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遺産預金法定相続分払戻請求拒否を不法行為とした判例紹介2

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平成28年11月19日(土):初稿
○「遺産預金法定相続分払戻請求拒否を不法行為とした判例紹介1」の続きで、裁判所の判断部分を2回に分けて紹介します。
10年以上前は、殆どの銀行が、
N弁護士は,「他の銀行は応じていただいているのに,どうしてもりそな銀行では応じられないということですか。」と尋ねたところ,同担当者は,「他行は存じませんが,当行では本部の決定ですので,私ども支店ではどうすることもできません。」と返答した。N弁護士が重ねて「裁判するよりないということでしょうか。」と尋ねたところ,同担当者は,「私どもとしては何とも申し上げようがありません。」と返答した(甲16)。
という対応で、私も法定相続分の支払を求めて訴えを提起したことが何回かありました。

○しかし、ここ数年は、昭和29年4月8日最高裁判決(民集8巻4号819頁)の遺産預貯金当然分割説の縛りが、金融機関にも浸透し、訴えを出さなくても任意に支払に応じる金融機関も増えてきました。ところが、「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除-62年ぶり判例変更か?」の噂が広まり、法定相続分の払戻を渋る金融機関も出てきたとのことです。

○私の事務所でも、平成28年11月18日、ある相続事件で苦労して相当多数の代襲相続人から相続分譲渡証明書を集め、相続人一本化して10件の金融機関に対し、一斉に払戻請求をし、相続分譲渡審査に時間がかかるなら、4分の3の法定相続分だけでも直ぐに支払えとの催告書を出した事案があります。直ぐに支払ってこなかったらダメ元で慰謝料・年6%の遅延損害金・弁護士費用請求の訴えを提起すべく手ぐすね引いて待っています(^^;)。

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第3 当裁判所の判断
1 判断の要旨

 当裁判所は,控訴人の損害賠償請求は,7万円及びこれに対する不法行為の成立の後である平成24年12月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

2 事実経過
 前記第2の2の補正引用に係る原判決「事実及び理由」第2の1の前提事実(以下「前提事実」という。)に加え,後掲の括弧内に摘示した証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(ただし,乙1〔担当者の陳述書〕のうち,後記認定に反する部分は採用しない。)。
(1) Bは,旧あさひ銀行(現在の被控訴人)京都支店に本件預金を有していたところ,平成15年9月8日死亡した。Bの法定相続人は,控訴人(三女)及びC(二女)であり,その法定相続分は各2分の1である(前提事実(1)ないし(3))。

(2) 控訴人は,平成19年8月3日,京都家庭裁判所に対し,米国在住のCを相手方として,Bの夫(控訴人及びCの父)Dの遺産分割及びBの遺産分割をそれぞれ求める申立てをした(平成19年(家)第1934号,第1935号事件)。そして,同裁判所は,平成21年10月1日,D及びBの遺産分割の審判をした(以下「本件審判」という。甲7,前提事実(4))。

 本件審判は,Bの遺産分割に関し,前提問題として,Bの相続人は控訴人及びCであり,法定相続分は各2分の1である旨,本件預金はBの遺産であるが,相続により当然法定相続分に応じて各相続人に帰属するところ,当事者間に遺産分割の対象とする合意がなく,本件預金は遺産分割の対象から除外する旨がそれぞれ認定判断され,その上でBの遺産の分割方法を定める旨を内容とするものである(甲7)。

 Cは,本件審判を不服として即時抗告したが(大阪高等裁判所平成21年(ラ)第1069号事件),同裁判所は,平成22年1月25日,Bの遺産分割に関し,前提問題については本件審判と同旨の認定判断をし,その上で遺産の分割方法を変更する旨の決定をし(甲8),同決定は確定した(甲11。なお,Cは,上記決定を不服として特別抗告及び抗告許可の申立てをしたが,最高裁判所は,平成22年4月16日,上記特別上告を棄却する決定をし〔甲10〕,大阪高等裁判所は,同年3月1日,抗告を許可しない決定をした〔甲9〕。以下,上記確定に係る抗告審決定を「本件遺産分割決定」という。)。

(3) 本件遺産分割決定の確定後,控訴人の代理人であるN弁護士は,平成24年8月10日,被控訴人京都支店に対し,Bの相続人は控訴人とCの2名であり(戸籍謄本写しを添付),Bの遺産分割については本件遺産分割決定のとおりに確定している旨を説明した上(本件審判の審判書正本,本件遺産分割決定の決定正本及び確定証明書の各写し等を添付),平成15年12月3日から平成17年8月12日までの間の本件預金の取引明細(預金元帳の写し)の送付を依頼する旨記載した平成24年8月10日付け書面を送付し(甲14),同月17日には,委任状をファクシミリで被控訴人京都支店に送付した(甲16)。

