしたというものではあるが、本件各定期預金の預金証書を上告人らにそれぞれ交付していたというのであるから、右事情に照らすと、Aが上告人らの出捐した金銭につきその支配を排して横領し、自己の預金とする意思を有していたとまでみるのは十分でないにもかかわらず、他に前記特段の事情を認めるべき事実を認定することなく本件各定期預金の預金者はAであつて上告人らではないとした原判決には預金者の認定に関する法律の解釈適用を誤つた違法があるといわざるをえず、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであつて、論旨は理由がある。そして、本件において、前記特段の事情があるかどうか等について更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すこととする。
 (裁判長裁判官 環 昌一 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 寺田治郎)
以上:3,062文字

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