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ある遺言無効確認請求事件控訴審判決

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平成21年 5月30日:初稿
「ある遺言無効確認請求事件地裁判決3」を続けます。
一審で敗訴したXらはこれを不服として控訴しましたが,控訴審も裁判所鑑定を一審同様排斥し控訴を棄却し,上告はなされず本件は確定しました。この事件は30年の私の弁護士生活で「事務員の育て方」の観点で最も印象に残る事件でした。その顛末は後日説明します。

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平成20年(ネ)第443号 遺言無効確認請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成17年(ワ)第1069号)
口頭弁論終結日平成21年1月27日

判決

宮城県○○市××
控訴人 X1
仙台市○△区×○
控訴人 X2
上記両名訴訟代理人弁護士 甲野太郎

仙台市○×区○×
被控訴人 Y1
同所同番地
被控訴人 Y2
上記両名訴訟代理人弁護士 小松亀一

主文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 亡Aが平成4年5月10日にした原判決別紙1記載の自筆証書遺言は無効であることを確認する。
3 亡Aが平成4年5月10日Iこした原判決別紙2記載の自筆証書遺言は無効であることを確認する。
4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。

第2 事案の概要
1 本件は,亡A(以下「A」という。)及び亡B(以下「B」という。)の長女である控訴人X1及び三女である控訴人X2が,AとBの長男である亡C(以下「C」という。)の妻である被控訴人Y1及びCと被控訴人Y1の長女である被控訴人Y2に対し,AとBの各自筆証書遺言の無効確認を求めた事案である。

 原審が控訴人らの請求のうちBの自筆証書遺言の無効確認請求を認容し,Aの自筆証書遺言の無効確認請求を棄却したところ,控訴人らが不服を申し立てた。被控訴人らはその敗訴部分につき不服を申し立てていない。そのほかの事案の概要は,下記2のとおり原判決の訂正等があるほかは,原判決の事実及び理由欄の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 原判決の訂正等
(1)原判決3頁2行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「本件A遺言では『渡』という文字の偏が二水になっており,これがAの筆跡の特徴とみることができるとしても,Aの筆跡が分かる資料がA宅内に存していたことからすれば,何者かがAの筆跡を模倣して本件A遺言を作成することも可能である。筆跡の特徴からすれば,本件A遺言の『郎』の文字の1画目は,縦向きに垂直になっているが,Aの筆跡と考えられる甲第15,16号証,乙第18,20号証の『郎』の文字の1画目はいずれも横向きになっているのであり,明らかに異なる特徴を表している。また,本件A遺言の『髙橋』という文字は,甲第15,16号証,乙第18,20号証の『髙橋』という文字と比べて見違えるほどバランスが取れており,これらを同一人物が書いたものとは到底考えられない。

 また,本件A遺言の作成日は平成4年5月10日となっているが,C及び被控訴人Y1とAとは,昭和61年以降疎遠な関係にあったのであり,AがCに全財産を相続させるという内容の遺言を作成する動機を見出すことが困難である。
 したがって,本件A遺言は,Aが作成したものとは認められない。」

(2)原判決3頁25行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「(ウ) 本件A遺言が作成されたころ,AとCは同居していたのであり,Aの子のうちC以外の者はいずれも女性で他家に嫁いでいたのであるから,AがCに全財産を相続させる旨の遺言を作成することは自然である。」

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も本件A遺言はAの自書によるものであり,控訴人らの本件A遺言の無効確認請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,原判決6頁24行目から同7頁21行目までを次のとおり改めるほかは,原判決の事実及び理由欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるからこれを引用する。

 「e 『渡』の文字の偏が二水で記載されていること以外にも,本件A遺言の筆跡とAの筆跡であると認められる文書(甲15,16,乙7の3・5,18,19,20(『ご住所』と『ご芳名』部分に限る。)。なお,乙19についてもAの筆跡であることについて争いがない。)の筆跡との間には,多くの類似点や共通点があるのであり,そのことは,甲第19号証(以下「原告鑑定」という。),乙第16号証,乙第23号証及び第24号証(以下この2つを併せて「早津鑑定」という。)でも認めているところである。

f 裁判所鑑定は,本件A遺言の筆跡はAの筆跡とは別人のものであるとする。しかし,裁判所鑑定は,前記のとおり本件A遺言の『渡』の文字の偏が二水であることがその筆者の固有の特徴であることを見誤っており,また,本件A遺言の筆跡がAの筆跡であると認められる前記の各文書の筆跡と多くの類似点や共通点があることを考慮に入れていないものであるから その判断は不合理なものであり,採用することができない。

 また,原告鑑定は,本件A遺言の筆跡は筆意(筆具を使用する際の心構え)や執筆時の心理状況について『やや慎重気味』であり,本件A遺言の『言』の文字の送筆に筆継ぎが観察されることなどから 本件A遺言の筆跡はAの筆跡とは別人のものであるとする。しかし,本件A遺言は,Aの死亡後の財産の行方を決める重要な文書であるから,Aとしてはその筆記に当たり慎重に筆を進めるのが当然と考えられるので,本件A遺言の筆意や執筆時の心理状況が日常生活の中で作成された文書と対比して『やや慎重気味』になったり,本件A遺言の中の文字に筆継ぎの跡が認められたとしても,不自然なこととは考えられない。したがって,これらを根拠に本件A遺言はAの筆跡とは別人の筆跡であるとする原告鑑定の結論は採用することができない。

g 控訴人らは,本件A遺言の『郎』や『髙橋』の文字は,Aの筆跡とは異なる旨の主張をする。確かに,本件A遺言における『郎』の文字の1画目は縦向きで垂直であり,Aの筆跡と認められる甲第15,16号証,乙第18,20号証の『郎』の文字の1画目はいずれも横向きになっていることが認められるが,本件A遺言は縦書きであるのに対し,甲第15,16号証,乙第18,20号証は横書きであり,また本件A遺言は前記のとおりAの死亡後の財産の行方を決める重要な文書であるから,Aとしてはその筆記に当たり慎重に筆を進めたものと考えられるのに対し,甲第15,16号証,乙第18,20号証は日常生活の中で作成されたものと考えられるのであるから,その運筆に多少の違いが生じても不自然とはいえない。本件A遺言の『髙橋』という文字は,甲第15,16号証,乙第18,20号証の『髙橋』という文字と比べて整った記載になっているが,これも,Aは,本件A遺言を作成するに当たり,日常生活の中で文書を作成する場合よりも慎重に筆を進めたことによるものと考えられる。

h 控訴人らは,AがCに全財産を相続させるという内容の遺言を作成する動機を見出すことが困難である旨の主張をするが,証人Fも平成3年にAが自宅を新築した後にAとCが同居していた旨の供述をしているのであり,そのことからすれば,Aが長男であるCに全財産を相続させる旨の本件A遺言をする動機がおよそ認められないということはできない。証人Fは,AとCが同居するに至ったのは,Cが新築したA宅にAの承諾を得ることなく入ってきたことによるものである旨の供述をするが,Aが承諾をしていないにもかかわらずやって来たCを同居させるとはにわかに信じ難く,上記供述は採用できない。

i 以上によれば,本件A遺言は,Aの自書であると認められる。」

2 以上の次第であるから,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であって,本件各控訴はいずれも理由がない。
 よって,主文のとおり判決する。

仙台高等裁判所第2民事部

裁判長裁判官 大橋 弘
裁判官 山口 均
裁判官 岡田伸大

以上:3,289文字

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