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遺言書文面全体に斜線を引く行為評価平成27年11月20日最高裁判決紹介

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平成27年12月15日:初稿
○遺言書の破棄について、民法は以下の通り規定しています。
第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。


○この「破棄」は、焼却・破り捨て等遺言書の形状自体を破壊する行為だけでなく、遺言書自体はそのまま残し、その文面を黒塗りするなどして読めなくした場合も含みます。問題は、以下の画像のように、斜線を引いて文字を消しても、遺言書の文面は読める場合です。
民法は、遺言書の内容について、加除その他変更については、第968条2項で「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と規定しています。

○そこで、斜線は引かれていても、遺言の文面が読める場合について、通説は、「破棄」には該当せず、遺言書の加除・変更の問題として捉えて民法の規定により「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と解釈していました。ところが、平成27年11月20日最高裁判決は、以下の画像のイメージでの全文の全面的斜線引きがなされた遺言について「破棄」と解釈しました。

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ペンで斜線、遺言書無効に=「故意に破棄」と判断-最高裁
時事ドットコム(2015/11/20-18:30)

 遺言者による斜線が引かれた遺言書が有効か無効かが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は20日、「故意に遺言書を破棄した場合に該当する」と判断し、有効とした二審広島高裁判決を破棄、無効と結論付けた。
 遺言書を破棄する要件は、法律で具体的に示されていない。今回は、遺言者の意思を尊重した判断と言えそうだ。



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以下、平成27年11月20日最高裁判決全文を紹介します。


主  文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 亡Aの作成に係る第1審判決別紙添付の昭和61年6月22日付け自筆証書による遺言が無効であることを確認する。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 

理  由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 本件は,上告人と被上告人の父である亡Aが作成した昭和61年6月22日付け自筆証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)について,上告人が,Aが故意に本件遺言書を破棄したことにより本件遺言を撤回したものとみなされると主張して,被上告人に対し,本件遺言が無効であることの確認を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,昭和61年6月22日,罫線が印刷された1枚の用紙に同人の遺産の大半を被上告人に相続させる内容の本件遺言の全文,日付及び氏名を自書し,氏名の末尾に同人の印を押して,本件遺言書を作成した。
(2) Aは,平成14年5月に死亡した。その後,本件遺言書が発見されたが,その時点で,本件遺言書には,その文面全体の左上から右下にかけて赤色のボールペンで1本の斜線(以下「本件斜線」という。)が引かれていた。本件斜線は,Aが故意に引いたものである。

3 原審は,上記事実関係の下において,本件斜線が引かれた後も本件遺言書の元の文字が判読できる状態である以上,本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段により遺言を撤回したものとみなされる「故意に遺言書を破棄したとき」には該当しないとして,上告人の請求を棄却すべきものとした。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 民法は,自筆証書である遺言書に改変等を加える行為について,それが遺言書中の加除その他の変更に当たる場合には,968条2項所定の厳格な方式を遵守したときに限って変更としての効力を認める一方で,それが遺言書の破棄に当たる場合には,遺言者がそれを故意に行ったときにその破棄した部分について遺言を撤回したものとみなすこととしている(1024条前段)。そして,前者は,遺言の効力を維持することを前提に遺言書の一部を変更する場合を想定した規定であるから,遺言書の一部を抹消した後にもなお元の文字が判読できる状態であれば,民法968条2項所定の方式を具備していない限り,抹消としての効力を否定するという判断もあり得よう。

 ところが,本件のように赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引く行為は,その行為の有する一般的な意味に照らして,その遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であるから,その行為の効力について,一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。

 以上によれば,本件遺言書に故意に本件斜線を引く行為は,民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当するというべきであり,これによりAは本件遺言を撤回したものとみなされることになる。したがって,本件遺言は,効力を有しない。

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,上告人の請求は理由があるというべきであるから,第1審判決を取り消した上,その請求を認容することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 山本庸幸) 
以上:2,427文字

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