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700万円の寄与分を認めた平成27年3月6日大阪高裁決定全文紹介

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平成28年 2月22日:初稿
○相続の相談で以下の民法相続法が規定する寄与分が認められませんかという相談が結構ありますが、現実には、その主張はもとより、立証が困難で、なかなか認められません。
第904条の2(寄与分)
 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする


○被相続人もと所有の土地取得費用の負担を認め、相続人(抗告人)に700万円の寄与分を認めた大阪高裁決定(判例時報2274号24頁)全文を紹介します。別コンテンツで寄与分を認めなかった平成26年11月20日(判例時報2274号27頁)を紹介し、その違いを私なりに説明します。

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主   文
一 原審判を次のとおり変更する。
二 抗告人の寄与分を700万円と定める。
三 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
 抗告人は、原審判別紙遺産目録A一ないしA四記載の各不動産を取得する。
四 抗告人は、前項の遺産取得の代償として、相手方らに対し次の金員を支払え。
(1) 相手方Y1に対し22万3777円
(2) 相手方Y2に対し22万3777円
五 手続費用は、原審及び当審を通じて各自の負担とする。

理   由
第一 抗告の趣旨

一 原審判を取り消す。
二 抗告人の寄与分を1500万円と定める。
三 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
 別紙遺産目録《略》A一ないしA四各記載の不動産を抗告人の取得とする。

第二 事案の概要
一 相続の開始、相続人及び法定相続分、遺産の範囲及び評価、寄与分に関する抗告人の主張は、次のとおり補正し、次項に抗告の理由(当審における抗告人の補充主張)を付加するほかは、原審判二頁二行目〈編注・本号後掲27頁三段15行目〉から同五頁10行目〈同28頁三段32行目〉までに記載のとおりであるからこれを引用する。なお、資料の番号は、原則として、甲事件のものを用いる。

 原審判二頁四行目〈同27頁三段19行目〉の「被相続人」の次に「(明治42年7月×日生)」を、同行〈同20行目〉の「開始した。」の次に「被相続人の夫C(明治40年3月×日生)は昭和54年6月×日に死亡しており、」をそれぞれ加え、同五行目〈同21行目〉の「子である申立人、孫である」を「被相続人の長女である抗告人(昭和11年9月×日生)、被相続人の二女の子である」に、同13行目〈同30行目〉の「平成25年」から15行目〈同四段八行目〉の末尾までを「老朽化した建物であり、相続開始時と平成25年時で評価額にさほどの差がないといえることから、相続開始時の評価額も平成25年の固定資産評価額と同額と評価することが相当である。」にそれぞれ改める。

二 抗告の理由(当審における抗告人の補充主張) 〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉
 抗告人には以下の寄与があり、その総額は1500万円と評価するのが相当である。
(1) 被相続人の身上監護
 被相続人は、昭和55年3月ころから抗告人の自宅近くの賃貸マンション(被相続人の最後の住所)で生活しており、抗告人は、被相続人の毎日の食事の世話をしていた。被相続人の食費は1日1000円程度かかっていたので、平成11年に被相続人が亡くなるまでの約18年間、抗告人が被相続人の食費を負担したことにより、657万円相当の被相続人の財産が維持されたといえ、これを抗告人の寄与分と認めるべきである。

(2) 実家土地及び道路土地の取得費用の負担
 実家土地及び道路土地の取得費用は、昭和58年5月×日に当時のP銀行から抗告人の夫であるB名義で借り入れた700万円(第一次ローン)でまかない、第一次ローンの返済は、Bの経営する会社から抗告人が受け取る給料(月額約12万円)を原資に支払った。その後、昭和62年9月×日にP銀行からB名義で500万円を借入れて(第二次ローン)、このころ、この500万円の借入れを原資に第一次ローンの残債務を完済した。第二次ローンも抗告人が同様に返済を続けて、平成6年8月に完済した(Bが経営していた会社から抗告人に月額約12万円程度の給与が支給されていたことは総勘定元帳の記載から明らかである。)。したがって、実家土地及び道路土地の取得費用に充てられたローンの返済額については、抗告人の寄与分として認められるべきであり、その金銭的評価は700万円というべきである。

