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”たたかれ、かみつかれ… 障害者施設の職員、絶えぬ傷”報道紹介

平成28年11月20日:初稿
○老人介護施設従業員賃金紛争事件を経営者側から担当したことがありますが、その過程で介護施設従業員の苛酷な労働実態を少しは知ることができました。しかし、重度心身障害者施設関連事件を担当したことはなく、その従業員の労働実態等に生で触れた経験はありません。体力等衰えた老人を収容する介護施設でも相当厳しい状況のところ、若くて体力のある特に知的障害者等はその介護が相当厳しそうでその介護施設職員は相当大変だろうと想像だけはできます。

○しかし、朝日新聞デジタルニュースから見つけた以下の記事を見ると障害者介護施設の労働実態等は想像を遙かに超えて厳しそうです。私も障害者の一人ですが、私なんかより遙かに厳しい障害を抱えた、特に厳しいのは知的障害と思われますが、その障害者福祉問題は、大変難しく根の深い問題で、きれい事だけでは済まされないと実感しました。

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たたかれ、かみつかれ… 障害者施設の職員、絶えぬ傷
朝日デジタル太田泉生 2016年8月19日13時45分


障害者施設で働く男性の腕には傷が絶えない

 東北地方の重度障害者施設に勤める40代の男性の腕にはいくつも傷がある。右前腕部が多く、取材した日は赤い傷が五カ所ほど。暴れる利用者が爪を立てたり、たたいたりした痕だ。かみつかれて血が出たこともある。
 「反応すればさらに興奮するから、平然と対応するように教わった。押さえつけるわけにはいかず、他の利用者にけがをさせてもいけない。職員がけがをしてでも盾になるしかない」
 約50人の利用者が暮らす入所施設で働く。担当するのは約20人いる最重度の人たち。利用者が暴れるのは毎日のことだ。

 福祉を志して、今の施設に勤め始めて1年近く。理想を持ってはいるが、24時間を超える宿直が明けるとぐったりする。疲労でケアが乱雑になる日もある。

「保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳」
 津久井やまゆり園で起きた事件で逮捕された植松聖(さとし)容疑者(26)は、衆院議長に宛てた手紙にそう書いた。その内容は、理解できる面もあるという。

 利用者にとって本当は自宅に居るのが一番落ち着くだろうと思う。だが家族の負担は大きい。確かに疲れ切った家族はいる。身寄りのない人や、家族がほとんど会いに来ない人もいる。
 「生気の欠けた瞳」という言葉には、とっさにある同僚を思い浮かべた。トラブルが続いて疲れ切った日は、自分だってそんな目をしているかもしれない。


 植松容疑者は、福祉の仕事に前向きな言葉を述べたこともあったとされる。
 「きれいな言葉とそうでない面と、この仕事をしていれば、ひとりの中で同居することはあるんじゃないでしょうか」

 現場には、給料や労働条件からたまたま福祉を選んだ人もいる。上司は「福祉を志してきた人と、そうでない人の差が大きい」と言った。仕事は低賃金ながら責任は重く、体力と使命感が要る。
 「人員がもう少しほしいというのはどこの現場でも感じていると思う。少人数の共同生活のほうが利用者も落ち着くとも、誰もが思っているのではないか」

 入所者はそれぞれに強い個性を持っている。他の入所者との相性もある。だが大きな入所施設では、効率的な集団生活を重視せざるを得ない。「障害が重ければ重いほど、大きい施設は悪い環境」とまで言う。
 こうした環境では、自傷や他害などの問題も増えやすい。働く人のストレスも多くなる。

 少数の利用者と支援者が共同生活する「グループホーム」なら、一人一人に合わせたより手厚い支援ができる。「暴れたりパニックになったりするのも理由がある。自傷や他害のある人でも、グループホームならはるかに落ち着くはずだ」
 事件をきっかけに、こうした障害者福祉のあり方も問い直してほしいと、男性は考えている。(太田泉生)

■「施設から地域へ」転換めざす
 重い障害がある人たちの生活の場をめぐり、政府は2002年の計画で「施設から地域へ」と掲げた。津久井やまゆり園のような入所施設の数を最小限にとどめ、グループホームなどでの地域生活への転換を目指したものだ。
 神奈川県もこの理念に沿って計画を策定。13年度末の施設入所者は5053人だが、15年3月の第4期計画では、17年度末までにこのうち535人(11%)を、グループホームや一般住宅での地域生活に移行させるとの目標を掲げた。
 だが現実には、障害が重い人ほど地域生活への移行も難しいという。新たに施設に入る人も一定数見込まれ、県は、入所者数が17年度末で2%減の4935人程度になるとみている。


