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死後認知者価額支払請求基礎財産に相続債務は含まずとした最高裁判決紹介

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令和 1年 8月29日(木):初稿
○相続開始後すなわち被相続人の死後に認知されて新たに相続人になった子は、以下の民法第910条の規定により、遺産分割がなされていたとしても、他の相続人に価額による遺産の支払請求ができます。相続人の1人を除いた遺産分割は原則として無効ですが、死後認知で相続人になった者を除いた遺産分割については全面無効とはせず、死後認知者の法定相続分の割合による価額支払請求を認めた規定です。

民法第910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。


○その価額支払請求の際、その請求の基礎財産に相続債務を加えるかどうか争いがありますが、令和元年8月27日最高裁判決は、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは,民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は,当該分割の対象とされた積極財産の価額であると解するのが相当としました。

○その理由として判決は「遺産の分割は,遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって,消極財産である相続債務は,認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され,遺産の分割の対象とならない」からとしていますので、死後認知者に承継された債務支払分については、別途清算することになります。

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遺産分割に借金含めず 死後認知の婚外子、最高裁初判断
8/27(火) 19:14配信 産経新聞


父の死後に血縁関係が判明し、婚外子として認知(死後認知)された子が、すでに父の遺産を分割していたほかの相続人に、金銭による遺産の支払いを求めた場合、遺産の取り分の計算に借金も含めるべきなのか。婚外子が請求できる金額が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は27日、「金額の算定はプラスの財産のみで計算すべきだ」との初判断を示した。5裁判官全員一致の結論。

民法は死後認知などで遺産分割終了後に相続人になった人物は、相続分に応じた金銭による支払い請求権を有すると規定している。

男性が平成20年に死亡した後、妻と息子は遺産を分割。24年に男性の子と認知された東京都の20代女性が、息子に約3千万円の支払いを求め提訴していた。

息子側は、妻が男性の借金弁済を前提に預貯金の大部分を相続したため、現金はほとんど受け取っていないと主張。財産から借金を差し引くよう求めていた。

第3小法廷は「分割対象とされた遺産の金額を基礎として算定するのが相当」と指摘。「マイナスの財産である相続債務は、遺産分割の対象とはならない」と判示した。


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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
上告代理人○○○○,同○○○○の上告受理申立て理由について
1 亡Aの妻であるB及びAの子である上告人がAの遺産について分割の協議を成立させた後,被上告人がAの子であることを認知する旨の判決が確定した。本件は,被上告人が,上告人に対し,民法910条に基づく価額の支払を求める事案である。

2 所論は,上記協議に際して相続債務の負担に関する合意がされ,相続債務の一部がBによって弁済されている本件においては,民法910条に基づき被上告人に対して支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は,Aの遺産のうち積極財産の価額から消極財産の価額を控除したものとすべきであるのに,これを上記積極財産の価額とした原審の判断には,同条の解釈適用の誤りがある旨をいうものである。

3 民法910条の規定は,相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには,当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって,他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものである(最高裁平成26年(受)第1312号,第1313号同28年2月26日第二小法廷判決・民集70巻2号195頁)。そうすると,同条に基づき支払われるべき価額は,当該分割等の対象とされた遺産の価額を基礎として算定するのが,当事者間の衡平の観点から相当である。そして,遺産の分割は,遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって,消極財産である相続債務は,認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され,遺産の分割の対象とならないものである。

以上によれば,相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは,民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は,当該分割の対象とされた積極財産の価額であると解するのが相当である。このことは,相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や,他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても,異なるものではない。

4 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 山崎敏充 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一 裁判官 宮崎裕子 裁判官 宇賀克也)
以上:2,307文字

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