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遺留分を侵害された相続人と相続債務の扱い

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平成21年 7月29日(水):初稿
○表記の遺留分を侵害された相続人と相続債務の扱いについて重要判例が最高裁から出されましたので紹介します。判例時報2041号45頁以下に掲載された平成21年3月24日最高裁第3小法廷判決です。

事案概要は以下の通りです。金額は切りの良い数字に改変しています。
被相続人Aは、子Yに相続財産全部を相続させる公正証書遺言をした。
平成15年11月14日Aが死亡し、相続人はAの子のXとYの2名であった。
相続財産は、不動産等合計約4億3000万円、債務が4億2000万円で、A死去後相続財産は遺言書に基づきYが取得した。
そこでXが全財産を取得したYに対し遺留分減殺請求をした。
Xの請求内容は、相続財産から相続債務を差し引いた約1000万円の4分の1相当額の約200万円と、相続と同時に当然にXも承継した相続債務約2億1000万円をこれに加えて合計約2億1200万円であった。
これに対しYは、本件遺言によりYが相続債務を全て負担するので遺留分の額に相続債務の額を加えることは出来ず、遺留分侵害額はあくまで200万円に過ぎないと主張した。


○確かに理屈上は、相続債務は遺産ではなく、相続開始と同時に当然に法定相続分に従って分割した金額を各相続人が承継します。本件では約4億2000万円の相続債務の2分の1の約2億1000万円はXが承継しています。しかし本件では、公正証書遺言でYの相続分を全部と指定していますので、相続債務も全部Yが承継し、XY内部の相続債務負担割合は、Yが100でXがゼロになります。いわばYが主たる債務者でXは、その2分の1の範囲で連帯保証したと同じ関係になります。

○Xの理屈は、相続債務は全てYが負担するとの遺言があっても、債権者との関係では、Xも約2億1000万円の債務を負っているので、連帯保証人は主たる債務者に対し求償権債権を持つと同様に、Xが相続承継して債権者に支払義務を負う約2億1000万円を事前求償請求することが出来ると言うものです。

○この事前求償が出来るかどうかについては、学説としては肯定・否定両説あったようです。これに対する平成21年3月24日最高裁第3小法廷判決結論ポイント部分は次の通りです。
 相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である。

 相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である。


○結論として,Xの事前求償請求は,否定されました。では、Yが相続債務を支払わないため、Xが理屈上承継した相続債務を債権者の求めに応じて支払った場合についてはどうなるかというと,最高裁は次のように述べています。
 遺留分権利者が相続債権者から相続債務について法定相続分に応じた履行を求められ,これに応じた場合も,履行した相続債務の額を遺留分の額に加算することはできず,相続債務をすべて承継した相続人に対して求償し得るにとどまるものというべきである
 この場合もあくまで求償の問題であり、遺留分とは関係ないと言うことです。
以上:1,506文字

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