福祉施設で燃え尽きた私「内なるウエマツさんとの闘い」
朝日デジタル太田泉生 2016年9月27日18時13分


明治学院大学社会学部の深谷美枝教授(55)は、障害児施設で働き、燃え尽きて退職した経験がある。福祉を志したのに、過酷な勤務に利用者を人と思えなくなるほど追い詰められた。相模原市の津久井やまゆり園の事件で逮捕された植松聖(さとし)容疑者(26)に共感はしない。だが施設での仕事は「内なるウエマツさんとの闘い」だという。

■退職後、社会福祉の研究者に
 「やはり亡くなっていたか」。施設職員だった30年前に接した男性がやまゆり園に入所しており、事件で犠牲になったことを9月12日になって知った。直接知る人の被害は、わかっただけで2人。
 勤務した施設から何人もの利用者が、成人してやまゆり園に移った。他にも知っている人が犠牲になっているかもしれない。「名前が公表されていれば、皆で悼むこともできるのに」

 深谷教授は1983年に神奈川県庁に入り、横浜市の知的障害児施設で4年勤務。退職して社会福祉の研究者に転じた。
 今でも時々、当時接した人の夢を見る。1年間、1対1で付き添った重い知的障害がある少女は、夢の中で深谷さんの腕に抱かれ、うれしそうに笑う。温かな記憶に今も癒やされる。

 だが勤務は過酷だった。宿直は月に4回。疲労を解消する間もなく、未明の出勤や深夜勤務などのシフトが次々にやってくる。

 夢に出てくる少女は強度の行動障害があり、対応が極めて難しかった。テレビを棚から落として壊す。スリッパを天井に向かって投げ、電灯が割れて落ちてくる。他の利用者の耳をかみちぎったこともあった。
 道路の白線を踏むことに執着があり、車道に飛び出すのを体を張って止めた。体には常に、少女にかみつかれた歯形がついていた。


 深谷さんはキリスト教を信仰する。どんな人も兄弟姉妹として愛し、大事にするという理想があった。
 心穏やかに向き合おうと祈りを捧げて仕事に入る。だが3分後には自分に負けた。少女と向き合うなかで心身が追い詰められた。
 ある日、少女は暴れて制止され裸で泣きわめいた。「人の形をしているけれど、同じ人間として、兄弟姉妹として接することはできない」。そう思った。


■利用者を縛ったことも
 今では問題だが、当時は必要があれば利用者を縛った。「他の子をかんでしまうから仕方がない」。自分にそう言い聞かせ、毎日のように、少女を縛った。
 「私は神を裏切った」。理想とかけ離れていく現実に、自分を責めた。福祉の相談員を目指していたが、施設から異動する道筋が見えないことも負担感に拍車をかけた。限界に達し、退職を決めた。


 何が福祉の現場を追い詰めるのか。大学院を経て研究者となり、施設職員の聞き取りを重ねた。
 ある職員は「疲労が蓄積し、利用者に対して冷静でいられなくなった。利用者に殺意を覚えた瞬間もあった。介護職員の資格がないように感じた」と話した。

 別の職員は「自分の日常的な関わりが、虐待や人権侵害になっているのではと恐れている」と言った。
 深谷さんは勤務当時の自分を、「バーンアウト(燃え尽き)状態だった」と振り返る。研究を通じ、福祉の現場にいれば誰にでも起こりうると思うようになった。

 福祉は肉体的な力だけでなく、感情的なエネルギーを必要とする仕事だ。だがどんなに情熱を注いでも、報われているという実感を得づらい局面がある。
 そうなると時に、利用者を人として扱えず、機械的に扱ったり、虐待的な言動をするようになったりする。人権意識や倫理観が強い人でも、厳しい労働環境のもとで重度障害者を支え続けるのは、簡単なことではない。


■容疑者も「燃え尽きたのでは」
 逮捕された植松容疑者もバーンアウトを経験したのだと深谷さんは推察する。「専門性に乏しく人格も未熟な若者が、施設の仕事で燃え尽きた。その体験が病理性と結びつき、事件につながったように見える」
 事件から26日で2カ月になる。だが、事件をめぐる議論には、福祉施設の現場への想像力が欠けていると思うことがある。

 「闘い」を少しでも軽くするには、職員の増員や待遇改善でワークライフバランスを確立し、福祉に関わる人を支える視点が必要だ。福祉を学んだ若者が施設で働きながら、専門職としてステップアップしていける仕組みも必要だと言う。
 深谷教授は教会の牧師も務める。信徒には福祉ワーカーが多い。「どんなに障害が重かろうとも、利用者を兄弟姉妹と言い切ることが、人間が人間であることの出来るただ一つの道だ」と説く。同じことが、社会にも問われていると思う。(太田泉生)

◇ふかや・みえ 神奈川県に福祉職として入庁。県立知的障害児施設に4年間勤務し、研究者に転じた。明治学院大学社会学部社会福祉学科教授として、福祉施設職員の「悩み」の研究や、ソーシャルワークの研究教育にあたってきた。

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