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全財産贈与認識の場合の遺留分減殺請求権時効に関する最高裁判決全文紹介

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平成28年 5月17日:初稿
○民法1042条にいう減殺すべき贈与があつたことを知つた時とは、「贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時」と解すべきだが、遺留分権利者が、減殺すべき贈与の無効を訴訟上主張していても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを認識していたときは、その無効を信じていたため遺留分減殺請求権を行使しなかつたことについて、もつともと認められる特段の事情のない限り、この贈与が減殺することができるものであることを知つていたと推認するのが相当であるとした昭和57年11月12日最高裁判決(民集36巻11号2193頁、家月35巻9号56頁)全文を紹介します。

民法第1042条(減殺請求権の期間の制限)
 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。


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主  文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理  由
 上告代理人○○○○の上告理由について
 民法1042条にいう「減殺すべき贈与があつたことを知つた時」とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知つた時と解すべきであるから、遺留分権利者が贈与の無効を信じて訴訟上抗争しているような場合は、贈与の事実を知つただけで直ちに減殺できる贈与があつたことまでを知つていたものと断定することはできないというべきである(大審院昭和12年(オ)第1709号同13年2月26日判決・民集17巻275頁参照)。

 しかしながら、民法が遺留分減殺請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であつても時効は進行を始めないとするのは相当でないから、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者が右事実を認識しているという場合においては、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があつて、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかつたことがもつともと首肯しうる特段の事情が認められない限り、右贈与が減殺することのできるものであることを知つていたものと推認するのが相当というべきである。

 これを本件についてみるのに、原審の適法に確定した事実及び記録によれば、
(一)訴外Aは、その妻である上告人とかねて円満を欠いていたところ、昭和33年ころには不仲の程度が甚しくなり、養子である訴外Bとともに家を出て被上告人Y方で同被上告人と同棲して世話を受けた、
(二)訴外Aは、74歳の高齢になつて生活力も失つていた時期である昭和43年12月20日に被上告人Yの自己及び訴外Bに対する愛情ある世話と経済的協力に感謝し、かつ、自分の亡きあと訴外Bの面倒をみてもらうためにその唯一の財産ともいうべき本件土地建物につき持分2分の1を被上人Yに贈与し、同時に残りの2分の1を訴外Bに贈与した、
(三)訴外Aは、昭和49年6月25日に死亡したが、上告人はその一か月後には本件土地建物の権利関係について調査し、前記贈与の事実を了知していた、
(四)そこで、上告人は、訴外Aの被上告人Yに対する本件贈与が右両者間の妾契約に基づいてされたもので公序良俗に反して無効であると主張して被上告人Yの受領した本件土地建物の持分2分の1の返還を求める本件訴を提訴した、
(五)これに対し被上告人Yらは右公序良俗違反の主張を争うとともに、本件第一審の昭和49年11月11日の口頭弁論で陳述した同日付準備書面において、かりに本件贈与が無効であるとしても、右返還請求は民法708条により許されない旨を主張し、第一審判決においてその主張が容れられて本訴請求が排斥されたため、上告人は、差戻前の原審の昭和51年7月27日の口頭弁論において、予備的に、遺留分減殺請求権を行使して、被上告人桜井に対し、本件土地建物の持分6分の1の返還を求めるに至つた、
(六)上告人がした本件贈与無効の主張は、差戻前の原審において、贈与に至る前記事情及び経過に照らし公序良俗に反する無効なものといえない旨判断されて排斥され、右判断は上告審の差戻判決においても是認された、
というのである。

 右事実関係によれば、本件贈与無効の主張は、それ自体、根拠を欠くというだけでなく、訴外Aの唯一の財産ともいうべき本件土地建物が他に贈与されていて、しかも上告人において右事実を認識していたというのであるから、被上告人Yらから民法708条の抗弁が提出されているにもかかわらずなお本件贈与の無効を主張するだけで昭和51年7月に至るまで遺留分減殺請求権を行使しなかつたことについて首肯するに足りる特段の事情の認め難い本件においては、上告人は、おそくとも昭和49年11月11日頃には本件贈与が減殺することのできる贈与であることを知つていたものと推認するのが相当というべきであつて、これと同旨の説示に基づいて本件遺留分減殺請求権が時効によつて消減したものとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 大橋進 裁判官 木下忠良 鹽野宜慶 宮﨑梧一 牧圭次)

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