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遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は2

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平成24年12月12日:初稿
○「遺産として預貯金しかない場合の特別受益控除は」を続けます。
 被相続人Aが遺産としてZ銀行に対する金7000万円の預貯金のみを残して死去し、相続人は長男B、二男Cの2人で、長男BはAから3000万円の生前贈与を受けていた場合、この生前贈与3000万円を相続財産に持戻し、合計1億円の相続財産を2分の1即ち5000万円ずつ分けることになりますので、7000万円の預貯金は3000万円の生前贈与を受けたBが2000万円、Cが5000万円取得することになるはずです。

○しかし、金7000万円の預貯金債権は、最高裁の論理からは可分債権として、相続開始と同時に2分の1即ち3500万円ずつB、Cに帰属しますので、Bは単独でZ銀行に3500万円の払戻を請求出来ます。この払戻請求について、CがZ銀行に対し、Bは特別受益があるので2000万円しか請求出来ないから、それを超える金額を支払ってはいけないと主張できるかという問題があります。

○この問題に正面から答える判例を発見しましたので紹介します。平成23年9月30日東京地裁判決です。
結論としては、「相続人が数人いる場合において,その相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは,その債権は法律上当然に分割され各相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するのが相当であるところ,本件各貯金はいずれも可分債権であるから,亡Bの死亡により,当然,原告と補助参加人がその相続分である2分の1ずつ承継しているものである。したがって,原告は本件各貯金について払戻義務を負担している被告に対してその2分の1について払戻請求権を有しているものというべきである。この場合,仮に原告が特別受益を得ていたとしても,必要であれば相続人同士である原告と補助参加人との間において調整すべき事柄であり,原告の被告に対する本件各貯金の払戻請求権の行使に影響を与えるものではない。」としてCはZ銀行にとやかく言えず、Z銀行としてはBに対し請求された3500万円全額の払戻に応じなければなりません。

○重要なことは、「仮に原告が特別受益を得ていたとしても,必要であれば相続人同士である原告と補助参加人との間において調整すべき事柄」と言っていることです。これは家庭裁判所での遺産分割調停或いは審判において民法第903条の持戻制度に基づく「調整」をすべきと言うことで、Bが3500万円の払戻によって1500万円を相続分より多く取得することになることについて、審判ではCに対し清算金として返還を命じられて然るべきと私は考えていますが、この問題を明確に記述した文献がまだ見つかっていません。

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主文
1 被告は,原告に対し,501万2800円及び内金500万円に対する平成23年1月14日から支払済みに至るまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用のうち,参加によって生じた部分は補助参加人の負担とし,その余は被告の負担とする。
3 この判決は,仮に執行することができる。
 
事実及び理由
第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要
 本件は,亡Bの遺産である別紙貯金目録記載の各貯金を相続分である2分の1の割合で相続したとする原告が,被告に対し,上記相続した各貯金債権に基づき,501万2800円及び内金500万円に対する本件訴状送達の日の翌日である平成23年1月14日から支払済みに至るまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。

1 前提事実(争いがない事実以外は,各項掲記の証拠により認める。)
(1)原告は,亡B(平成21年4月13日死亡。以下「亡B」という。)の妻である(甲1)。
(2)亡Bの相続人は,妻である原告と子である補助参加人Z(以下「補助参加人」という。)の二人であり,法定相続分はそれぞれ2分の1である(甲1ないし6,丙1)。
(3)亡Bの遺産として,被告に対する別紙預貯金目録記載の各貯金債権(以下「本件各貯金」という。)が存在する。

2 争点(原告の特別受益)
(補助参加人の主張)

(1)亡Bの遺産として,本件各貯金(通常貯金を除く。)のほか,くまがや農業協同組合大麻生支店の普通預金(56万6614円)・養老生命共済(200万円)・出資金(3万円)及び熊谷商工信用組合の普通預金(5万0636円)が存在するところ,原告は,亡Bが特別養護老人ホームに入所中の平成18年11月29日,同人名義のくまがや農業協同組合の定期性貯金1001万0411円を解約して受益しているほか,平成18年11月10日に熊谷商工信用組合の亡B名義の普通預金を払い戻して189万9783円を受益している。さらに,原告は原告名義の熊谷市小島所在の土地建物(土地2筆と建物2棟)を取得するに当たって,その購入資金として2000万円以上を亡Bから受益している。

(2)そうすると,亡Bのみなし相続財産合計4455万7444円であり,原告及び補助参加人の各相続分は2227万8722円となるところ,原告は既に上記相続分を超える特別受益をしているので,被告に対して本件各貯金の支払を求める権利を有しない。

(原告の主張)
(1) 亡Bの遺産については認める(ただし,被告に通常貯金2万5600円が存在する。)が,原告が亡Bから特別受益を受けたとの主張はすべて否認する。

(2) 原告が相続分を超える特別受益をしているので,被告に対して本件各貯金の支払を求める権利を有しないとの主張は争う。

第3 争点(原告の特別受益)に対する判断
1 補助参加人は,原告が既に相続分を超える特別受益をしているので,被告に対して本件各貯金の支払を求める権利を有しない旨主張するが,相続人が数人いる場合において,その相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは,その債権は法律上当然に分割され各相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するのが相当であるところ,本件各貯金はいずれも可分債権であるから,亡Bの死亡により,当然,原告と補助参加人がその相続分である2分の1ずつ承継しているものである。したがって,原告は本件各貯金について払戻義務を負担している被告に対してその2分の1について払戻請求権を有しているものというべきである。この場合,仮に原告が特別受益を得ていたとしても,必要であれば相続人同士である原告と補助参加人との間において調整すべき事柄であり,原告の被告に対する本件各貯金の払戻請求権の行使に影響を与えるものではない。

2 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
 (裁判官 志田博文)


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