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死因贈与土地は民法第922条相続財産に該当するとした最高裁判例紹介

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令和 1年 7月21日(日):初稿
○「死因贈与土地は民法第922条相続財産に該当するとした高裁判例紹介」の続きで、その上告審平成10年2月13日最高裁判決(判タ970号114頁、判時1635号49頁)全文を紹介します。

○事案は父Dからその所有地の2分1ずつ死因贈与を受け仮登記手続をしていた子が、父Dには負債があったため限定承認をして、死因贈与を受けた土地について父D死後、本登記手続をしていたところ、父Dに公正証書での債権を有する者が、子2名に承継執行文の付与を受け、死因贈与本登記をした土地に強制執行したことについて、子らが第三者異議の訴えを提起していたものです。

○第一審平成7年12月25日東京地裁判決(判時1572号58頁)は、子らの請求を認めて父Dの債権者による死因贈与土地への強制執行は許さないとしたのですが、控訴審平成8年7月9日東京高裁判決(判時1572号56頁、判タ915号259頁)は、これを覆し強制執行は適法としました。

○本件は限定承認で、限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をすることですが、相続放棄の場合も同様の問題が生じます。多額の債務を抱えた父の相続を放棄し、死因贈与或いは遺贈によって財産のみを取得する場合です。被相続人の債権者にしてみれば、負債は免れて、財産だけを取得することは、余りに虫が良すぎて、到底認められません。

○本件事案で、子らが父Dの債務を免れて土地を取得することは、「信義則上相当でない」、「限定承認者と相続債権者との間の公平を欠く結果となる」との本件最高裁判決の考え方によれば、相続放棄においても、このような虫の良い財産取得行為は、死因贈与であれば詐害行為の対象となり、遺贈であれば権利の濫用等の理屈で許されないと判断される可能性が高いと思われます。

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主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。 

理   由
 上告代理人○○○○、同○○○○の上告理由について
 不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者らによる差押登記よりも先にされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することができないというべきである。

 けだし、被相続人の財産は本来は限定承認者によって相続債権者に対する弁済に充てられるべきものであることを考慮すると、限定承認者が、相続債権者の存在を前提として自ら限定承認をしながら、贈与者の相続人としての登記義務者の地位と受贈者としての登記権利者の地位を兼ねる者として自らに対する所有権移転登記手続をすることは信義則上相当でないものというべきであり、また、もし仮に、限定承認者が相続債権者による差押登記に先立って所有権移転登記手続をすることにより死因贈与の目的不動産の所有権取得を相続債権者に対抗することができるものとすれば、限定承認者は、右不動産以外の被相続人の財産の限度においてのみその債務を弁済すれば免責されるばかりか、右不動産の所有権をも取得するという利益を受け、他方、相続債権者はこれに伴い弁済を受けることのできる額が減少するという不利益を受けることとなり、限定承認者と相続債権者との間の公平を欠く結果となるからである。そして、この理は、右所有権移転登記が仮登記に基づく本登記であるかどうかにかかわらず、当てはまるものというべきである。


 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、
(一) 本件土地の所有者であった服部Dは、昭和62年12月21日、本件土地を上告人らに死因贈与し(上告人らの持分各2分の1)、上告人らは、同月23日、本件土地につき右死因贈与を登記原因とする始期付所有権移転仮登記を経由した、
(二) Dは平成5年5月9日死亡し、その相続人は上告人ら及びFであったが、Fについては同年7月9日に相続放棄の申述が受理され、上告人らは同年8月3日に限定承認の申述受理の申立てをし、右申述は同月26日に受理された、
(三) 上告人らは、平成5年8月4日、本件土地につき右(一)の仮登記に基づく所有権移転登記を経由した、
(四) 被上告人は、Dに対して有する債権についての執行証書の正本にDの相続財産の限度内においてその一般承継人である上告人らに対し強制執行することができる旨の承継執行文の付与を受け、これを債務名義として本件土地につき強制競売の申立てをし、東京地方裁判所は平成6年11月29日強制競売開始決定をし、本件土地に差押登記がされた
というのであるから、限定承認者である上告人らは相続債権者である被上告人に対して本件土地の所有権取得を対抗することができないというべきである。

そうすると、本件土地が限定承認における相続債権者に対する責任財産には当たらないことを理由とする上告人らの本件第三者異議の訴えは棄却すべきものであり、これと同旨の原判決の結論は正当である。
論旨は、原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうものであって、採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官大西勝也 裁判官根岸重治 裁判官河合伸一 裁判官福田博)
以上:2,218文字

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