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借地権付建物のみの競落は危険1

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平成22年 9月 2日(木):初稿
○借地権付建物のみが抵当権の対象となり、敷地は抵当権の対象になっていない場合、借地権付建物のみが競売になっても、通常は、借地権即ち敷地の利用権が確固たるものでないため、なかなか買受人が現れません。お客様に借地権付建物のみの競売事件について競落してもよいかどうか相談された場合、リスクが大きいので止めた方がよいでしょうとアドバイスしていました。

○この問題についての重要判例は、平成8年1月26日最高裁判決(判タ900号289頁、判時1556号76頁)で、建物に対する強制競売において、借地権の存在を前提として売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず、代金納付の時点において借地権が存在しなかった場合、買受人は、そのために建物買受けの目的を達することができず、かつ、債務者が無資力であるときは、民法568条1、2項及び566条1,2項の類推適用により、強制競売による建物の売買契約を解除した上、売却代金の配当を受けた債権者に対し、その返還を請求することができると言うものです。

民法関係条文は次のものです。
第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。

第568条(強制競売における担保責任)
 強制競売における買受人は、第561条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。


○平成8年1月26日最高裁判決の理由詳細は以下の通りです。
 建物のために借地権が存在する場合には、建物の買受人はその借地権を建物に従たる権利として当然に取得する関係に立つため、建物に対する強制競売の手続においては、執行官は、債務者の敷地に対する占有の権原の有無、権原の内容の細目等を調査してその結果を現況調査報告書に記載し、評価人は、建物価額の評価に際し、建物自体の価額のほか借地権の価額をも加えた評価額を算出してその過程を評価書に記載し、執行裁判所は、評価人の評価に基づいて最低売却価額を定め、物件明細書を作成した上、現況調査報告書及び評価書の写しを物件明細書の写しと共に執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供しなければならないものとされている。

 したがって、現況調査報告書に建物のために借地権が存在する旨が記載され、借地権の存在を考慮して建物の評価及び最低売却価額の決定がされ、物件明細書にも借地権の存在が明記されるなど、強制競売の手続における右各関係書類の記載によって、建物のために借地権が存在することを前提として売却が実施されたことが明らかである場合には、建物の買受人が借地権を当然に取得することが予定されているものというべきである。

 そうすると、実際には買受人が代金を納付した時点において借地権が存在せず、買受人が借地権を取得することができないため、建物買受けの目的を達することができず、かつ、債務者が無資力であるときは、買受人は、民法568条1項、2項及び566条1項、2項の類推適用により、強制競売による建物の売買契約を解除した上、売却代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の返還を請求することができるものと解するのが右三者間の公平にかなうからである。


○この理由の骨子は、競売事件では執行官作成現況調査報告書、評価人作成評価書、裁判所作成物件明細書のいわゆる3点セットを閲覧でき、この3点セットの記載から明らかに借地権がついていることが前提となっていたのであれば、代金納付時に実際は借地権が消滅し、建物を購入しても敷地が利用できず建物も利用できなくなっていた場合、売買契約(※競売も売買に変わりない)を解除し、売買代金の返還請求が出来ると言うものです。至極当然の判決ですが、問題は「明らかに借地権がついていることが前提」かどうかの判断で、これを誤ると建物が利用できず、かつ、支払済み競売代金も回収できないとの、正に踏んだり蹴ったりの酷い状況になることがあり注意が必要です。
 
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