 仮に、抗告人によるローン返済の事実が認められないにしても、Bは抗告人の意を受けてローン返済原資を負担していたのであり、Bを抗告人の履行補助者と評価すべきである。

(3) 被相続人の債務の弁済
 被相続人は、亡くなる約2年前から、「コープ○○宝飾部」(当時)において多数の指輪を割賦で購入しており、死亡時に割賦代金の未払額が約200万円あったところ、平成11年6月×日、抗告人がこれを完済した。これは抗告人の寄与分として認められるべきであり、その評価は約200万円ということができる。

第三 当裁判所の判断
一 寄与分について
(1) 認定事実

 次のとおり補正するほかは原審判四頁七行目〈同28頁二段15行目〉から同五頁10行目〈同28頁三段32行目〉までに記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原審判四頁21行目〈同28頁三段五行目〉の「P銀行から」の次に「借入金の使途を不動産購入として」を加え、同25行目〈同12~13行目〉の「11万1000円だった」を「11万1000円であり、B名義の預金口座から引落の方法で返済された」に改める。

イ 同五頁九行目〈同28頁三段30行目〉の末尾に改行して次のとおり加える。
 「 これに対し、平成5年ないし平成6年の被相続人の支出は、毎月、自宅の家賃5万数千円、水道光熱費、保険掛金、NHK料金、電話料金など(以下「水道光熱費等」という。合計で月平均1万数千円程)のほか、コープに対する支払が概ね月10数万円あった。被相続人の収入は、全てQ銀行(当時)の被相続人名義の普通預金口座(口座番号《略》)に入金され、同口座からコープへの支払がされた。また、水道光熱費等は、同銀行の被相続人名義の別の普通預金口座(口座番号《略》)から引落の方法で支払われていた。家賃は、現金で支払われていた。このころの、被相続人の支出は月平均20万円程度であった。平成5年ないし平成6年の間に、上記の二つの口座から、住宅ローン返済額相当の金額が定期的に払い戻されていた形跡はない。」

ウ 同五頁10行目〈同28頁三段32行目〉の末尾に改行して次のとおり加える。

「ク 被相続人のコープに対する支払は、平成7年以降も続いていたが、次第に金額が増えており、平成8年からは支払額が月20万円を超える月もあり、同年7月には約60万円、同年11月には約65万円がコープに支払われた。

ケ 抗告人は、平成11年6月×日、株式会社Sに対して、被相続人が購入した指輪二個の代金合計70万1200円を支払った。

コ Bは、昭和58年当時、T株式会社(昭和47年設立)の代表取締役を務めていた。Bは、平成8年7月16日に亡くなり、平成10年には抗告人とBの長男が同社の代表取締役に、長女と抗告人が取締役にそれぞれ就任した。抗告人は、昭和58年から同社の事務員として勤務して給与を支給されており、平成6年当時は、同社から月額12万数千円の給与を支給されていた。」

(2) 判断
ア 被相続人に対する身上監護について

 抗告人は、被相続人が昭和55年に抗告人宅近くに転居してから亡くなるまで約18年間食事の世話をしており、食費として1日1000円を負担していたので、657万円相当の寄与がある旨主張する。
 しかし、上記事実を認めるに足りる的確な資料はない上、仮に、上記事実が認められるとしても、親子関係に基づいて通常期待される扶養の程度を超える貢献があったということはできない。
 したがって、抗告人の上記主張は採用することができない。

