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預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決全文紹介1

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平成26年 2月18日:初稿
○現在取扱中の事件で、名義人Bの預金口座にA所有金員を預金した場合のB名義預金の帰属者はA、Bいずれか問題になる事案があります。一見、名義人Bに決まっているではないかと思われますが、Aだという考えもあるようです。

○この問題について、損害保険会社Aの損害保険代理店であるBが、保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で金融機関に「A代理店B」名義の普通預金口座を開設したが、AがBに金融機関との間での普通預金契約締結の代理権を授与しておらず、同預金口座の通帳及び届出印をBが保管し、Bのみが同預金口座への入金及び同預金口座からの払戻し事務を行っていたという判示の事実関係の下においては、同預金口座の預金債権は、Aにではなく、Bに帰属すると判断した平成15年2月21日最高裁判決(判タ1117号211頁、判時1816号47頁)全文を2回に分けて紹介します。


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主  文
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。
被上告人の請求を棄却する。
被上告人は、上告人に対し、374万2894円及びこれに対する平成10年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟の総費用及び前項の裁判に関する費用は被上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は、被上告人が金融機関である上告人に対し、普通預金の払戻しを請求する訴訟であり、請求に係る普通預金債権が被上告人に帰属するかどうかが争われている。原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 上告人は信用組合、被上告人は損害保険会社である。

(2) A株式会社(以下「訴外会社」という。)は、昭和52年12月9日、被上告人との間で損害保険代理店委託契約(以下「本件代理店契約」という。)を締結し、被上告人の損害保険代理店となった。
 本件代理店契約には、次のような定めがある。
ア 訴外会社は、被上告人を代理して、保険契約の締結、保険料の収受、保険料領収証の発行等の業務を行う。
イ 訴外会社は、収受した保険料を、被上告人に納付するまで、自己の財産と明確に区分して保管し、これを他に流用してはならない。
ウ 訴外会社は、被上告人のために収受した保険料から代理店手数料を控除した残額を、遅滞なく被上告人に納付しなければならない。ただし、訴外会社は、あらかじめ被上告人の承認を得て、被上告人が毎月一定の日をもって作成する代理店勘定請求書に従い、上記保険料から代理店手数料を控除した残額を翌月末日までに被上告人に納付する方法により保険料の精算をすることができる。

(3) 訴外会社は、昭和61年6月19日、上告人余市支店に「B海上保険(株)代理店A(株)C」名義の普通預金口座(以下「本件預金口座」という。)を開設した。本件預金口座は、訴外会社が被上告人のために保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で開設されたものである。本件預金口座の通帳及び届出印は、訴外会社が保管していた。

(4) 訴外会社の損害保険代理店業務は、次のとおりの手順で行われた。
ア 訴外会社は、被上告人を代理して、保険契約者と保険契約を締結し、保険契約者から保険料を収受し、被上告人名義の領収証を作成し、これを保険契約者に交付する。訴外会社は、保険料として収受した金銭を本件預金口座に入金するまで、これを他の金銭と混同しないよう、専用の金庫ないし集金袋で保管する。

イ 訴外会社は、保険料として収受した金銭をすべて本件預金口座に入金する。訴外会社が本件預金口座に保険料以外の金銭を入金したことはない。

ウ 被上告人は、毎月15日ころ、前月分の保険料請求書を訴外会社に送付する。同請求書には訴外会社の前月分の代理店手数料の額が記載されており、訴外会社は、この時点で、前月分の代理店手数料の正確な額を知る。

エ 訴外会社は、毎月20日ころ、本件預金口座から前月分の保険料相当額の払戻しを受け、そこから上記請求書に記載された代理店手数料額を控除した額の金銭を被上告人に送金する。

オ 本件預金口座に生じた預金利息は、訴外会社が取得する。

(5) 訴外会社が被上告人のために収受した保険料に関する上記取扱いは、平成7年法律第105号により廃止された保険募集の取締に関する法律、平成8年大蔵省令第5号により廃止された同法施行規則、「損害保険会社の業務運営について」と題する大蔵省通達(平成8年4月1日蔵銀第525号)及び社団法人日本損害保険協会の損害保険募集関係規定に沿うものであった。

(6) 平成9年5月6日当時、本件預金口座には、訴外会社が被上告人のために収受した保険料及びこれに対する預金利息の合計342万2903円が預け入れられていた(以下、この預金を「本件預金」、本件預金の返還請求権を「本件預金債権」という。)。訴外会社は、同日、2度目の不渡り手形を出すことが確実となったため、被上告人のD支社長に本件預金口座の通帳及び届出印を交付した。

(7) 被上告人は、同月7日ころ、上告人に対し、本件預金債権は被上告人に帰属するとして、本件預金全額の払戻しを請求した。

2 原審は、次のとおり判断し、本件預金債権は被上告人に帰属するとして、被上告人の請求を全部認容すべきものとした。
 金融機関にとっては預金者が何人であっても格別の不利益はないから、預金の原資を出捐した者の利益を保護する観点から、その出捐者が預金者として預金債権の帰属主体になると解するのが相当である。

 そこで本件預金の出捐者はだれであるかについて検討すると、
〈1〉 訴外会社は、被上告人を代理して保険契約者から収受した保険料を専用の金庫ないし集金袋で保管し、他の金銭と混同していなかったこと、
〈2〉 本件預金の原資は、上記保険料及びその預金利息であること、〈3〉 訴外会社は、上記保険料自体の帰属については、独自の実質的又は経済的な利益を有していないこと、
〈4〉 被上告人は、訴外会社が保険料を収受することにより保険金支払の危険を負担することになるので、保険料の帰属について実質的又は経済的な利益を有していること
を考慮すると、訴外会社が収受した保険料の所有権は占有者ではない被上告人に帰属すると認めるべき特段の事情が存するものと解する余地が十分にある。仮にそうでないとしても、上記諸点を考慮すると、本件預金の出捐者は、被上告人と認めるのが相当である。

 また、訴外会社は、本件預金口座の通帳及び届出印の所持者として、本件預金口座を管理し得る立場にあったが、本件預金口座の目的やその払戻しについて被上告人との間の契約による制約を受けていたから、被上告人から本件預金口座の管理をゆだねられていたにすぎず、本件預金口座を実質的に管理し得る地位を有していたのは被上告人にほかならない。
 上記のように、被上告人が本件預金の原資の出捐者であり、かつ、本件預金口座を実質的に管理していた者であることにかんがみると、本件預金債権は被上告人に帰属するというべきである。


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