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相続不動産取得時効成立について判断の分かれた地裁・高裁判決説明

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平成30年12月 8日(土):初稿
○「相続不動産の占有につき取得時効を認めた地裁判例紹介1」で、共同相続人の中の1人が、不動産の時効取得に必要な自主占有となるための「新たな権限」と評価されるための要件として昭和47年9月8日最高裁判決は
①単独に相続したと信じて疑わず
②相続開始とともに相続財産を現実に占有
③公租公課も自己の名でその負担において納付
④他の相続人がなんらの関心をもたず、異議も述べなかった等の事情
とされたことを紹介しました。

○地裁と高裁で判断の分かれた平成29年4月26日京都地裁判決(判時2381号83頁参考収録)の事案は、昭和37年××月××日死亡した被相続人Aの遺産でA名義一部所有地(係争地)について、長男Xが、昭和48年7月に係争地上に建物を建築着工し同年12月完成し、以降第三者に賃貸し賃料全額を取得し、昭和59年以降は係争地の固定資産税も支払い続けていました。

○一審で長男Xは、主位的主張として昭和37年5月22日遺産分割合意で本件土地を相続承継し自主占有を開始したので同日時効取得を原因とする、予備的主張として係争地上に建物を建築した昭和48年12月又は昭和54年8月時効取得を原因とする所有権移転登記をすることを他の相続人に求めました。

○他の相続人は、長男Xの主張をいずれも否認し、一審判決は昭和37年5月の遺産分割合意は認められず自主占有開始は認められないとして主位的請求は棄却し、遅くても昭和54年8月には本件建物が完成し、以降本件建物収益を独占取得し、係争地固定資産税も長年継続して支払い、係争地を長男Xが独占使用することについて他の相続人から異議が出された状況が見当たらず、係争地所有名義をAのままにしていたことをもって、直ちにXに自主占有事情があるとはいえないとは、断定しがたいとの、微妙な表現で、Xの自主占有による時効取得を認めました。

○これに対し控訴審判決は、A死亡直後からXが係争地を単独耕作して占有していたことは認めながら、Xの共有持分権10分の1を超える分について、自主占有は認められないとして、一審同様昭和37年5月の遺産分割合意も認められず、ここでも自主占有は認められないとしました。その上で、昭和48年12月の係争地上建物建築による占有について、他の相続人が異議を述べなかったとしても、他の相続人が遺産分割を求めたり、本件建物賃料精算を求めたりしていないが、これをもって他の相続人の係争地相続分の権利行使が妨げられる事情には当たらず、特に他の相続人の1人とXとの間に種々の確執があったことから、他の相続人がXの独占的使用状態を容認していたとみることはできないとしました。

○さらに控訴審判決は、Xが他の相続人に、係争地について所有の意思があることの表示をした事実も認められず、建物建築完成の昭和48年12月に自主占有を開始したとは認められず、昭和54年8月の増築も占有状況に変化がなく自主占有なるとは認められないので、時効取得は認められないとしました。

○自主占有となるための「新たな権限」について一審判決は比較的緩やかであったものが、控訴審判決はより厳しい要件を要求したことで、認定の違いになりました。

以上:1,304文字

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