(4) N弁護士は,平成24年8月28日,被控訴人京都支店に対し,控訴人の代理人として,本件預金の相続手続を依頼する旨,Bの相続人が控訴人とCの2名であり,Bの遺産分割については裁判所の手続を経て確定していることについては,上記(3)の同月10日付け書面及びその添付書類で説明済みである旨,本件審判及び本件遺産分割決定において,本件預金につき明示がないのは,裁判所が「普通預金は可分債権であり,最初から当然に各人の法定相続分に応じて分割債権となる」(最高裁昭和29年4月8日判決)との立場を採っているからであり,本件預金を控訴人及びCが2分の1ずつ相続したことは明らかである旨,ただし,Bの相続発生後に本件預金口座に入金された株式の配当金については,後に当該各株式を相続することになった者が取得すべき果実であり,控訴人は,北陸電力株式会社,株式会社高島屋及び東レ株式会社の株式の配当金を取得する権利を有する旨,したがって,控訴人は,本件預金につき,相続に基づき,①平成15年9月30日における残高14万6649円の2分の1である7万3324円,Bの相続発生後に本件預金口座に入金された②北陸電力株式会社の株式の配当金9万4037円,③株式会社高島屋の株式の配当金8万1427円,④東レ株式会社の株式の配当金5万4063円の合計30万2851円の払戻手続を請求する旨を記載した平成24年8月28日付け書面を送付した(甲15)。

(5) N弁護士から上記(3)及び(4)の各書面を受領した被控訴人京都支店は,本件預金を正当な権限を有する者に対して正確に払い戻すためにはCの同意ないし意思確認を行う必要があると判断し,担当者を通じてN弁護士にその旨を伝えた(乙1)。
 これに対し,N弁護士は,今日までのCとの間の相続問題の対応状況や相続開始時から5人の代理人弁護士が交代しており,それぞれの弁護士がCと連絡する立場にないと表明していること,N弁護士から何回か手紙をCに送付しているが全く反応がないこと等を説明した(甲16)。

(6) N弁護士は,平成24年10月23日,被控訴人京都支店に対し,控訴人の代理人として,かねてより本件預金の相続手続を依頼しているが,未だに必要書類等の送付がない旨,先日,同店担当者に電話で伝えたとおり,同年8月28日付け書面による30万2851円の払戻請求を撤回し,本件預金の現在残高の2分の1の払戻を請求する旨を記載した同年10月23日付け書面を送付した(以下,同書面による請求を「本件預金分割払戻請求」という。甲12)。しかしながら,被控訴人京都支店は,本件預金分割払戻請求に応じなかった。

(7) B名義に係る三菱UFJ信託銀行,住友信託銀行及びゆうちょ銀行の各預金については,遅くとも平成24年11月19日頃までに,控訴人において法定相続分2分の1の割合に応じた払戻しがなされた(甲16,弁論の全趣旨)。

(8) 平成24年11月19日,N弁護士は,被控訴人京都支店の担当者との電話でのやりとりにおいて,同担当者から,本部の最終的な判断として「もう1人の相続人の方の承諾がない限り,法定相続分2分の1であっても,当行としては払戻しに応じられません。」旨を伝えられた。N弁護士は,「他の銀行は応じていただいているのに,どうしてもりそな銀行では応じられないということですか。」と尋ねたところ,同担当者は,「他行は存じませんが,当行では本部の決定ですので,私ども支店ではどうすることもできません。」と返答した。N弁護士が重ねて「裁判するよりないということでしょうか。」と尋ねたところ,同担当者は,「私どもとしては何とも申し上げようがありません。」と返答した(甲16)。

(9) 控訴人は,本件預金の現在残高の2分の1の割合による払戻請求訴訟を提起することとし,平成24年12月頃,N弁護士は,被控訴人京都支店に対し,訴訟提起の準備のための本件預金の残高照会をしたところ,同店の担当者であるEは,本部に確認の上返答する旨述べ,同月21日,本件預金分割払戻請求には応じられない旨回答するとともに,通帳記入をすれば簡単に残高を確認することができる旨教示した(甲16,乙1)。

(10) 控訴人は,N弁護士らを訴訟代理人に選任した上,平成25年1月11日,京都簡易裁判所に対し,本件預金の平成24年8月11日現在の残高130万0628円の2分の1である65万0628円の払戻請求及びこれに対する催告の後である同年12月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,本件預金分割払戻請求の拒絶が不法行為に当たり,控訴人はこれにより精神的苦痛を受けたほか,上記預金払戻請求並びに慰謝料請求訴訟の提起及び追行のための弁護士費用相当の損害を被ったことを理由として,慰謝料10万円と弁護士費用10万円との合計20万円及びこれに対する同日から支払済みまで前同様の遅延損害金の支払を求める本件訴訟を提起した(本件訴訟は,その後,同年3月27日付け移送決定に基づき,京都地方裁判所に移送された。)。


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