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預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決全文紹介2

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平成26年 2月18日:初稿
○「預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決全文紹介1」を続けます。
反対意見も全文紹介します。


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3 しかしながら、原審の上記判断はこれを是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 前記事実関係によれば、金融機関である上告人との間で普通預金契約を締結して本件預金口座を開設したのは、訴外会社である。また、本件預金口座の名義である「B海上保険(株)代理店A(株)C」が預金者として訴外会社ではなく被上告人を表示しているものとは認められないし、被上告人が訴外会社に上告人との間での普通預金契約締結の代理権を授与していた事情は、記録上全くうかがわれない。

 そして、本件預金口座の通帳及び届出印は、訴外会社が保管しており、本件預金口座への入金及び本件預金口座からの払戻し事務を行っていたのは、訴外会社のみであるから、本件預金口座の管理者は、名実ともに訴外会社であるというべきである。

 さらに、受任者が委任契約によって委任者から代理権を授与されている場合、受任者が受け取った物の所有権は当然に委任者に移転するが、金銭については、占有と所有とが結合しているため、金銭の所有権は常に金銭の受領者(占有者)である受任者に帰属し、受任者は同額の金銭を委任者に支払うべき義務を負うことになるにすぎない。そうすると、被上告人の代理人である訴外会社が保険契約者から収受した保険料の所有権はいったん訴外会社に帰属し、訴外会社は、同額の金銭を被上告人に送金する義務を負担することになるのであって、被上告人は、訴外会社が上告人から払戻しを受けた金銭の送金を受けることによって、初めて保険料に相当する金銭の所有権を取得するに至るというべきである。したがって、本件預金の原資は、訴外会社が所有していた金銭にほかならない。

 したがって、本件事実関係の下においては、本件預金債権は、被上告人にではなく、訴外会社に帰属するというべきである。訴外会社が本件預金債権を訴外会社の他の財産と明確に区分して管理していたり、あるいは、本件預金の目的や使途について訴外会社と被上告人との間の契約によって制限が設けられ、本件預金口座が被上告人に交付されるべき金銭を一時入金しておくための専用口座であるという事情があるからといって、これらが金融機関である上告人に対する関係で本件預金債権の帰属者の認定を左右する事情になるわけではない。

4 以上によれば、本件預金債権は被上告人に帰属するとは認められないというべきである。論旨は理由がある。これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上説示したところによれば、被上告人の請求は理由がないから、第一審判決を取り消した上、被上告人の請求を棄却することとする。

 民訴法260条2項の申立てについて
 上告人は、原審において民訴法260条2項の申立てをし、当審においてもその裁判を求めているが、その理由として主張する事実関係は、被上告人の争わないところである。そして、原判決を破棄し、第一審判決を取り消すべきことは前記説示のとおりであり、第一審判決に付された仮執行宣言は、その効力を失う。したがって、同仮執行宣言に基づいて給付した金員及びその執行費用の合計額である374万2894円並びにこれに対する給付の日の翌日である平成10年12月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害金の支払を求める上告人の申立ては、正当として認容すべきである。
 よって、裁判官福田博の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官福田博の反対意見は、次のとおりである。
 私は、本件預金債権が被上告人に帰属するとは認められないとする多数意見に賛同することはできない。その理由は、次のとおりである。
 訴外会社は、損害保険会社の委託を受けて、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う損害保険代理店(保険業法2条19項)であり、商法第1編第7章の代理商であるといえる。そして、訴外会社は、本件代理店契約に基づいて、被上告人を代理して保険契約の締結、保険料の収受等の業務を行い、かつ、善良な管理者の注意をもって、収受した保険料を訴外会社の財産と明確に区分して保管し、これを他に流用してはならない義務を負っているところ、このような内容を有する本件代理店契約には、訴外会社に対し、収受した保険料を保管することを目的とする預金口座を被上告人のために開設する権限、すなわち被上告人の代理人として金融機関との間で被上告人のために預金契約を締結するための権限を授与することも含まれていると解するのが相当である。

 本件預金口座の名義は、「富士火災海上保険(株)代理店矢野建設工業(株)C」となっており、預金者として訴外会社を表示しているものであることが一見明白であるとはいいきれないし、そこに「代理店」の文字が含まれていることからすると、むしろ、被上告人が代理人である訴外会社を使って本件預金口座を開設したことを表示していると解するのが相当である。訴外会社が本件預金口座の通帳及び届出印を保管し、本件預金口座の金銭の出し入れを行っていたことも、代理人として、本人である被上告人のためにしていたことであると評価すべきである。

 訴外会社が保険契約者から収受した保険料の所有権がいったん訴外会社に帰属するのは多数意見のいうとおりであるが、上記のように本件預金口座は被上告人のものであるから、保険料を本件預金口座に入金することによって訴外会社の被上告人に対する保険料引渡し義務は完了することになる。後日被上告人から訴外会社に送付される保険料請求書の記載に従って訴外会社が本件預金口座から資金を引き出し、訴外会社の手数料を控除した残額を被上告人に送金するという資金の移動は、訴外会社が被上告人の代理人として、被上告人の預金口座間で資金移動事務を行っているものであるにすぎない。

 原審は、預金の原資の出捐者が預金債権の帰属主体になるという理論を前提に、被上告人が本件預金の原資の出捐者であるから本件預金債権の帰属主体であるとしている。私は、このような判断過程を正当なものであると考えるものではないが、上記のように、本件預金口座は被上告人が訴外会社を代理人として開設したものであると考えられるから、被上告人が預金者としてする本件預金債権の支払請求を認容すべきものとした原判決は、結論において是認することができる。
 よって、本件上告は、棄却すべきである。

 (裁判長裁判官 亀山継夫 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 梶谷玄 裁判官 滝井繁男) 
以上:2,808文字

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