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栄養失調凍死と瑕疵担保責任判例紹介3

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平成20年10月12日:初稿
「栄養失調凍死・幽霊の噂と瑕疵担保責任判例紹介2」の話を続けます。
 原告は、栄養失調による凍死を「餓死」として,幽霊の噂を含めて①瑕疵を原因とする解除、②詐欺による取消、③重大な債務不履行の3つの原因を挙げ、いずれにしてもこの売買契約は無効であり、被告は代金返還と損害賠償義務があることを主張しましたが,被告はこれを激しく争いました。

○被告の主張骨子は以下の通りです。
①元所有者の死因は、栄養失調気味で体力低下による凍死であり普通の病死に過ぎない。
②周辺に幽霊の噂を信じているものなど一人もおらず被告も全く知らなかった。
③元所有者の死から6年3ヶ月も経た売買でありその間別の取引もあり改修工事もなされている。
④死因についての告知義務はなく瑕疵・欺罔行為・重大な債務不履行いずれも存在しない。
従って売買は有効であり被告は売買代金返還義務も損害賠償義務も存在しない。

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仙台地方裁判所平成18年8月31日判決言渡 その3

(2) 被告らの主張
ア 瑕疵を原因とする契約解除の主張について
(ア)本件土地建物の元所有者である花子の死亡原因は、栄養失調気味で体力が衰弱した状態に低温が重なったための凍死であって、餓死ではない。花子の死因は病死の範疇に属する者で、通常一般の家庭内での病死と取り立てて区別して嫌悪すべき事情はない。現に、本件建物に隣接して居住している隣人はすべて花子の死について違和感を感じておらず、普通の死として受けとめている。幽霊が出るなどという妄想を抱いている隣人は一人もいない。

 本来、居住用の建物は、人間の日常起居生活の場であるから、その中で居住している人間の死亡は当然あり得る事態である。人の死一般を忌み嫌う感情があるとしても、その感情は法的保護には値しない。また、本件土地建物は、本件売買契約の当事者である原告自身が利用するものではなく、通所介護施設の利用者が一時的に訪れて利用するものに過ぎず、本件土地建物への関わりは、住居として自ら日常的に起居する場合よりも希薄である。したがって、花子の死因は、本件土地建物を通所介護施設として利用する者にとって、当該施設を利用し得ないような心理的欠陥に該当するとは言えない。

(イ)本件売買契約は、花子の死亡から約6年3か月も経過した後に締結されたものであること、花子の死亡後、複数の取引が介在し、本件土地建物の改修工事によりその外観・内装が相当異なるようになったこと、本件土地建物の周辺は住宅密集地であり、周辺住民が花子の死因を容易に忘れないというような閉鎖的な地理環境にはないことなどに照らすと、花子の死因が瑕疵に該当するとは言えない。

(ウ)本件土地建物における業績が不振である原因は、近くに同種の施設があって競争が厳しいこと、原告の営業努力が足りないからであって、本件建物における花子の死因が、本件土地建物を介護施設として利用するにあたって地域住民の心理的障害になっているためではないから、花子の死因は瑕疵には該当しない。仮に、瑕疵に該当するとしても、原告がサービス内容を工夫し、広報・営業活動を積極的に行い、長期間開所するなどすれば、多くの利用者を見込めたはずであるから、上記瑕疵のために本件土地建物を介護施設として利用するという本件売買家約の目的が達成できなかったとは言えず、本件解除は無効である。

(エ)瑕疵となりうる心理的欠陥かどうかについては、あくまでも売主として比較的調査が容易な直接的死因だけを考慮し、それが通常一般人における感覚を基準とした嫌悪すべき歴史的背景等に該当するかどうかを判断すべきであり、死亡に至る原因、経緯等を考慮して判断されるべきではない。なぜなら、死亡に至る原因、経緯等は、当該人の生活環境、経済状況、精神状況、人間関係等優れて個人的かつ秘匿性のある領域に関わる事実であり、その性質上外部からの調査が極めて困難なものであるから、売買契約締結後にたまたまそのような事実が判明したからといって、瑕疵担保責任を負わされるのでは売主にとって極めて過酷であるからである。

 この点は、債務履行の際に告知すべき事項かどうかの考慮自由についても同様であり、それは、売主ないし宅地建物取引業者が、死亡に至る原因、経緯等を認識している場合にも該当する。なぜなら、死亡に至る原因、経緯等は、直接的な死因とは異なり、定型性がなく、かつ際限のない事実であり、認識している事実のうち、いかなる事実が告知されるべき事項なのかという判断基準の定立が極めて困難な事実であるからである。

 以上の観点に照らすと、花子が死亡するに至った原因や経緯は、瑕疵に当たるかどうか、また、債務不履行に当たるかどうかを判断するにあたって考慮されるべきではない。

イ 詐欺による取消の主張について
(ア)本件土地建物の元所有者が本件建物内で餓死したという事実及び本件土地建物に幽霊が出るなどの噂がある事実は、いずれも瑕疵には該当せず、意思表示における重要な要素とは言えず、これを買主に告知すべき義務はない。

(イ)仮に、幽霊が出るなどの噂があったとしても、被告会社はそのような噂の存在を知らなかったし、被告会社は、8・17売買にあたり、売主である相続財産管理人の山田弁護士から、花子の死因は重要事項説明書に記載しなくてもよいとの確認を得ていたから、被告会社には原告を欺罔する意思はなかった。

(ウ)被告会社は、本件土地建物の原告への売却に関し、本件土地建物に何か問題となるような事実はないかと己野から問われ、元所有者が本件建物で病死したと聞いているが、自殺や殺人などがあった事実はないと説明している。花子の死因は、自殺などとは一線を画する病死の範疇に属するから、被告会社がこのような説明をしても、それが欺罔行為に該当するような虚偽の事実を積極的に告げたことにはならない。

ウ 重大な債務不履行による損害賠償請求について
(ア)被告会社には、本件土地建物の元所有者が本件建物内で餓死したという事実及び本件土地建物に幽霊が出るなどの噂がある事実を買主に告知すべき義務はなく、故意・過失も存在しない。

(イ)本件土地建物の十分な説明義務は、本件売買契約に付随するものであるから、本件売買契約の当事者ではない被告乙野がこれを負ういわれはなく、被告乙野に対する債務不履行に基づく損害賠償請求は失当である。

エ 被告乙野の責任について
(ア)被告乙野が、花子の死因について原告に積極的に虚偽の事実を告げたことはない。また、本件土地建物に幽霊がでるなどの噂がある事実はないから、この点についても虚偽の事実を告げたことはない。

(イ)宅地建物取引業者が売買契約の内容について重要事項説明義務を負うのは、売買契約の重要な内容についての宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)35条列挙の事項であって、元所有者の死因は説明義務の対象となってはいない。

(ウ)花子の死因は瑕疵には該当せず、取引上の重要な事実にも該当しないから、被告乙野が己野に説明した内容は、宅建業法47条にいう故意に事実を告げず、また不実の事実を告げたことにはならない。


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