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寄与分を認めなかった平成26年11月20日神戸家裁尼崎支部審判全文紹介

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平成28年 2月23日:初稿
○「700万円の寄与分を認めた平成27年3月6日大阪高裁決定全文紹介」の続きで、同決定の原審で寄与分を認めなかった平成26年11月20日神戸家庭裁判所尼崎支部審判(判例時報2274号27頁)全文を紹介します。二審の平成27年3月6日大阪高裁決定との判断の違いについては別コンテンツで説明します。

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主   文
一 申立人の寄与分申立てを却下する。
二 被相続人Aの遺産を次のとおり分割する。
別紙遺産目録記載A一からA四までの不動産の競売を命じ、その売却代金から競売費用を控除した残額を、申立人に2分の1、相手方Y1及び同Y2に各4分の1あて分配する。
三 手続費用は各自の負担とする。

理   由
 一件記録による当裁判所の事実認定及び法律判断は、以下のとおりである。 〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉

一 相続の開始、相続人及び法定相続分
 被相続人は、平成11年3月×日に死亡し、相続が開始した。被相続人の相続人は、子である申立人、孫である相手方Y1及び同Y2である。各自の法定相続分は申立人二分の一、相手方らが各四分の一である。

二 遺産の範囲及び評価
 一件記録によれば、別紙遺産目録《略》(以下「目録」という。)記載の各不動産が被相続人の遺産と認められる。目録記載A一記載の土地を路線価により評価することについて当事者間の合意があり、この土地の相続開始当時及び平成25年の路線価格は目録記載のとおりである。目録記載A二及びA三の土地はいずれも公衆用道路であり、固定資産評価額により0と評価することが相当である。目録記載A四の建物は平成25年の固定資産評価額により評価することが相当であり、目録記載のとおりとなる。老朽化した建物であり相続開始当時も評価額にさほどの差はないといえることから、相続開始当時も同額と評価することが妥当である。

 以上を整理すると、分割対象各遺産の評価は目録記載のとおりとなる。現在の遺産総額は789万5110円となる。

三 寄与分に関する申立人の主張
(1) 身上介護

 被相続人は、目録記載A四の建物(以下「実家建物」という。)にかつて夫であるC(以下「C」という。)と同居し、昭和54年6月にCが死亡してからは独りでこの建物に住んでいた。
 申立人は、昭和55年3月、独り暮らしの被相続人を申立人の居住地に近い神戸市東灘区××町の賃貸マンションに呼び寄せた。以後申立人は、毎日のように無償で被相続人の食事を提供した。

(2) 不動産のローン返済
ア 実家建物は、昭和24年ころCが購入し、Cの生前はCと被相続人が同居し、Cの死後は昭和55年3月まで被相続人が独りで住んでいた。当初、実家建物の敷地に当たる目録記載A一の土地(以下「実家土地」という。)は借地だった。

イ 被相続人は、昭和58年5月、実家土地と公衆用道路に当たる目録記載A二及びA三の土地(以下まとめて「道路土地」という。)を地主から購入した。この際申立人は、夫であるB(以下「B」という。)に依頼し、昭和58年5月、株式会社P銀行(以下「P銀行」という。)から700万円を借り入れてもらった(以下「第一次ローン」という。)。申立人と被相続人がその債務の連帯保証人となった。被相続人は、第一次ローンで借り受けた700万円を実家土地及び道路土地の購入代金に充てた。

ウ 第一次ローンの返済は申立人が行った。当時、申立人はBの経営するT株式会社(以下「本件T社」という。)で事務員として勤務し、月給12万円程度をBから手渡しで受領していた。ローン返済に当たり、それまでの受領額からローン返済額である8万3000円を控除した額を受領する形に変わった。

