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民法第921条で単純承認とみなされる”処分”概観

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平成23年 7月11日:初稿
○被相続人死亡後、承認・放棄の手続をする以前でも、被相続人の遺産に手を付けると、単純承認したとみなされることがあります。良くあるのは、被相続人名義の預金の払戻です。払戻だけでは、まだ決定的ではありませんが、払い戻したお金で自分が使用する自動車を購入するなどしたら、単純承認が確定しますので注意が必要です。民法の規定は以下の通りです。

民法第921条(法定単純承認)
 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2.相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。


○この「処分」によって単純承認とみなす趣旨は、相続人が単純承認をしない限りしてはならない行為があれば、黙示の単純承認があると推認できるし、第三者から見て単純承認があったと信ずるのが当然であるし(昭和42年4月27日最高裁判決民集21巻3号741頁、家月19巻7号56頁、判タ208号102頁、判時484号52頁等)、処分を信頼した相続債権者、他の相続人、第三者を保護する必要があると説明されています(川井健・新版注釈民法(27)478頁参照)。

但し、一般の処分行為すべてが「処分」に該当するものではなく、単純承認とみなされるという法的効果を与えるのに妥当な程度の処分でなくてはなりません(中川善之助編・註釈相続法(上)247頁〔舟橋諄一〕)。相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことが必要です(前掲昭和42年4月27日最高裁判決)。 

○具体的にどのような行為があれば「処分」とされるかを概観します。
1.該当する例
①遺産分割協議
②権利行使
(EX.売掛金債権の取立て=昭和37年6月21日最高裁判決、家月14巻10号100頁、判タ141号70頁、賃借権確認請求の訴訟提起〔民訴法124条3項参照〕=東京高判平1.3.27高民42巻1号74頁、判タ709号230頁、判時1311号69頁、株主権の行使・賃料受領口座の指定替え=東京地判平10.4.24判タ987号233頁)、
③債務の履行(遺産による相続債務の代物弁済や弁済=大判昭12.1.30民集16巻1号1頁、富山家審昭53.10.23家月31巻9号42頁、判時917号107頁)
④一般経済価額を有する物についての形見分け、衣類すべての持ち去りは形見分けを超える(東京地判平12.3.21家月53巻9号45頁、判タ1054号255頁)とされます

2.該当しない例
①保存行為と短期賃貸借
(民法921条1号但書)のほか、
②遺体や身回品、所持金の受領(大阪高決昭54.3.22家月31巻10号61頁、判タ380号72頁、判時938号51頁)、
③故人の道具類の無償貸与(最一小判昭41.12.22家月19巻4号53頁)、
④遺産から葬式費用、火葬費用、治療費を支払うこと(東京控判昭11.9.21新聞4056号13頁、前掲大阪高決昭54.3.22)
 これらの行為は、単純承認と無関係に遺族として当然とされる部類に属するからです。本件大阪高決平14.7.3は、この理解が遺産による仏壇や墓石の購入費用の支払いに及ぶことを明らかにしました。
⑤交換価値がない物(東京高決昭37.7.19東高民時報13巻7号117頁)、多額遺産中の僅かな物(山口地徳山支判昭40.5.13下民16巻5号859頁、家月18巻6号167頁)の形見分け(大判昭3.7.3新聞2881号6頁)、

○身分相応の当然営まなければならない行為か、財産的価値の多少を考慮することは、学説の多くが賛同します(田中恒朗・判タ1096号108頁、中川善太郎=泉久雄・相続法〔第4版〕386頁、森泉章・家族法大系(7)66頁、村重慶一「形見分けと民法921条」戸時537号40頁、同・戸時557号55頁など)。 

 有力学説は、遺産による相殺や期限到来債務の弁済は保存行為に当たると主張しています(近藤英吉・相続法論(下)746頁、我妻榮・判例民事法(17)3頁、我妻榮・新訂民法総則339頁、谷口安平・新版注釈民法(27)447頁、中川淳・相続法逐条解説(中)53頁)。 

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