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預金契約解約後の取引経過開示義務を否定した東京高裁判決要点紹介

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平成26年 1月24日:初稿
○「共同相続で相続人一人での取引経過開示請求権を認めた最高裁判決全文紹介」の続きで、銀行は預金契約解約後は、元預金者に対し、遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告すべき義務を負うと解することはできるが、その報告を完了した後も、過去の預金契約につき、預金契約中と同内容の取引経過開示義務を負い続けると解することはできないとした平成23年8月3日東京高裁判決(金融法務事情1935号118頁)を紹介します。

○先ず事案要旨は、亡預金者Aの共同相続人の1人Bが、亡預金者AとC銀行との間の取引経過の開示を求めるとともに、C銀行からから弁護士会照会に基づく取引経過開示請求を拒否されたことにつき、その違法性を主張して損害賠償を求め、原審が損害賠償請求を一部認容したため、双方が控訴したものです。

○平成23年8月3日東京高裁判決は、亡預金者AとC銀行との間の預金等契約は、解約により亡預金者A生前に終了しているところ、亡預金者A生前に取引経過の報告を完了したC銀行は、従前同様の取引経過開示義務を負わず、仮に信義則上、預金契約終了後に銀行が取引経過開示義務を負うとしても、本件では権利の濫用として許されないとして、原審同様、取引経過開示請求を認めなかった上で、本件開示拒否は、債務不履行や不法行為には当たらないとして、原判決を取り消し、損害賠償請求を棄却しました。

○判決では、銀行は、預金契約の解約後、元預金者に対し、遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告すべき義務を負うと解することはできるが、その報告を完了した後も、過去の預金契約につき、預金契約中と同内容の取引経過開示義務を負い続けると解することはできないとしており、その部分だけ以下に紹介します。

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(平成23年8月3日東京高裁判決分一部)

ウ 一方で、第1審被告が強いられる預金等契約終了後の開示の負担について検討すると、第1審原告は、亡Bの預金等取引を開示することは容易であると主張するが、預金等契約終了後の開示は、届出印や暗証番号、住所等による本人確認が困難であることや、契約に基づく免責手段がないこと、開示に要する費用の負担を求める預金者が存在しないことなどの点で、預金等契約継続中の開示に比して銀行側の負担が重いことは明らかである。本件のような共同相続人の一人からの開示請求については、相続関係の確認が必要であるため、負担は更に重くなる。

 加えて、本件開示請求2のうち、本件全取引は、前記のとおり、口座も取引期間も特定せずに第1審被告における亡Bの過去の全ての取引の開示を包括的、概括的に求める請求であり、本件資金移動取引に係る請求は、そのうち500万円以上の資金移動を伴う取引につき資金の移動先の開示を求める請求であるから、これらの請求に第1審被告が応じるためには、その保管する全ての記録から、口座を特定せずに、亡B名義の全ての取引を確認する必要があることになる。ところが、証拠(《省略》)及び弁論の全趣旨によれば、第1審被告には年間多数の預金等契約の解約があり、第1審被告は、これらについて、文書記録のほか3種類の電子記録を保有しているものの、文書記録の保存は10年間で過去の全ての取引を網羅するものではないこと、電子記録のうち、第1審被告の旧コンピューターシステム上のデータをマイクロフィルム化した記録(電子記録1)を用いた作業は全て手作業となること、旧システム上に残された平成8年10月1日から平成16年8月23日までのデータ(電子記録2)及び現行システム上のデータ(電子記録3)についても、一定の手作業が必要となり、口座を特定しない検索は困難であること、第1審被告が、本件訴訟の和解に向けて、本件全取引に係る開示資料を作成しようとしたところ、電子記録2及び3からの開示資料の作成に168分、電子記録1からの開示資料の作成に1630分を要し、人件費は12万円を超えると算定されたことが認められ、第1審被告が、第1審原告の上記各請求に応じるために強いられる事務負担は、預金等契約の終了後に信義則に基づいて負担するものとしてあまりにも過大なものといわざるを得ない。

エ 以上の事情を総合すると、仮に、銀行が、信義則上、預金等契約終了後、契約期間中の取引経過の開示に応ずべき義務を負う場合があるとしても、本件開示請求2は、開示請求の目的からもその義務を超えるものというべきであり、仮に超えないとしても、第1審被告に著しく過大な負担を生じさせるものとして、権利の濫用というべきであるから、これを認めることはできない。

 なお、第1審原告は、第1審被告が、本件訴訟提起前、守秘義務を理由として開示を拒否していたから、開示義務の存在自体は認めていたと主張するが、銀行が、過大な負担とならない限度で元預金者の相続人からの取引経過開示請求に協力することと、その義務があることとは異なるから、上記主張は失当である。また、第1審原告が指摘する第1審被告の銀行としての信頼や通帳の不存在などの事情は、直ちに本件開示請求2を認める根拠となるものではない。


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