エ Bは、昭和62年9月×日、P銀行から500万円を借り入れ(以下「第二次ローン」という。)、これを第一次ローンの返済に充て、第一次ローンを完済した。

オ 第二次ローンの返済も、第一次ローンと同様に申立人の給与からローン返済額の月額6万円を負担し、平成6年8月に完済した。なお、平成5年から6年ころの被相続人のQ銀行(P銀行の商号変更後の名称)の預金通帳には、第二次ローンの返済にかかる引き落としは見られない。

カ 申立人のこれらのローンの返済による寄与は、700万円と評価すべきである。仮に申立人自身ではなくBが返済していたとしても、Bは申立人の配偶者であり申立人の履行補助者として返済したのだから、申立人の寄与と評価すべきである。

(3) 被相続人の債務の返済(相続開始後の行為)
 被相続人は、死亡の2年ほど前から、コープ○○宝飾部より多数の指輪を割賦で購入していた。割賦代金の約200万円は死亡時に返済されておらず、申立人が被相続人の死後、平成11年6月×日までに残債務を完済した。

四 寄与分に関する事実認定及び当裁判所の判断
(1) 認定事実

ア 実家建物は、昭和24年ころCが購入し、Cの生前はCと被相続人が同居した。昭和54年6月×日、被相続人がCからの相続によりこれを取得した。当初、実家建物の敷地である実家土地は借地であった。

イ 被相続人は、昭和54年10月以後、実家建物をD氏に賃貸してきた。賃料は当初月額4万5000円、その後4万7000円とされ、被相続人の死亡後も契約は継続していた。賃料は被相続人の生前、被相続人名義のQ銀行普通預金口座に振り込まれていた。

ウ 被相続人は、実家建物をD氏に賃貸した後、申立人の住所地に近い神戸市東灘区××町の賃貸住宅に転居した。

エ 被相続人は、昭和58年5月×日(当時被相続人73歳)、実家土地と道路土地を地主から購入した。
 この不動産購入に伴い、申立人の夫であるBが債務者となり、昭和58年5月×日、P銀行から700万円を借り入れた(第一次ローン)。同日、このローンを被担保債権とする抵当権が実家土地、道路土地、実家建物に設定された。併せて申立人と被相続人が第一次ローンの連帯保証人となった。第一次ローンの約定返済月額は、昭和65年3月まで一か月8万3000円、昭和65年4月は一か月11万1000円だった。

オ 昭和62年9月×日、Bが債務者となり、P銀行から500万円を借り入れた(第二次ローン)。このとき第一次ローンは完済され、新たに第二次ローンを被担保債権とする抵当権が実家土地、道路土地、実家建物に設定された。第二次ローンの約定返済月額は昭和69年8月×日まで6万円だった。第二次ローンはその後、完済された。

カ 被相続人の収入は、平成5年から6年当時、厚生年金月平均約8万9000円、国民年金月平均2万3500円、恩給月平均約7万5000円(年四回、一回あて22万5000円程度として計算)のほか、実家建物の賃料4万7000円があった。一か月合計約23万4500円となる。

キ 被相続人の遺産である預金は一件記録上認められない。

(2) 判断
ア 被相続人に無償で食事を提供したという申立人の主張は、申立人が長期にわたり被相続人に食事を提供した事実も、これを申立人自身の経済的負担でした事実も、これらを裏付ける客観性のある証拠がなく、かかる事実を認めるには足りない。

イ 実家土地、道路土地の購入代金を申立人あるいはBが負担したとの主張について検討する。
(ア) 実家土地、道路土地の購入代金に、B名義で借り入れた700万円(第一次ローン)が充てられた事実は窺える。第一次ローンが、昭和62年7月に第二次ローンで借り入れた500万円で完済された事実も認められる。第二次ローンはその後完済された。つまり実家土地、道路土地の購入資金となったローンはいずれも返済済みだが、この返済原資が何であるかが問題となる。

