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”自由と正義”H26年10月号懲戒例-ヒヤッとする懲戒事例紹介

平成26年10月21日(火):初稿
○日弁連機関誌”自由と正義”が配送されると最初に見るのが懲戒処分広告記事です。特に「戒告」事例が参考になります。平成26年10月号に正にヒヤッとする懲戒事例が掲載されています。以下、その処分理由の要旨全文を紹介します。
被懲戒者は、養育費請求の調停を申し立てられたAから、申立後に相手方Bが懲戒請求者を世帯主とする世帯に転入しているなどと説明され、懲戒請求者を世帯主とする住民票の取り寄せの依頼を受けた。被懲戒者は、2009年7月17日付け職務上請求書により、Aの求めに応じて漫然と、職務上の必要を超えて、懲戒請求者を世帯主とする世帯全員の住民票を取り寄せた。また、被懲戒者は、上記住民票には懲戒請求者のみ記載され、Bの記載がなく、住民票を求めるAの要望がBに対する上記調停事件とは関係がないにもかかわらず、上記住民票の写しをAに交付した。
 被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

弁護士法第56条(懲戒事由及び懲戒権者)
 弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
○一般の方にはなかなか判りづらい事案ですので、具体的状況を推測します。
・被懲戒者甲弁護士は、前妻Bから養育費請求の調停を申し立てられた前夫Aから、この調停手続の代理を依頼された。
・Aは、おそらく、前妻Bは、懲戒請求者Cと同居して生活していると思われるとして、甲弁護士に対しCの住民票の取り寄せを依頼した。
・BがCと再婚していれば、Aの養育費は減額乃至免除になる可能性があり、その事実確認は養育費請求では必要であった。
・そこで甲弁護士は、Cを世帯主とする世帯全員の住民票を取り寄せたが、Bの記載がなく、BとCの婚姻事実は確認できなかった。
・養育費調停には、BとCの婚姻事実とAB間の子が世帯に入っているかどうか調査すればよく、Cの子についての調査は不要であった。
・住民票を取り寄せたがBの記載はなく、調停事件にCの住民票は無関係であることが判明した。
・甲弁護士は、その事実をAに確認・納得して貰うためにCの住民票の写しをAに交付した。
・Aは、おそらく、その住民票写しをBに交付するなどして、最終的にCが自分の住民票を甲弁護士が取り寄せた事実を知った。
・Cは、甲弁護士が、何の関係もないのにCの住民票を取り寄せたことに怒り、懲戒請求をした。


○実は事実確認のために住民票を取り寄せることは弁護士実務では良くあります。先ず紛争の相手方がその住居に実際住んでいるかどうかを確認するために取り寄せる例が圧倒的に多いのですが、同居家族関係を調査するために行うこともあります。上記事案では、前妻Bの再婚の有無を調査するのであれば、先ず相手方B自身の住民票・戸籍謄本を取り寄せるべきでした。それをしないでいきなりCの住民票を取り寄せたのが、うかつでした。

○Cの住民票を取り寄せたところ、Bの記載がなく、Cの住民票はAB間の養育費請求には何の関係もないことが判明しました。この事案ではその事実をAに納得してもらうために甲弁護士は、Cの住民票写しをそのままAに交付しました。これは、つい、うっかり、やりがちなミスです。紛争当事者Bの住民票であれば職務上の必要性が明らかですが、その関係が不明なCの住民票はBの記載がなく、Bとの関係が明らかでない場合は、弁護士が住民票取り寄せを行う「職務上の必要」がないことになります。従ってその取扱は慎重に行うべきで、Aに写しを交付してはいけませんでした。つい、うっかり、やりがちなミスですので、他山の石として注意すべきです。

以下、参考条文です。
住民基本台帳法
第12条の3(本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)
(中略)
2 市町村長は、前2条及び前項の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が同項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書が必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
3 前項に規定する「特定事務受任者」とは、弁護士(弁護士法人を含む。)、司法書士(司法書士法人を含む。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む。)、税理士(税理士法人を含む。)、社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む。)、弁理士(特許業務法人を含む。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む。)をいう。

第47条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(中略)
二 偽りその他不正の手段により、第12条から第12条の3まで(これらの規定を第30条の51の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書の交付を受け、第12条の4(第30条の51の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する住民票の写しの交付を受け、第20条に規定する戸籍の附票の写しの交付を受け、又は第30条の44に規定する住民基本台帳カードの交付を受けた者
以上:2,206文字

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