イ 実家土地及び道路土地取得費用の負担
 実家土地、道路土地の売買と同日である昭和58年5月×日、第一次ローンが組まれたこと、第一次ローンの借入金の使途は不動産購入とされ、被相続人が抵当権設定者となり、実家土地、道路土地、実家建物に第一次ローンを被担保債権とする抵当権が設定されたこと、第二次ローン契約がなされた昭和62年9月×日に第一次ローンが完済されたこと、第二次ローンについても被相続人が抵当権設定者となり、実家土地、道路土地、実家建物に第二次ローンを被担保債権とする抵当権が設定されたこと、第二次ローンは平成6年8月に完済されたことは上記(1)で認定したとおりである。以上の事実によれば、実家土地、道路土地の売買代金は第一次ローンの借入により賄われ、その後、第二次ローンの借入により完済されたと認められる。

 そして、ローンの返済はB名義の預金口座から引落の方法でなされていたことは上記(1)で認定したとおりであるところ、Bは昭和58年当時から会社を経営しており、その収入をローン返済の原資に充てることは可能であったと認められる。一方、被相続人については、第二次ローン完済前の平成5年ないし平成6年にかけて被相続人名義の口座から第二次ローン返済額相当の金額が定期的に出金されている形跡はないこと、また、このころの被相続人の収支は収入が月23万円程度、支出が月20万円程度であったことは上記(1)で認定したとおりであり、これによれば、被相続人の収入から第二次ローン(返済額月6万円)を返済することは困難であったと認められ、それ以前にも被相続人自身の収入で第一次及び第二次ローンを返済することは困難であったと推認されることからすると、第一次及び第二次ローンは、Bあるいは抗告人の資産を原資にして返済されたものと推認される。

 以上によれば、抗告人には、遺産である実家土地の購入に当たって700万円の寄与があったと認めるのが相当である(ところで、上記返済の直接の原資がBの収入であるとしても、抗告人は上記のとおり昭和58年から夫であるBの経営する会社に勤務して給与を得ていたことからすれば、上記返済は、抗告人の意思に基づいて抗告人の一家の収入から支払われていたものとみることができるのであり、これによれば、抗告人自身の寄与があったものとみるのが相当である。なお、寄与の評価は相続開始時を基準になされるのが一般的であるところ、第一次ローンを完済した昭和62年当時の700万円を相続開始時である平成11年の貨幣価値に換算すると700万円を超える金額となるが、抗告人は、上記寄与を相続開始時で700万円と評価するのが相当である旨主張しているので、貨幣価値の変動については考慮しないものとする。)。

ウ 被相続人の債務の返済
 抗告人は、抗告人が、平成11年6月×日、株式会社Sに対して、被相続人が購入した指輪二個の代金合計70万1200円を支払ったことが寄与に当たる旨主張する。そして、上記主張に沿う事実が認められることは上記(1)で認定したとおりである。しかし、相続財産への寄与は相続開始までの事情を考慮すべきであることからすれば、相続開始後になされた上記支払をもって寄与の事情とすることはできない。
 したがって、抗告人の上記主張は採用することができない。

エ 寄与分についてのまとめ
 以上の次第であり、抗告人の寄与分は700万円の限度で認められる。

二 具体的相続分
(1) 抗告人の具体的相続分
 (789万5110円-700万円)×1/2+700万円=744万7555円
(2) 相手方両名の具体的相続分
 (789万5110円-700万円)×1/4=22万3777円(1円未満切捨て)

三 分割方法
 抗告人以外に本件遺産の現物取得を希望する者はいないこと、上記二の具体的相続分からすると抗告人が本件遺産全てを取得した場合に負担すべき代償金額は相手方両名分の合計で45万円弱になり、抗告人自身が相手方両名に対し合計100万円までであれば代償金を支払う旨述べていることや、抗告人の生活状況から負担可能な金額と認められることを考慮すると、抗告人に本件遺産を全て取得させ、相手方両名に対して代償金22万3777円をそれぞれ支払う方法で分割するのが相当である。

第四 結論
 よって、原審判を変更して、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 金子順一 裁判官 田中義則 渡辺真理)
以上:5,249文字

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