 なお申立人は、被相続人名義の通帳からこれらローンの引き落としが見あたらないというが、ローンの債務者はBなのであるから、引き落としはB名義の口座からされるのがむしろ通常といえ、被相続人名義の口座からの引き落としがないことをもって、ローン返済の原資に被相続人の金が充てられていないと直ちにいえるわけではない。

(イ) 第一次、第二次ローンの返済原資を直接裏付ける証拠は一件記録上みあたらない。申立人は、自身の給与から支払った、給与は手渡しで受領していたところ、ローン返済時にはその分を控除した額を受領していたなど主張するが、そもそも申立人の給与の受領いかん、受領した給与の支出状況やその使途に関連すると思われる申立人名義の預金口座の履歴、これらローンの引落口座の履歴などの客観証拠は何ら提出されていない。申立人は、仮にBが支払っていたとしても申立人の履行補助者と見るべきだとも主張するが、Bの給与振込口座の履歴その他B個人の資産からローン返済原資を賄ったことを裏付けるべき客観証拠も何ら提出されていない。

(ウ) 被相続人は、厚生年金、国民年金、恩給、家賃収入を合計すると一か月23万円を超える収入があった。物理的には第一次、第二次ローンの返済を被相続人自身の収入から負担する可能性も否定できない。

(エ) 被相続人の収入程度からすると、第一次、第二次ローンの返済を被相続人以外の者が全額負担したのであれば、被相続人の死亡後、預金がある程度残る可能性も十分考えられるが、結果として被相続人の預金は見つかっていない。
 申立人は、「亡くなるまで2年ほど前ころから、コープ○○宝飾部から多数の指輪を割賦で購入し、代金約200万円が未払いのまま亡くなった」と被相続人の浪費を主張する。たしかに相続開始後、申立人が被相続人名義の株式会社Sに対する債務70万1200円を支払った事実や、相続人間で宝石の形見分けをした事実は窺える。しかしながらそれのみでは、被相続人の家計支出全体の内容や支出目的を推認するには足りず、結果として被相続人の最終的な流動資産の状況に対する十分な説明にはなっていない。

(オ) 以上の検討によれば、申立人あるいはBが実家土地及び道路土地の購入資金を負担した事実を認めるには足りない。したがって、この点による寄与分主張も認められない。


ウ 申立人が相続開始後に被相続人の債務を返済したとの主張については、寄与分の評価時点が相続開始時であることから、客与行為は相続開始前の行為が予定されているといえる。したがって、これも寄与行為には当たらない。

エ 以上によれば、申立人の主張するいずれの事実についても寄与分を認めるには至らない。

五 各自の取得分及び当裁判所の定める分割方法
(1) 各自の取得分は法定相続分どおりと認められ、申立人が2分の1、相手方らが各4分の1となる。現在の遺産総額にこれを乗じると、各自の取得可能額は申立人が394万7554円、各相手方が197万3778円となる。

(2) 申立人は、目録A一から四まで記載の不動産の取得を希望するものの、代償金は相手方2名に対する合計100万円しか支払えないと述べる。申立人がこれらの不動産を取得するためには相手方2名に対する代償金として合計394万7556円を支払う必要があることから、申立人には、代償分割の要件となる支払能力が認められない。したがって、申立人が不動産を取得する形での代償分割は困難である。

(3) 申立人以外には、不動産の取得を希望する者はいない。代償分割が困難な場合について、申立人、相手方ともに換価分割を予定し、競売の方法によることを承諾している。これによれば、遺産不動産すべてを競売の方法で換価して各自が換価代金を分配することが相当である。分配割合は法定相続分に従い申立人2分の1、相手方ら各4分の1となる。

 したがって、競売による換価代金から競売費用を控除した残額の2分の1を申立人に、4分の1を各相手方にそれぞれ分配することとする。

六 手続費用
 手続費用は各自負担とするのが相当である。
 よって、主文のとおり審判する。
  (裁判官 山本由美子)

 別紙 遺産目録《略》

以上:4,903文字

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